「集団的自衛権の行使」とは、他国に対する武力攻撃に日本が反撃することですが、それが一体憲法9条とどのように整合するというのでしょうか。
歴代の政府が9条の制約により「行使できない」としてきたものを、安倍内閣は一内閣でひっくり返して、昨年7月1日、「行使出来る」という閣議決定を行いました。
政府は6日、「閣議決定」を具体化する自公両党の安全保障法制協議会で、集団的自衛権行使に向けた法改正の方針を示しましたが、それは「閣議決定」の内容を大幅に超えたものでした。
安倍首相は中東ホルムズ海峡に機雷が敷設され、日本への原油供給が滞るなど経済的被害でも「行使は可能」としていますが、はるか彼方に敷設される機雷がどうして日本の存立の危機になるのでしょうか。
その程度の経済的不都合を「国家存立の危機だ」と言い立てるのは、正に「風が吹けば桶屋が儲かる」の論理展開にほかなりません。なぜそれほどまでに戦争がしたいのでしょうか。
そして自衛隊がいつでも他国軍を支援できるよう恒久法を制定し、活動範囲も従来の「非戦闘地域」から「現に戦闘行為を行っている現場以外」に広げる、周辺事態法も「周辺」という地理的制約を取り払い何処にでも自衛隊を派遣できるようにする・・・まさにやりたい放題です。
ある程度は予想されていたことですがこれでは憲法9条の実質的な放棄です。
北海道新聞は7日の社説で、
「そもそも集団的自衛権の行使容認、周辺事態や非戦闘地域という制限の撤廃といった根本的な変更を許してしまえば、どんな歯止めをかけようと時の政権の判断次第でなし崩しにされる危険は残る。関連法整備は中止すべきだ」
と述べています。
9条の原点に立ち帰るしかありません。
しんぶん赤旗の記事も併せて紹介します。
(追記)下記の各紙も警鐘を鳴らす社説を掲げています。
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(社説) 安全保障法制 平和国家の道踏み外す
北海道新聞 2015年3月7日
政府はきのうの安全保障関連法案に関する与党協議で、集団的自衛権行使に向けた法改正の方針を示した。
これにより、他国軍の後方支援、武力攻撃に至らないグレーゾーン事態と合わせ、政府が想定する安保法制の全体像が出そろった。
驚くのは、今回の安保法制の根拠となる昨年7月の閣議決定の内容を大幅に超えた提案が次々となされていることだ。
これらが実現すれば、自衛隊の海外での武力行使に道が開かれ、日本は平和国家の道を踏み外すことになる。新たな安保法制を認めることはできない。
集団的自衛権に関し、政府は行使する状況を「存立危機事態」(仮称)と定義し、武力攻撃事態法などに盛り込む方針だ。
存立危機事態は、昨年7月の閣議決定で定めた武力行使の3要件の一つ「日本の存立が脅かされる明白な危険がある」状況を指す。
安倍晋三首相は中東ホルムズ海峡に機雷が敷設され、日本への原油供給が滞るなど経済的被害でも行使は可能とし、同盟国による先制攻撃をきっかけにした事態でも行使を排除しない考えを示した。
閣議決定で容認した集団的自衛権の行使は限定的だとしていた説明と、明らかに食い違う。
後方支援では、自衛隊がいつでも他国軍を支援できるよう恒久法を制定し、活動範囲も従来の「非戦闘地域」から「現に戦闘行為を行っている現場以外」に広げる。
日本周辺に限り米軍への後方支援を認める周辺事態法も「周辺事態」という地理的制約を取り払い、米軍以外の支援も可能にする。
閣議決定に「必要な支援活動を実施できるよう法整備を進める」などとしか記載がないのをいいことに、自衛隊の活動をここまで広げるとは、あきれるほかない。
さらにグレーゾーン事態でも、閣議決定で米軍に限定している艦船防護の対象を米軍以外にも広げる方針を示した。まさにやりたい放題である。
公明党は自衛隊の海外派遣の条件として《1》国際法上の正当性《2》国民の理解と民主的な統制《3》自衛隊員の安全確保―を主張している。
だがこれらは当然のことであり、歯止めとしては不十分だ。
そもそも集団的自衛権の行使容認、周辺事態や非戦闘地域という制限の撤廃といった根本的な変更を許してしまえば、どんな歯止めをかけようと時の政権の判断次第でなし崩しにされる危険は残る。
関連法整備は中止すべきだ。
「新事態」で武力行使どこでも 他国防衛「主任務」に
自衛隊の役割大転換 集団的自衛権協議で政府原案
しんぶん赤旗 2015年3月7日
政府は6日、昨年7月1日の「閣議決定」を具体化する自民、公明両党の安全保障法制の協議会で、他国に対する武力攻撃に日本が反撃する集団的自衛権の行使を、自衛隊の「主たる任務」に位置づける自衛隊法などの改定原案を初めて正式に示しました。安倍内閣は同日、防衛省内で文官(背広組)が自衛官(制服組)より優位に立つ「文官統制」の撤廃や、武器専門官庁である「防衛装備庁」の新設などを盛り込んだ同省設置法改定案を閣議決定。「海外で戦争できる国」へ向け、自衛隊創設以来の大転換を狙っています。
政府原案は、日本は武力攻撃されていない場合でも、他国に武力攻撃が発生した事態を「新事態」と定義。「新事態」に地理的制約はなく、世界のどこで起きた“他国事態”でも武力行使「新3要件」(閣議決定)にあてはまると政府が判断すれば参戦できます。
「新事態」の際に自衛隊が武力行使する手続きや権限を定めるため、自衛隊法や武力攻撃事態対処法などの有事法制を改定(表参照)。現行の自衛隊法は自国防衛のみを「主たる任務」としており、他国防衛がこれに加われば自衛隊が「自衛」隊でなくなります。
「新事態」の名称について、政府は当初、「存立事態」とする方向で調整していました。与党協議会座長の高村正彦自民党副総裁は「名称はまだ決まっていない」と述べ、法案の最終段階で決める意向を示しました。
また、自民、公明両党は20日をめどに安保法制の大枠をとりまとめる方針で一致。高村氏は「(両党で)共通認識がある」と強調し、集団的自衛権や海外派兵恒久法など、安保法制の全分野で公明党がおおむね容認に回ったとの見方を示しました。
防衛省設置法改定案では、1954年の防衛庁・自衛隊発足当時から設けられてきた「文官統制」規定を廃止。背広組の運用企画局も廃止して、部隊運用を制服組に一元化します。集団的自衛権行使容認と並行した防衛省の大改造は、指揮官である首相・防衛相と制服組を直結させ、迅速な開戦判断の仕組みをつくるものです。