2015年3月22日日曜日

米国には本物のジャーナリストはごくまれ

 本ブログでもおなじみのPaul Craig Robert氏が、メキシコ記者クラブが選ぶ国際優秀ジャーナリスト賞を受賞しました。同氏が授賞式で行ったスピーチが「マスコミに載らない海外記事」に載りましたので紹介します。
 
 スピーチの内容はアメリカのジャーナリズムの実態に関するもので、同国のジャーナリストは政府や大企業のためにウソをつくだけの存在になっていて、真実を語る人は誰でも、首にされるか告訴されると述べています
 
 そして著名なジャーナリストが語った多くの実例を紹介し、いまやアメリカ合州国に存在している唯一真面目なジャーナリズムは、インターネット上にしか存在しない、しかしアメリカ政府はそれを敵視して、厳しい攻撃を仕掛けて来ているとしています。
 
 スピーチの最後の部分では、ワシントンの権力はピークを過ぎたとして、中露やBRICSの台頭を挙げて、ドルに替わる代替の国際決済制度が規模を拡大すれば、アメリカも落ち目に向かうだろうとしています。
 
 原記事は長文(日本語で7500語超)のため事務局で2/3ほどに短縮しました。
 詳細は原文をお読みください。
 
(追記) なおアメリカが、ドイツのジャーナリストたちにも米国への支持を強制するシステムを既に築き上げていることは、下記の記事が明らかにしています。
 
 2014年11月11日 独ジャーナリストは米国支持を強制されている
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真実こそが我々の祖国だ
マスコミに載らない海外記事 2015年3月20日
Paul Craig Roberts 2015日3月15日
メキシコ記者クラブはPaul Craig Robertに、 International Medal For Journalism Excellence国際優秀ジャーナリスト・メダルを授与した。
 
先週、メキシコのクルブ・デ・ペリオディスタス・デ・メヒコの年次授賞式で、私はInternational Award For Excellence In Journalism国際優秀ジャーナリスト賞賞した。
私は講演で、真実こそ、本物のジャーナリストの祖国であると強調した。本物のジャーナリストが忠誠心をつくすのは、真実に対してなのだ。政府への忠誠から、ジャーナリストが真実を犠牲にしてしまえば、その人物はジャーナリストではなくなり、宣伝機関の一員となる。
 
真実こそが我々の祖国だ  (Paul Craig Roberts 原稿)
 
皆様
この表彰、この名誉をありがとうございます。
アメリカ合州国では、ジャーナリストは、政府や大企業の為にウソをつくと賞がもらえます。ジャーナリストであれ、内部告発者であれ、真実を語る人は誰でも、首にされるか、告訴されるか、ロンドンのエクアドル大使館に、あるいはモスクワに身を隠すか、拷問されて、投獄されるしかありません。
 
メキシコ人ジャーナリスト達は、もっと大変な犠牲を払っておられますWikipediaは、21世紀に、100人以上のメキシコ人ジャーナリストが殺害されたり、行方不明になったりしていると報じています。恫喝にもかかわらず、メキシコ・マスコミは、その仕事を放棄していません。皆さんの勇気ゆえに、私が頂いたこの賞は大いなる誇りなのです。
 
アメリカ合州国では、本物のジャーナリストは極まれで、益々希少化しています。言い換えれば、アメリカ合州国のジャーナリストは、政府と大企業の売春婦なのです。
残っていた少数の本物のジャーナリスト達は辞任しつつあります。
昨年、CBSで21年の経験のベテラン記者シャリル・アトキソンが、真実を報道させる戦いが余りに大変なものとなったという理由で辞任しました。彼女は、CBSが、同社の目的は、権力者の批判者ではなく、擁護者であることだとしているのに失望していたのです。
 
最近、イギリスのテレグラフ紙の主幹政治コンメンテーター、ピーター・オボーンが、なぜ辞任したかを説明しました。巨大銀行HSBCの悪行に関する彼の記事が、HSBCがテレグラフの重要な広告主だったので没にされたのですオボーンはこう言っています。もし大手新聞が、広告収入を失うのが怖くて、大企業が記事内容に影響を与えることを許してしまえば、ホワイト・ハウスの要求で、民主主義そのものが危機的状況になります。” 
 
