2018年5月21日月曜日

21- 金正恩氏の強気発言にトランプ氏が譲歩

 先に、北朝鮮で対米下打合せを担ってきた金桂冠第1外務次官が、ボルトン氏らの高圧的な態度(リビア方式の適用など)を強く批判したのに対して、トランプ氏は、「金正恩氏からは何も言ってきていない」とかわす一方で、「我々はリビア方式の適用を全く考えていない」と表明しました。
 同時に、もしも米朝会談が決裂すれば何が起きるかわからないという、安倍首相好みの発言もしている点は浅はかなことで、重要な会談に臨む当事国が口にすべきものではありません。トランプ氏にはそういうラフさがあります。それが身上なのかもしれませんが。
 
 日本のメディアはどうしても北朝鮮のことを揶揄的な見方で報じますが、北の主張は正当なのでトランプ氏も受け入れざるを得なかったし、冷静にタイミングを見計らった発言でした。
 ここにきて中朝首脳の2度目の会談は、進捗の停滞ぶりを見かねた中国側が働きかけたものという見方も言われ出しました。中朝は元々親密な関係にあったのですから、仮にそうであったとしても何の不思議もないし、北朝鮮としては心強く思ったことでしょう。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
米国が譲歩 習近平の振り付けで踊る金正恩の強気シナリオ
日刊ゲンダイ 2018年5月20日
 史上初の米朝首脳会談をめぐり、中止をチラつかせる金正恩朝鮮労働党委員長とトランプ大統領の神経戦が過熱している。焦点は非核化プロセスだ。米国が垂れ流す核放棄先行プランに金正恩がブチ切れると、トランプはあっさり降参。譲歩する姿勢を見せている。金正恩の強気の裏には、血盟関係の兄貴分、中国の習近平国家主席の存在がチラつく。
 
 北朝鮮は板門店宣言にもとづく南北高官級会談を当日ドタキャン。返す刀で米朝首脳会談の中止を示唆し、米国をはじめとする国際社会を揺さぶっている。
 口火を切ったのは、対米外交を長年担ってきた金桂冠第1外務次官だ。
「ボルトンをはじめとするホワイトハウスと国務省の官僚らは〈先に核放棄、後に見返り〉方式をほざいている。リビア核放棄方式とかCVID(完全かつ検証可能で不可逆的な廃棄)などの言葉をためらいもなく吐いている」という談話を発表。南北協議首席代表の李善権祖国平和統一委員長も「南北高官級会談を中止させた重大な事態が解決されない限り、対話はしない」などと気炎を上げた。
 
■米国譲歩で「リビア方式」却下
 北朝鮮がヤリ玉に挙げているのは、米政権で最強硬派のボルトン大統領補佐官(国家安全保障担当)がブチ上げた核弾頭や核関連物質、ICBM(大陸間弾道ミサイル)の早期の国外搬出だ。
 金正恩の強気な態度の裏には、習近平の思惑が見え隠れする。今月上旬に行われた2度目の中朝首脳会談で、習近平は米朝首脳会談の結果のいかんにかかわらず、中国は北朝鮮を積極支援すると約束したという。米朝会談が実施されさえすれば、惜しみなく協力するというのである。金正恩にとっては、この上ないビッグスポンサーだ。
 
「米国への揺さぶりには、習近平主席の意向も影響していると言っていい。朝鮮半島和平プロセスの延長線上にある対北経済支援をめぐり、中国は主導権を握り、北朝鮮への影響力を強めようと画策している。一方、中国の影響力をそぎたい米国は韓国と日本を巻き込み、民間資本も投入する大規模支援でイニシアチブを握る青写真を描いていて、米中の利害は対立している。その上、米国に仕掛けられた貿易戦争でイラ立ちを強める習近平主席は、米朝対話の立ち往生を演出することで、トランプ大統領をパニックに陥れようと仕向けているのです」(中朝外交関係者)
 
 気に食わないことがあると、ツイッターでわめき散らすトランプが珍しく沈黙。ようやく口を開いたと思ったら、「北朝鮮に対して、われわれはリビア方式の適用を全く考えていない」と一気に譲歩し、米朝会談が成功すれば「金正恩氏は極めて強固な保護を得ることになるだろう」「金正恩氏は北朝鮮にとどまって国家を経営し、彼の国はとても豊かになるだろう」とまで持ち上げた。
 
 拘束された米国人3人の解放に成功し、11月の中間選挙に向け意気揚々と突っ走ろうとするトランプにとって、米朝会談は絶対に捨てられない駒だからだ。
 こうなれば、金正恩と習近平にとってはシメシメの展開である。