世に倦む日々氏が、「習近平の努力で米朝交渉がほぼ妥結ー 破談と北崩壊を狙うCIA」という、8日、習近平氏と金正恩氏の2度目の会談が行われてから2つ目のブログを発表しました。7日に発表した「体制保証と不可侵条約 - 文在寅と米保守派とのヘゲモニー争い」を含めると1日おきに3つの論文を発表したわけです。
同氏は、以前は4000語前後の濃密なブログを月に20本ほども発表していました。それが月15本前後になり、近年は月10本程度に減っていましたが、往年の意欲が甦ったかのようです。
時事通信は9日、習近平がトランプ氏に「北朝鮮の合理的な安全保障上の懸念を考慮し、朝鮮半島問題の政治解決プロセスを共同で進めることを望む」、「米朝が段階的に行動し、交渉を通じて各自の関心事項を解決することを願う」と伝えたことを報じ、11日には、「金正恩委員長はトランプ大統領との会談で、米国からの『体制保証』を得ることを最優先にし、朝鮮戦争の終戦宣言と米国による『不可侵』の確約を求めるとみられる」と報じました。
これらはいずれも、まさに「世に倦む日々」氏が分析し推理していたことで、それが見事に的中したわけです。ここまでピタリと的中すれば面白くてしようがないでしょう。それにしても驚くべき透視力です。
彼はまた、トランプ政権内で米朝和平を望んでいるのはトランプ氏だけ(ポンペイオ国務長官は目下はトランプ氏の支持に従ってはいますが)で、他のCIA系の極右のメンバーは、北朝鮮のことをイラクやリビアと同様にいずれは殲滅すべき対象としか見ていないと分析しています。
それにしてもアメリカの極右勢力の冷酷さと獰猛さには驚きますが、それこそがアメリカの実態です。
世に倦む日々氏は、米朝会談の下打合せを進めている米側メンバーが、正確な情報(北朝鮮からの要求事項等)をトランプ氏に上げているのかも疑問だとしています。
そうしたモヤモヤは取り敢えず習近平氏の一撃で打破されて、12日の米朝会談に漕ぎつけることが出来ましたが、たとえ12日の米朝会談が成功裏に終わったとしてもその先は予断を許しません。
しかし、この件ではなんとか平和裏に収まって欲しいものです。
追記)
「世に倦む日々」氏は徹底した憲法9条の支持者で、先に「新党憲法9条』代表の天木直人氏が衆院選に立候補した時には応援演説に行っています。その後、天木直人氏が主宰している対談動画には何度か本名で登場しています。
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習近平の努力で米朝交渉がほぼ妥結 - 破談と北崩壊を狙うCIA
世に倦む日々 2018年5月11日
昨夜(10日)、トランプがツイッターで6月12日にシンガポールで米朝会談を開催と発表した。ようやく米朝首脳会談の日程と場所が決まった。結局、文在寅が提案した板門店は却下となった。6月第3週にシンガポールで開催という情報は、今月5日に米政府筋の話として朝鮮日報にリークされていて、ボルトンらが巻き返して文在寅の役割と影響を排除した動きが示唆されていたが、果たしてそのとおりの結果となった。その記事が出た直後、今度は反CIA側が逆襲に転じ、金正恩が7日に大連に飛び、習近平が8日にトランプに電話会談を入れ、その日のうちにポンペイオの平壌派遣となって、10日深夜に日程と場所の正式発表と続く。昨夜の朝鮮中央テレビは、「トランプ大統領が『新たな対案』をもって対話を通じた問題解決に関心を示し」たと報じ、9日の金正恩・ポンペイオ会談について「満足のいく合意を見た」と伝えた。金正恩が北朝鮮メディアを通じて米朝首脳会談について公に言及するのは初めてで、つまり、交渉が合意に至ったことを内外に告げている。この報道の後、アンドリュー空軍基地での人質帰国の絵が続き、トランプのツイッターとなった。