昨年夏、元ニューヨーク・タイムズの編集者ジル・アブラムソンが、シャトーカ研究所での講演で、ニューヨーク・タイムズは、ホワイト・ハウスの要求で、情報を差し止めてきたと発言しました。
我々の祖国は「真実」なのです。政府への忠誠から、ジャーナリストが真実を犠牲にしてしまえば、もはやジャーナリストではなくなり、宣伝機関の一員となってしまいます。
最近、NBCテレビのニュースキャスター、ブライアン・ウィリアムズが、10年以上前 イラク戦争を報道していた際の出来事を間違って記憶していたせいで、経歴をふいにしNBCナイトリー・ニューズの編集長、キャスター6カ月停職処分なりました。
 
この件について、ちょっと考えてみましょう。ヘリコプターが、砲火に当たって着陸したのか、あるいは何か他の理由か、あるいは着陸する必要があった為なのか、いずれにせよ、全く何の違いも生じません。もし、間違いだったとしても、“虚偽記憶”という出来事に過ぎないのに、なぜ過剰反応する必要があるでしょう 
ブライアン・ウィリアムズを停職にしたNBCや、彼がウソを言ったとして非難しているジャーナリスト連中は、21世紀中ずっと、大変な影響をもたらした大量のウソを語ってきました。アメリカ合州国政府は、過去ずっと、そして今も、ワシントンが語り、マスコミが果てしく繰り返すウソに基づいて、7ヶ国か8ヶ国を侵略し、爆撃し、無人機攻撃しています。もっぱら、ウソつきワシントンやその売女マスコミの口から吐き出されるウソに基づいて、何百万人もの人々が殺害され、身体障害になり、暴力で強制退去させられてきました。
 
サダム・フセインの大量破壊兵器。シリアのアサドによる化学兵器使用。イランの核兵器。パキスタンやイエメン人テロリスト。ソマリアのテロリスト。リビアのカダフィや、アフガニスタンのタリバンに関するもの、いずれも果てしないウソです
そして現在はロシア侵略とウクライナ併合とされるものについてのウソがあります。
 
こうした見え透いたウソが果てしく繰り返されているのに、誰も責任をとわれません。ところが、あるジャーナリストがヘリコプター搭乗に関する一つの些細な記憶違いをすると、一生棒にふるのです。
 
アメリカ合州国に存在している唯一、真面目なジャーナリズムは、インターネット上で、代替メディアが提供しているものだと結論して構わないと思います。
その結果、インターネットは現在アメリカ政府によって攻撃されています。
ワシントンは、NBCニューズの元社長、アンドリュー・ラックを、放送管理委員会の委員長に任命しました。彼の最初の公式発言は、ロシアを本拠とする報道機関RTロシア・トゥディを、「イスラム国」や、ボコ・ハラムと同等扱いするものでした。言い換えれば、ラック氏は、RTに、テロ組織というレッテルを貼ったのです。
アンドリュー・ラックがRTに言いたかったことは:“我々の為にウソをつかないと、お前たちをアメリカの電波から追放するぞ。”ということなのです。
イギリスは、イランのプレスTVに対してそうしています。
 
アメリカ合州国で、インターネットの独立メディアに対する攻撃は、様々な面で進められています。その一つはより高速なサイトには、より高い料金を請求するよう仕組んでいます。帯域幅は料金に比例するのです。CNNやニューヨーク・タイムズ等の大手マスコミ企業なら、あっという間に開くウェブ・サイトの費用が払えるでしょう。私の様な小規模独立サイトは、古い“ダイアル・アップ”帯域幅の遅さで苦しめられます。CNNをクリックすると、サイトは即座に開きます。「Paul Craig Robertのサイト」クリックした場合は、5分間お待ち頂くことになります。
 
また最近、アメリカ人の若者バレット・ブラウンが、インターネットに投稿された、ハッキングされたものとされる文書にリンクをしたかどで、5年間の実刑と、890,000ドルの罰金判決を受けました。バレット・ブラウンが文書をハッキングしたわけではないのです。彼は単に、インターネット上の投稿にリンクをしただけです。890,000ドルもの金額を、人生で稼ぎだせる見込みは皆無です。
の狙いは、ワシントンが認めないやり方で、あるいはワシントンが認めない目的で、インターネット情報を利用した人は誰でも、犯罪人とされ、人生が破壊されるという前例を作ることにありました。
 
世界中の人々が、政府とその持っている技術システムによる支配に直面しています。しかし、ワシントンの脅威の方が遥かに大きいのです。ワシントンは、アメリカ合州国の国民を支配するだけでは満足しないのです。ワシントンは世界を支配しようとしているのです。
ソ連崩壊は、恐ろしい悪=アメリカの独壇場を、世界に解き放ってしまいました。
歴史が行った選択の結果、アメリカ合州国は、自分達の優越の主張である、卓越した“必要欠くべからず、例外的な”国、という立場に押し上げられたのです。ワシントンのこのイデオロギーに基いて、中東における暮らしと安定性の破壊されているのを我々はいま目にしています。
 
