2018年5月18日金曜日

対話による平和的解決 志位委員長語る米朝会談への期待

 16日、北朝鮮は米韓合同軍事演習に強く抗議するとともに、米朝首脳会談の中止もあり得るとして世界を驚かせました。
 天木直人氏はその真意はボルトン外しであると述べています。実際ボルトンに代表される米政権の極右強硬派は、まるで米朝会議が失敗に終わることを望む(真意はその筈)かのように、核とミサイルに関して最大限の譲歩を示した北朝鮮に対して、嵩に掛かってありとあらゆる要求を突き付け、リビアで行ったことを北朝鮮でも再現しようとしました。
 あれではまとまる話もまとまりません。天木氏は、まだ核兵器の開発段階にあったリビアと、いまや米国本土に核攻撃できるまでになった北朝鮮を同じ扱いにし、無条件で核放棄をしたらその後で制裁解除をしてやるという交渉をするボルトンでは話にならない、「北朝鮮を舐めるな」と言っているのだとしています。
 確かにボルトン(派)を排除しないと米朝会談は成功しないように思われます。
 
 日刊ゲンダイが米朝会談への期待について、共産党の志位委員長にインタビューしました。これは北朝鮮の上記の発言がある前に行われたものです。
 
 志位氏は、北朝鮮の非核化を進めるには「核がなくても安心だ」と感じさせる環境―南北、米朝、日朝の緊張緩和・関係改善・国交正常化を進めることが必要あるとし、その実行方法は、20059月の6カ国(北・韓・中・ロ・日・米)協議共同声明に明記された「『約束対約束、行動対行動』の原則に従い、段階的に実施することだと述べています
 上記の共同声明は、数次の会合を重ねてようやく得られた到達点であったのですが、その直後に米国が北朝鮮の銀行口座を凍結たため、北朝鮮の態度が硬化し、翌年の核実験につながりました。米国は北朝鮮疑わしい行動を取ったためと主張しましたが、北からすれば合意を破ったのは米国だということになります。
 藪中三十二・元外務事務次官も、当時をふりかえって、「そうした過去のとりくみから教訓を引き出していくべきだと思う」と述べています。
 
 天木直人氏のブログも併せて紹介します。
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  スペシャルインタビュー  
対話による平和的解決 志位委員長語る米朝会談への期待
日刊ゲンダイ 2018年5月16日
 米朝首脳会談が6月12日、シンガポールで開催される。会談には、中国の習近平国家主席が出席するともいわれ、朝鮮戦争の「休戦協定」に署名した米中朝の3カ国首脳による「終戦宣言」が現実味を帯びてきた。米朝韓中など関係6カ国に平和解決に向けた要請文を送った日本共産党の志位和夫委員長にあらためて米朝会談への期待や、安倍外交に対する見解を聞いた。
 
 ――南北会談が実現し、史上初の米朝首脳会談の開催も決まりました。どう評価していますか。
 私たちは、関係6カ国への要請文で、「朝鮮半島の非核化」と「北東アジア地域の平和体制の構築」を一体的、段階的に進めてほしいと提起しました。南北首脳会談の「板門店宣言」で、「完全な非核化」と「年内の朝鮮戦争終結」が合意され、米朝首脳会談も日時と場所が決まった。まさに対話による平和的解決の歴史的チャンスが生まれており、北東アジア地域の情勢をがらりと変える世界史的な大変動が起こり得る情勢にきている。このチャンスを絶対に逃してはなりません。
 
 ――トランプ大統領、金正恩委員長ともに米朝会談の成功に自信をみせています。
 私が注目したのは7~8日に金正恩委員長が中国・大連を訪問して習近平国家主席と会談し、直後に米中首脳の電話会談が行われ、中国側は「段階的な解決」や、「北朝鮮の安全保障上の懸念を考慮」することを米側に求め、米側は「中国の立場を高く重視し、役割を称賛する」と応じたことです。
 その直後の9~10日、ポンペオ米国務長官が訪朝し、金委員長は「満足のいく合意に達した」述べました。そして米朝首脳会談の日時、場所が発表され、トランプ大統領は「大成功を収めるだろう」と。米朝首脳会談が成功を収めることを、かなり期待してもいいところまできているのではないでしょうか。
 