アンドリュー空軍基地の絵の中に、私が見たところ、ボルトンの姿はなかった。午前3時という時間だから無理もないのかもしれないが、71歳の大統領が国家の大事に奔走・精勤しているのに、この問題に携わる要職のスタッフが傍らに侍ってないのは不自然に映る。どうやらやはり、習近平の一喝が効いたようで、トランプが慌てて交渉妥結を部下に指示して動いた可能性が高いと考えてよい。習近平は、「北朝鮮の合理的な安全保障上の懸念を考慮し、朝鮮半島問題の政治解決プロセスを共同で進めることを望む」と述べ、「米朝が段階的に行動し、交渉を通じて各自の関心事項を解決することを願う」とトランプに言ったと時事が書いている。つまり、北朝鮮の要求を受け入れて譲歩しろと迫っている。この一押しが効果を上げた点は間違いないようで、今日(11日)の時事が交渉妥結の中身を次のように書いている。「北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長は(略)トランプ米大統領との会談で、米国からの『体制保証』を得ることを最優先にし、朝鮮戦争(1950-53年)の終戦宣言や米国による『不可侵』の確約を求めるとみられる」。
自慢は慎むべきだけれど、私の分析と予測が的中する結果となったと言える。北朝鮮が米国に求めていたのは「体制保証」だった。その中身は「不可侵条約」だった。実際には、古色蒼然とした前時代的な「不可侵条約」ではなく、「不可侵声明」とか「不可侵確約文書」というような形式になるだろうが、北朝鮮が完全非核化の対価として米国から得ようとしている成果はそれだった。ようやく、この事実が明らかになった。この4か月ほど、日本のマスコミでは北朝鮮問題の専門家と称する論者たちが入れ替わり立ち替わりしてスタジオに陣取り、進行中の米朝外交の「解説」を垂れてきたけれど、一人として、「不可侵」が北朝鮮の要求の本命だと指摘した者はいない。どれもこれも、北朝鮮の非核化ばかりに焦点を当て、北朝鮮を一方的に武装解除する視角からのみ論及し、これが二国が取引する外交だという本質から目を逸らし、北朝鮮が米国に何を求めているかという重大な要点に関心を向けなかった。リークはCIAを通じて行われ、米国(ボルトン)に都合のいい情報だけが撒かれ、そのリーク情報に基づいて日本のマスコミは交渉の観測と報道を続けた。
平井久志などは、それでも他に比べればましな方だが、北朝鮮が言う「段階的」の意味は、段階的に非核化を進めるから段階毎に経済支援をくれという意味だなどと講釈していた。とんでもない間違いだ。北朝鮮は米国に経済支援など求めていない。中国が本格的な経済制裁の締め上げを実行する昨年まで、国連による数次の制裁下にあっても、北朝鮮は年10%の経済成長を悠々と達成していたのである。平壌市内には高層ビルが林立し、道路に車の交通量が増え、市民が携帯電話を所有利用する姿が漸増していた。民生品の内需と中国貿易のトリクルダウンと出稼ぎ労働者の収入で、国連制裁下でも経済は何の影響も打撃も受けていなかったのだ。北朝鮮が米国に求めているものは「体制保証」で、それはこの20年以上一貫して同じであり、核放棄と体制保証を取引しようと言い続けてきた。ようやく機会が到来したのであり、米朝会談が正式発表されたということは、米国がその要求に基本的に応じたことを意味する。スタック(立往生)していた米朝交渉が習近平の一喝で動き、北朝鮮に要求を押し込むばかりだった米国が折れて譲歩した。
