2018年5月15日火曜日

生活保護費の削減 安倍政権下で総額年1480億円

 第2次安倍政権発足以来、軍事費は6年連続の増額で、4年連続で過去最高を更新し18年度予算は5・2兆円に達しました。
 政権発足後、最初の4年間で、安倍首相は「地球儀俯瞰外交」と称してASEAN、インド、アフリカなどに総額40兆円近くのカネをバラまいたと言われています。
 またトランプ大統領の門出に当たっては、強要されるがままに無慮 51兆円の対米投資を決めました。(17年2月12日) 米国への投資は51兆円 しかもトランプ氏の術中で
 
 そんな中で生活保護費については政権発足以来一貫して削減を続け、その総額は1,480億円に達しました。冷酷を絵にかいたような所業です。これを行うについては裁量労働制の時のような詐術も当然行っています。
 この仕打ちは生活困窮者を一層困窮させますが、それだけに留まるものではなく、生活保護基準は「これより下回ってはならない」という日本全体のナショナルミニマムを示すものです。最低賃金は生活保護基準との「整合性」に配慮するとされ、学用品代を補助する就学援助や住民税非課税限度など低所得者向け施策の基準とも連動しているので、生活保護基準引き下げは、社会保障や暮らしを支える制度全体の後退につながっています。
 しんぶん赤旗が「特報」でこの問題を取り上げました。
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  2018とくほう・特報
生活保護費の削減  安倍政権下で総額年1480億円
しんぶん赤旗 2018年5月14日(月)
 安倍政権は10月から生活保護で食費など日常生活費に充てる「生活扶助」を最大5%削減する方針です。保護費の削減は同政権が2012年末に発足してから一貫して進めてきているものです。(前野哲朗)
表
“最低生活水準を「下へ下へ」”
 憲法25条・生存権侵す
 今回の削減が強行された場合、同政権での削減総額は年1480億円にのぼります(表)。生活扶助の削減規模は、前政権(民主党)時代(12年度)の1兆2500億円の約1割にあたります。
 なぜ安倍政権は、これほど生活保護削減を進めるのか―。
 
 自民党が野党だった12年2月10日の衆院予算委員会。同党の茂木敏充政調会長(当時)は、社会保障費削減の必要性を強調したうえで、特に民主党政権で生活保護予算が膨らんでいると批判し、こう宣言していました。
 「自民党は、まず基本は自助、その上に共助があり公助がある。われわれが政権をとればそういう方向に変える。生活保護も徹底的に変えていきたい」
 
 自民党は政権復帰翌月の13年1月には生活扶助の大幅引き下げを強引に決定。続けて住宅扶助や冬季加算の見直しも行うなど、まさに生活保護削減を“党是”としています。
 旧厚生省の元官僚で弁護士の尾藤廣喜さん(生活保護問題対策全国会議代表幹事)は、安倍政権の保護費削減路線について「財政危機を口実に社会保障全体を削減するという大方針を進めるために、その土台である生活保護を率先して削り、憲法25条(生存権)に基づき国が国民に保障しなければならない『最低生活水準』(ナショナルミニマム)を下へ下へと向かわせることが狙いです」と指摘します。
 
 生活保護の基準は「これより下回ってはならない」という日本全体のナショナルミニマムを示すもので、すべての国民の暮らしを下支えしているものです。最低賃金は生活保護基準との「整合性」に配慮するとされ、生活保護基準との比較で決定されることが多いのが実態です。学用品代を補助する就学援助や住民税非課税限度など低所得者向け施策の基準とも連動しています。その生活保護の基準が引き下げられることは、社会保障や暮らしを支える制度全体の後退につながる問題なのです。
 
 尾藤弁護士は「安倍政権の社会保障の考え方は『自助・自立』を根本におくもので、社会保障を増進させる国の責務(憲法25条2項)を否定している」と批判。同時に「ナショナルミニマムを引き下げ『自助』を強調する社会保障は国民との矛盾を広げており、これに対抗しようとする新しい国民の連帯の芽が生まれています」と強調します。
 
