トランプ大統領は、史上初の米朝首脳会談について「われわれが求める特定の条件があり、それが実現しなければ、会談は行わない。6月12日には会談が開かれない可能性がある」と述べ、非核化などをめぐり、立場の隔たりが埋まらなければ会談の延期もありうるという考えを示しました。再び従来の硬直した姿勢に戻りました。
これは北朝鮮側が、ボルトンの高圧的な対応を非難しアメリカが一方的に核の放棄を迫るなら、会談の取りやめもあると述べたことに対抗するものです。
またトランプ氏は、金正恩委員長が2度目の中朝首脳会談をしてから強硬な態度に変わったとして、習近平氏に対する不満も口にしました。要するに、北朝鮮は「羊のようにおとなしくしていなければいけない」という考え方です。
ボルトンの「リビア方式」は理不尽なものなので、それを止めさせるか更迭するのではないかと見られていましたが、どうやら逆に政権内の対北強硬路線派に説得されてしまったようです。
天木直人氏は「それは、金正恩に騙されるなという強硬派の雑音にまんまと挑発されたからだ。ボルトンの首を切るどころか、ボルトンの言葉に乗せられたのだ」と述べています。もしもこれで米朝会談が中止になるようなことがあれば、再度米朝会談に漕ぎつけるのは困難でしょう。
政権内をCIA派=対北強硬路線派で固めておきながら、米朝和解に漕ぎつけようとしたこと自体に無理がありました。相手がベタ降りしなければダメだという考えでは話はまとまりません。
NHKニュースと天木直人氏のブログを紹介します。
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トランプ大統領 米朝首脳会談「6月12日に開かれない可能性」
NHK NEWS WEB 2018年5月23日
アメリカのトランプ大統領は、韓国のムン・ジェイン(文在寅)大統領との会談で、米朝首脳会談について「6月12日には開かれない可能性がある」と延期の可能性に言及し、アメリカが一方的に核の放棄を迫るなら、会談の取りやめもあるとしている北朝鮮をけん制しました。
トランプ大統領は、22日、韓国のムン・ジェイン大統領とホワイトハウスで会談しました。
会談の冒頭、トランプ大統領は、史上初の米朝首脳会談について「われわれが求める特定の条件があり、それが実現しなければ、会談は行わない。6月12日には会談が開かれない可能性がある」と述べ、非核化などをめぐり、立場の隔たりが埋まらなければ会談の延期もありうるという考えを示しました。
北朝鮮側は先週、アメリカに対し、一方的に核の放棄だけを求めようとするなら首脳会談を取りやめる可能性を示唆しており、こうした動きをけん制する狙いがあります。
一方でトランプ大統領は「キム・ジョンウン(金正恩)朝鮮労働党委員長の安全を保証する。彼の国はとても豊かになる。私は北朝鮮がこの機会を逃すべきではないと思っている」と述べ、体制の保証や経済的な見返りを示唆して、対話に応じるよう促しました。
また、トランプ大統領は北朝鮮との関係改善を進める中国について「少し失望している。なぜなら、キム委員長が習主席と2回目の会談をしてから、態度が少し変わったからだ。それが気に入らない」と述べ、不信感を示しました。
一方、韓国のムン大統領は「米朝首脳会談の成功や北の完全な非核化について、懐疑的な見方がアメリカに多いことをよく理解している。しかし、過去に失敗したので今回も失敗すると悲観すれば、歴史の発展はない。私は会談が予定どおりに開かれると確信している」と述べ、あくまで会談を開催すべきだと強調しました。
(後 略)
米朝首脳会談延期の一番の敗者はトランプと安倍首相...
天木直人のブログ2018-05-23
トランプがついに米朝首脳会談の延期を口にした。トランプは芝居の出来ない男だ。 これは本音だろう。私は米朝首脳会談の延期もありうると思う。
そうなれば私の読みは外れたということだ。しかし、読みが外れたのは私だけではないはずだ。トランプさえも想定外だったに違いない。皆が読み間違えたのだ。
そして、読みが外れた事は世界にとって不幸な事なのだ。
なぜこんなことになってしまったのか。
それは、ボルトンに象徴される米国のタカ派が調子に乗って北朝鮮に一方的な譲歩を迫ったからだ。今度の想定外のドラマが起きたのは、それを警戒した金正恩が、習近平に助けを求めたからだ。
中国の後ろ盾を得た北朝鮮は強気に転じた。金正恩は、米国の強硬派だけではなく、それを抑えつけられない韓国強硬派に対しても牽制した。
私が疑問に感じたのは文在寅が沈黙した事だ。先の南北首脳会談での二人だけの散歩会談は一体何だったのだろう。首脳間のホットラインを作ったはずなのに文在寅は金正恩と話した形跡はない。
その代りに文在寅は米国に飛んだ。そしてトランプを説得するどころか、逆にトランプの米朝首脳会談延期発言を許してしまった。
なぜトランプは米朝首脳会談の延期を考えるようになったのか。
それは、金正恩に騙されるなという強硬派の雑音にまんまと挑発されたからだ。ボルトンの首を切るどころか、ボルトンの言葉に乗せられたのだ。
ボルトンは真っ先にペンスを説得し、ペンスに言わせた。
米国をなめるとリビアのようにしてやると。
「なめられたらいけない」
この言葉こそボルトンがトランプに翻意させた決め言葉だ。
トランプは単純で正直な男だ。
世界一のアメリカを標榜するトランプは「舐められる」ことに我慢が出来なかったのだ。
それともうひとつ。
ボルトンがささやいたのが、金正恩がトランプから習近平に寝返ったという言葉だ。
嫉妬ほど独裁者の心を揺るがすものはない。
米朝首脳会談の主役が、自分と金正恩ではなく、金正恩の後ろに習近平が居ると知った時点でトランプの顔色は変わったはずだ。
その証拠にトランプは米朝首脳会談延期の可能性を公言した時、はっきり口にした。
金正恩は習近平と二回目の会談をしてから変わったと。
これを要するに、トランプは、米朝会談に応じた時のトランプとは別人になったということだ。
あの時、自分の判断で北朝鮮の体制保証と引き換えに北朝鮮の非核化というディールを決めた。それは間違いなかった。しかし、まわりの強硬派の雑音に影響された時点でトランプでなくなったのだ。
トランプがトランプでなくなった時、もはやトランプは凡庸な米国大統領でしかない。
もし6月12日の米朝首脳会談が延期されるとそれは無期延期になるだろう。
米朝首脳会談が成功すれば皆が得する事になったが、不成立になれば皆が敗者だ。
その中でも、習近平と金正恩は同盟関係の確認・強化で得るものはあるが、南北平和の進展が不透明になった文在寅は敗者だ。
ノーベル平和賞どころかイランと北朝鮮という二正面作戦を強いられるトランプはもっと敗者だ。
そのトランプに従属するしかない安倍首相は、もはや出る幕はない。
安倍首相に残されたものは、疑惑究明に対する国民不信だけである。
米朝首脳会談の不首尾を内心で一番望んでいた安倍首相が、皮肉なことに、一番の敗者となるのである(了)