北朝鮮と米国が交渉して合意が成立するとすれば、それは、米国が「体制保証」を与えるときなのであって、それを米国側が決断しないかぎり米朝会談は成立しない。交渉が決裂したときは、トランプの外交が失敗したときであり、期待を抱かせながら口先だけで終わる失態に沈む幕であり、中間選挙に向けた戦略が一瞬で水泡に帰するときだ。だから、それを避けないといけないトランプは、どうしても6月中に米朝会談を開かないといけないし、米朝和平を演出して大成功をキャンペーンしないといけない。文在寅が提案してきた「朝鮮戦争の終結と平和協定への移行プロセス」に乗らないといけない。決断を遅らせれば、時間が間延びして期待と興味が萎み、それはトランプの失点となる。選挙戦略のマイナスになる。ボルトン的なリビア方式は、そもそも北朝鮮に適用するのは無理であり、核のアセットが国内に数多く散在する北朝鮮では、完全な核廃棄を実行し検証・確認するまで何年も時間がかかる。それを待っていると経済制裁による疲弊で暴動が起きて国家が崩壊してしまう。先に核放棄という条件では交渉ができない。意味がない。
リビア方式という案は、北朝鮮非核化の外交において現実性がないものだ。現実性がなく物理的に困難な選択なのに、さもそれがベストの決着であるように保守派の論者たちはテレビで言い、官邸の言いつけどおりに口パクする後藤謙次のように北朝鮮への不信を煽りまくった。一応、DCの政治の表面では、トランプがボルトンから主導権を取り戻したように見え、これから先、歴史的会談の成功への助走路を演出する祝賀的な報道が続くことだろう。だが、私はあまり楽観的な見方にはなれない。この会談を成功させたいと欲している人間が、トランプの周辺にほとんどおらず、逆に、この会談を挫折に終わらせ、軍事オプションの方に旋回させたい人間ばかりだからだ。習近平の一撃が入らなければ、米朝会談はどう漂流していたか想像もできない。米国と北朝鮮はどこかで担当者が折衝している。場所と手段は分からない。平壌かもしれないし、第三国の別の都市かもしれない。電話かメールかもしれない。刻々の交渉内容は、CIAが、CIAの世論工作の思惑で、朝日ソウル支局長の牧野愛博などCIAのエージェントを使ってリーク報道させている。
9日に朝日紙面でリークされた内容はひどいものだった。それを見ると、北朝鮮で核開発に関連した数千人の技術者を海外に移住させることを要求している。データの廃棄と人工衛星の開発途絶も求めている。大坂の陣の豊臣方に対する徳川方のように、当初は全く想定になかった要求を狡猾にねじ込み、「完全非核化」の中身をどんどんエスカレートさせている。担当者の実務折衝の過程で、北朝鮮側の要求には応じず、北朝鮮には次々と非核化の中身(IAEAの査察検証・保有核全廃・ICBMの廃棄・完了期限2年)を応じさせ、満額回答を得ながら、さらに強欲に次から次へと無理難題をふっかけていた。以前の北朝鮮なら、すぐに席を蹴り卓袱台を返して暴れるところだが、今回はその態度をとらず、中国の習近平に依頼して助太刀を乞うという方策で切り返した。北朝鮮が大人になったのかもしれないし、文在寅(徐薫か鄭義溶)が金正恩に入れ知恵してやったのかもしれない。なぜかよく分からないが、トランプは習近平の言うことは素直によく聞く。ビジネスのビッグな得意先だからだろうか、習近平の意見には前向きに反応する。いずれにせよ、まだ油断はならない。
また隙を見て、CIA・軍産複合体(ボルトン)がリベンジに動くだろう。会談の転覆を執拗に画策するだろう。彼らは、この米朝和平の機会を捉えて北朝鮮を最終的に崩壊させる謀略を企んでいる。元CIAのスー・ミ・テリーが彼らの本音を正直に漏らしている。嘗て、ゴルバチョフが理想の政治に見えるペレストロイカを推進して、世界の歓呼と賞賛を浴びつつ冷戦を終結させながら、そのまま勢いで滑走してソ連崩壊という暗転と自滅の結末に導いてしまったように。右翼はその成功体験の再現を目論んでいる。