「生活保護切り下げは全体の不利益」
 若者・野党 共同の“波”
 安倍政権による13年の生活保護基準引き下げに対しては、憲法25条に違反するとして、全国で約1000人の原告が裁判でたたかうという前例のない運動が起きています(いのちのとりで裁判)。
 それでも安倍政権が生活保護費のさらなる削減へと突き進もうとするなかで、生活保護利用者だけでなく、研究者や若い世代からも生存権を問い直す声があがっています。
 
 「最低賃金1500円」などを求めて活動する若者グループAEQUITAS(エキタス)も、生活保護費の引き下げ反対を訴えています。エキタスに参加する大学3年生は「生活保護がしっかりしていないと、過労死するような働き方からも逃れられなくなってしまう。生活保護引き下げは社会全体の不利益だと思うし、個人としても将来を考えると危機感があります」と話します。
 
 最低賃金の運動にかかわるなかで、生活保護と労働問題との密接な関係が明確になっていったという大学生。「生存権が存在しているのに、生活保護を利用することが『税金泥棒』みたいに攻撃されている現状は許せません」と語ります。
 
 昨年末まで生活保護基準見直しに向けて議論していた社会保障審議会の部会でも、低所得世帯の消費実態と比べて生活扶助基準を検証する手法(水準均衡方式)で生活扶助を引き下げる方向性を示した厚労省に対して、貧困や生活保護の専門家である委員からは異論が噴出しました。
 「ボトム(底)への競争が制度的に起こってしまうことが非常に懸念される」(17年12月12日・山田篤裕・慶應大教授)
 「全体的に所得が低下していく状況で、それにあわせて生活水準も引き下げるのは無理がある」(同・小塩隆士・一橋大教授)
 
 こうした声を受けて、同審議会は報告書で、水準均衡方式に関して「最低生活保障基準を満たすものと言えるのか、水準均衡方式のあり方が問われる本質的な課題」があることを指摘。具体的に基準を見直す際には「検証結果を機械的に当てはめることのないよう強く求める」と厳しい注文をつけました。
 
 国会では、立憲民主党、希望の党、日本共産党、無所属の会、自由党、社民党の6野党・会派が3月29日、「子どもの生活底上げ法案(生活保護法等改正案)」を共同提出しました(政党名は当時のもの)。同法案は、生活保護基準のあり方を1年以内に見直し、その間は基準を引き下げないというもので、「健康で文化的な生活」とは何かを問う内容です。
 
 尾藤弁護士は「ほとんどの野党が共同で、生活保護基準の根本にかかわる問題で積極的な提起をする状況にまでなっているのは非常に力強く感じています」と野党の共同提出を評価します。年金引き上げや子どもの貧困を絶つ運動なども広がっていることにふれて、「社会保障を充実させる方向へ転換する運動の波を大きくするため、さらに運動と連帯を強める必要があると思います」と話しました。
 
日本共産党の貧困対策は…
 日本共産党は、“生活保護以外に貧困への支援がない”という日本の社会保障制度の問題点を是正し、失業者や「ワーキングプア」を対象として総合的な貧困対策を提案。同時に「最後のセーフティーネット」として、生活保護制度の改善・強化を主張しています。
 
 志位和夫委員長は2月5日の衆院予算委員会で、安倍政権の生活保護削減計画の撤回を求めるとともに、生活保護を使いやすくするための四つの緊急提案をしました。
 
 緊急提案の内容は以下の通りです。
(1)法律の名称を「生活保障法」に変える
(2)国民の権利であることを明らかにし、制度の広報、周知を義務づける
(3)申請権を侵害してはならないことを明記し、「水際作戦」を根絶する
(4)定期的に捕捉率(生活保護を利用できる資格がある人のうち実際に利用している割合)を調査、公表し、捕捉率の向上に努める