2018年5月2日水曜日

「憲法カフェ」を通して感じていること (田中淳哉 弁護士)

 「湯沢平和の輪」でこれまで二度、憲法カフェを主宰していただいた田中淳哉 弁護士が、上越中央法律事務所のブログに、「『憲法カフェ』を通して感じていること」という記事をアップされました。同氏は既に新潟県内各地で80回ほど「憲法カフェ」を行っておられるということで、如何に好評を博しているかが窺われます。
 
 記事は、田中弁護士がどんな思いで憲法カフェを準備し、話をされているかについて書かれています。
 単に「答え」を提示するのではなく、問題の所在や対立の構図、考えるうえで必要となる前提知識などをなるべくわかりやすく伝えることを心がけているということで、「講師の意見を鵜呑みにするのであれば、それと異なる意見に接したときにその意見を鵜呑みにしてしまうことにもなりかねない」とも書いておられます。永く記憶に残りそうな言葉です。
 
 読ませていただくと、受ける側の我々はどういう心構えで臨むべきかということを教えられます。
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田中淳哉 弁護士 2018年5月1日
青年法律家協会という弁護士団体の活動報告として書いた原稿なのですが、私がどういう思いでやっているのかが伝わるかなと思いブログにアップすることにしました。
 
1 はじめに
既にご存知の方ばかりかと思うが、「憲法カフェ」は、カフェやレストランなどリラックスできる場で、楽しみながら憲法を学ぶことを呼びかけるものだ。主催者が日時や場所を決めて参加を呼びかけるのではなく、参加者側からのオファーを受けて講師の方がおじゃまするというのも特徴の1つだ。「自分が行っても浮いちゃいそう」、「怖い」、「そもそも行ける時間じゃない」など、参加の妨げとなっている要因をできる限り取り除き、「参加しやすさ」を追求したものと言えるだろう。
 
私は、4年程前に、神奈川の太田啓子弁護士が「憲法カフェ」に取り組んでいることを知り、「みんながやらなきゃいけないと思いながら、できていなかったことをほんとにやっている人がいる!」と衝撃を受けて以降、取り組むようになった。その後、県内各地で80回ほど「憲法カフェ」を行ってきた
 
2 答えではなく考え方を示す
自分なりに大切にしているのは、「その場限り」にしないことだ。
社会の分断が進むなかで、国民の間には、何が正しいのか、どのように考えたらよいのかという迷いや悩みが広がっている。こうした迷いや悩みに対して、「答え」を提示することは簡単だし、表面的なニーズには合致するだろう。しかし、それでは発展性がない。講師の意見を鵜呑みにするのであれば、それと異なる意見に接したときにその意見を鵜呑みにしてしまうことにもなりかねない
 
そこで、社会の問題に対する基本的な物の見方や考え方を身につけられる場にしたいと考え、問題の所在や対立の構図、考えるうえで必要となる前提知識などをなるべくわかりやすく伝えることを心がけている。また、クイズを出題するなどして、できるだけ自然な形で、自分で考えたり、他の人の考えを聞いたりする機会が持てるようにしている。双方向でのやりとりを通じて考えが深まったり、新たな発見があったりすることも多く、講師が一方的に話すスタイルより、参加者も講師も満足度が高い。
 
3 つながりと広がりをつくる
終了後は、ブログ記事を書く。ブログには、いつ、どこで、誰を対象に、何を話したかということだけではなく、印象に残ったやりとりや参加者の感想、私自身が感じたことなどを書くようにしている。終了後に、参加者とSNSでつながることも多いが、ブログやSNSでの投稿を見た「以前の参加者」から再度オファーが来ることもある。関心を広げたり、学んだことを思い出したりするうえで、ブログが役立っているのではないかと思う。
 
これは余談だが、ブログは本当にオススメである。ブログを読んだ学校関係者から憲法教育や主権者教育のオファーがきたり、地元紙から取材が入ったりすることもある。地元紙でコラムを連載することになったのも、ブログの存在によるところが大きい。弁護士としての社会的活動を広げていくうえで、背骨の様な役割を果たしていると感じている。
 
4 おわりに
その時々の世論を変えるという狭い視野ではなく、時間がかかっても全体としての主権者力を底上げしていくことが求められていると思う。そのためには1つ1つの取り組みを「その場限り」にしないことが重要であるし、そのことが参加者の本当のニーズにも合致しているのではないかと感じている。