■安倍政権は失敗を認め政策の転換を
 ――米中は急速に北との距離を縮めていますが、対照的なのが日本の安倍政権ですね。
 北朝鮮問題に対する安倍政権の姿勢は一言で言うと「対話否定」「圧力一辺倒」。これが今、大破綻していると思います。トランプ政権は一方で「圧力」を唱えながら、他方で「対話」を選択肢とするという「一定の幅」を持った対応を行い、今回は「対話」にぐっと舵を切った。しかし、安倍政権は「対話否定」「圧力一辺倒」できたために、こうした事態についていけない。ひとり取り残された状態です。
 拉致問題についても、せっかく解決のチャンスが生まれているのに、「対話のための対話では意味がない」「拉致問題の解決が対話の前提だ」といって対話に自らハードルをつくるという態度です。これでは道は開けません。
 
 ――日中韓の3カ国首脳会談でも、安倍首相は「最大限の圧力」を訴えていました。
 東京で行われた中韓首脳会談では、「北朝鮮に対して一方的に要求するのではなく、北朝鮮が完全な非核化を実行する場合、体制保証と経済開発支援などの明るい未来を保証するうえで、米国を含む国際社会が積極的に参加すべき」という内容で合意しています。「圧力一辺倒」の安倍政権との落差が際立ちました。このままでは歴史的な流れからさらに取り残されることになります。
 
 ――とはいえ、北の非核化に懐疑的な見方があるのも事実です。どこがポイントになるのでしょうか。
 非核化は最大の目標ですが、その実現のためには北朝鮮に「核がなくても安心だ」と感じさせる環境――南北、米朝、日朝の緊張緩和・関係改善・国交正常化を進めることが必要です。非核化と平和体制構築は一体で進めてこそ両方を実らせることができる。
 
 その実行方法は、2005年9月の6カ国協議共同声明に明記された「『約束対約束、行動対行動』の原則に従い、段階的に実施する。双方が合意したことを誠実に実行することによって、相互不信を解消し、信頼醸成を図りながら目標に到達する。これが最も現実的な方法です。非核化には、核兵器や核物質、核関連施設がどこにあるのかを申告させ、それを検証し、次に廃棄し、さらに検証という段階がどうしても必要になると思います。
 
 ――安倍政権は今後、北に対してどう向き合うべきだと考えますか。
 安倍首相は北朝鮮問題を「国難」と言い募って解散までやった。北朝鮮の脅威を最大限利用し、安保法制(戦争法)や9条改憲などを進める口実にしてきました。しかし情勢の前向きの激変が起こっている。これまでの「対話否定」「圧力一辺倒」の失敗を認め、政策を大転換することを強く求めたいと思います。 
 
 
ボルトンの首が飛んで「地固まる」米朝首脳会談
天木直人のブログ 2018年5月17日
 北朝鮮が米朝首脳会談の中止を突然言い出したことに一番驚いたのはトランプ大統領だろう。
 何も聞いていないと自ら認めて衝撃を隠さなかった。
 しかし、北朝鮮が中止を言い出した本当の理由を知ったらもっと衝撃を受けるだろう。
 一夜あけて、きょうの各紙が一斉に書いている。
 これは北朝鮮のボルトン外しであると。
 つまり、まだ核兵器の開発段階にあったリビアと、いまや米国本土に核攻撃できるまでになった北朝鮮を同じ扱いにし、無条件で核放棄をしたらその後で制裁解除をしてやるという成功体験を北朝鮮との交渉に持ち込むボルトンでは、話にならない、北朝鮮を舐めるなと言っているのだ。
 ポンぺオはいいが、ボルトンは駄目だと言っているのだ。
 そして、そう主張する北朝鮮は全く正しい。
 リビアの成功体験など事実無根の自画自賛なのだ。
 そもそもボルトンはイラク攻撃を唱えて今日の米国を招いた疫病神だ。
 いまでもネオコン思考から脱却できない時代遅れの人物だ。
 そしてトランプ大統領の最初の人選に漏れた人物だ。
 次々と首を切るトランプ大統領が、人選に困って最後に指名した人物だ。
 そんな人物が、トランプ大統領の空気を読めずに強硬策を唱えて金正恩を怒らせたのだ。
 トランプ大統領はボルトンの首を斬るしかない。
 私だったらそうする。
 このままボルトンが出しゃばり続ければことごとく交渉はうまくいかないだろう。
 米朝首脳会談は成功させるしかないという結論は出ているのに、無駄な労力を使う事になる。
 トランプ大統領が最も嫌う事だ。
 ボルトンの首を切る事によって、トランプ大統領と金正恩委員長の信頼関係は再確認され、米朝首脳会談は再び軌道に乗る。
 トランプ大統領の思惑通り、中間選挙前に朝鮮半島の非核化に成功する。
 そして中間選挙に勝ってノーベル平和賞を手にすることが出来る。
 「雨降って地固まる」のたとえで言えば、まさしくボルトンの首が飛んで米朝首脳会談の地が固まるのである(了)