ワシントンの世界覇権への衝動はウソに基づいているので、真実の抹殺が不可欠となります。
オバマ政権の最初の行動は、中南米の民主的な、改革主義のホンジュラス政権打倒でした。現在、オバマ政権は、中南米のベネズエラ、エクアドル、ボリビアと、アルゼンチンの政権を打倒しようとしています。
アメリカ合州国は、金融帝国主義によって、メキシコ農業や自給自足の農民による農業共同体を外国が所有する単一栽培に従属させ、メキシコをモンサントのGMO、遺伝子組み換え生物、作物にならない種子、土壌や自然の栄養素を破壊する化学薬品、メキシコを栄養価がより低い食用作物でモンサントに依存させてしまう種子で汚染し、メキシコを盗み取りつつあります。
あらゆる種類の仮面を活用して、その背後に、ワシントンは、アメリカによる搾取-グローバリズムや自由貿易協定等を隠しているのです
 
しかし世界は変化しつつあります。プーチンはロシアを復活させ、ロシアは、ワシントンに抵抗する能力を証明しました。購買力から見て、中国は現在、世界最大の経済です。中国とロシアは、現在戦略的同盟国なので、ワシントンはこの二国のどちらかだけを狙って行動することができません。二国がまとまれば、ワシントンの能力を超えるのです。
 
アメリカ合州国政府は、全世界に、自らが無法であることを証明しています。法律軽視を見せびらかすような国は、信頼に値する指導力を持ち得ません。
ワシントンの権力はピークを過ぎた、というのが私の結論です。
ワシントンの権力は第二次世界大戦の結果、増大しました。他のあらゆる国々の経済や通貨は壊滅したため、ワシントンは世界準備通貨の役割をイギリスから奪取することができました。けれど、もし他の国々が、アメリカ通貨を準備通貨として保有しないことに決めれば、アメリカは突如、崩壊しかねません。
 
自らの思い通りにさせる狙いで、他の国々に経済制裁を課するというワシントンの政策は、BRICSとして知られている世界のかなりの部分が、代替の国際決済制度を立ち上げる結果を招いています。
ワシントンの傲慢さや思い上がりから、ワシントンは、同盟諸国を含め、他の国々の利益を無視するようになっています。
ワシントン属国のヨーロッパ諸国ですら、ロシアとウクライナに対する取り組みの上で、独自の外交政策を展開する兆しを見せています。各国政府が、ワシントンの支配から逃れ、自国民の利益を追求する機会がくるでしょう。
 
アメリカ・マスコミは、建国の始祖が彼らに与えた機能を全く演じてきませんでした。マスコミは、政府と私益集団の両方に対し、事実と真実で、立ち向かうものとされています。しかし政府が巨大メディア企業6社が90%のマスコミを手中に統合することを認めたクリントン政権末期以来、そういう役を演じていません。
 
アメリカ・メディアを支配している巨大メディア企業は、GE、ニューズ・コープ、ディズニー、バイアコム、タイム・ワーナーと、CBSです。
アメリカのマスコミは、もはやジャーナリストが経営しているわけではありません。元政府幹部や、大企業の宣伝担当重役が経営しているのです。巨大メディア企業の価値は、全国における放送免許に依存しています。もしマスコミ企業が政府と対立すれば、企業は免許が更新されなくなる危険をおかすことになり、そうなれば、何十億ドルもの企業価値は皆無になるのです。もし報道機関が、大企業の悪行を調査すると、彼らは広告収入を失う危険をおかすことになり、生存能力が低下します。
 
マスコミを90パーセント支配しているおかげで、政府はプロパガンダ省を手に入れたというのがアメリカ合州国の実情です。
現在、大規模な反ロシア政府プロパガンダ・キャンペーンが行われています。ワシントンやマスコミからの絶えざる虚報の流れが、レーガン大統領とゴルバチョフ大統領が懸命になって生み出した核大国間の信頼を破壊してしまいました。
核戦争の亡霊を復活させたことほど大きなマスコミの失敗はありえまいという、私の見方を申しあげて講演を終わりたいと思います。
そして、それこそまさに、アメリカ・マスコミが実現したものなのです
 
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