2018年5月5日土曜日

05- 安倍退陣間近 その後の激動と空前の混乱 <下>(日刊ゲンダイ)

「安倍退陣カウントダウン その後の激動と空前の混乱」の最終編です。
 
 安倍退陣となった場合、次期自民党総裁は石破氏が有力と見られています。
 もしもそれが実現すると、石破氏は憲法9条第2項を廃止するという徹底的な9条改憲論者なので、護憲運動は一層重要になってきます。
 それはそれとして5年以上に及ぶ安倍政治で、この国と国民生活は根幹から破壊されました。日銀に国債を買い支えさせる事実上の財政ファイナンスで国の借金は1000兆円を軽く突破したのに、米国の言い値で高額兵器を買い漁り、防衛予算は史上最高を更新し続けています。それを補うために、社会保障費は年々カットし、生活保護費も医療費への手当ても毎年削減されています。
 安倍退陣に伴ってアベノミクスを終焉させる段階では、株の大暴落・国債金利の暴騰などの悲惨な状況=地獄が出現します。
 
 世界中に札ビラをばらまいただけの安倍外交も完全な失敗に終わっています。
 天木直人氏は「安倍外交が失敗した原因は米国一辺倒だったから。隣国の韓国を見下し、中国包囲網に血道を上げてきた結果、アジアで孤立した」と述べています。
 いまや頼みの綱だった米国からも、「鉄鋼・アルミの輸入制限適用除外」を拒まれ、逆に「武器購入」と「通商協議」を突き付けられました。今回の米朝首脳会談への貢献では、トランプ大統領は習近平主席と文大統領を高く評価しましたが、日本については、武器その他を売り付ける「カモ」としか見ていません。
 
 五十嵐仁・法大名誉教授は
「この国の立て直しは容易ではありません。少なくとも自民党には不可能。時代錯誤と国際感覚に欠けた議員ばかり。この国の大手術には早期の解散総選挙と野党の総結集が不可欠。政権交代を経て、腐敗しきった政権中枢の全てのクビをすげ替え、人事を刷新しなければ、この国は立ち直れません」と述べています。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
安倍退陣カウントダウン その後の激動と空前の混乱 <下>
日刊ゲンダイ 2018年5月3日
(阿修羅 赤かぶ より転載)
ポスト安倍レース、目下の下馬評 
 安倍退陣となった場合、注目されるのが自民党総裁選の行方だ。
 朝日新聞社の世論調査では、「次の総裁にふさわしいのは誰か」でトップに立ったのは石破茂元幹事長(28%)。次いで安倍(23%)、岸田文雄政調会長(6%)、野田聖子総務相(6%)と続く。
 現時点で安倍は、出身派閥の細田派(94人)に加え、第2派閥の麻生派(59人)、第5派閥の二階派(44人)など、党所属国会議員の6割の支持を得ているとされる。これらがどう動くかが、総裁選の焦点だ。ポスト安倍レースはどうなるのか。政治評論家の小林吉弥氏は「事実上、岸田、石破の一騎打ちの戦いになる」と言い、こう続ける。
「安倍さんが岸田さんを後継指名し、安倍支持派が丸ごと岸田支援に回れば、石破さんは厳しい戦いになるかもしれない。でも、それもこれも党内が後継指名通りに動くことが前提です。支持率が危険水域の3割を割り込むような状況をつくった安倍さんの思う通りにはならないでしょう」
 
 しかも、来年は春に統一地方選、夏に参院選がある選挙イヤーだ。世論調査で1ケタの支持しかない岸田では、地方から「選挙の顔にならない」と不満の声が続出するのは確実。
 小泉進次郎がどう動くかもポイントだ。
「進次郎は全国的に知名度が高く、派閥に属さない若手、中堅議員の仲間も多い。彼が石破支持を打ち出し、一緒に全国行脚すれば、石破さんを推す動きが地方で広がる。竹下派(55人)や“策士”の二階派だって『勝ち馬に乗ろう』と考えて、どう動くか分かりません。そうなれば私は石破さんが僅差で競り勝つと見ています」(小林吉弥氏=前出)
 石破嫌いの安倍や麻生は、「岸田が危ない」とみたら、河野太郎外相や野田聖子を出馬させ、地方票を分散させるハラだとみられている。総理総裁が代わったら、時間を置かず解散総選挙に突入する可能性がある。 
 
安倍が破壊した国の立て直しには政権交代も含めた大手術と長い時間が必要 
 5年以上に及ぶアベ政治で、この国と国民生活は根幹からズタズタに破壊されてしまった。
 黒田日銀に国債を買い支えさせる事実上の財政ファイナンスに甘え、国の借金は軽く1000兆円を突破。ない袖は振れないのに、米国の言い値で高額兵器を買い漁る。史上最高を更新し続ける防衛予算を補うために、社会保障費は年々カット。生活保護費も医療費も削減ラッシュで、アベ政治によって老後の不安は増すばかりだ。
「憲法破壊の解釈改憲で集団的自衛権を容認。中国や北朝鮮の脅威をあおりまくって、この国の戦争リスクを高め、国連の核兵器禁止条約には目をそむけた。揚げ句が北東アジアの緊張緩和に蚊帳の外の外交失敗ですから、目も当てられません」(法大名誉教授の五十嵐仁氏=政治学)
 
 何より自分への批判を許さず、敵と味方を峻別し、対立をあおって支持の基盤とする安倍の政治手法は、国民を「安倍シンパ」と「こんな人たち」とに分断してしまった。この国から正義も協調も平和も民主主義も奪い去ったのが、5年以上の安倍政治なのである。前出の五十嵐仁氏はこう言った。
「この国の立て直しは容易ではありません。少なくとも自民党には不可能。財務次官のセクハラ騒動が象徴的ですが、時代錯誤と国際感覚に欠けた議員ばかり。もはや歴史的役割を終えています。この国の大手術には早期の解散総選挙と野党の総結集が不可欠。政権交代を経て、腐敗しきった政権中枢の全てのクビをすげ替え、人事を刷新しなければ、この国は立ち直れません
 5年もの安倍1強支配の時代は余りにも長すぎた。史上最低政権がブチ壊し、もはや焼け野原の国を正常化させるには、長い時間が必要だ。 
 
孤立化した日本は北朝鮮にも舐められ、中国に見下され、米国の財布とされ、翻弄されていくだろう 
「地球儀を眺めるように世界全体を俯瞰して(略)戦略的な外交を展開していく」――。2013年1月、第2次政権の発足に伴う所信表明演説で、安倍首相がブチ上げた「地球儀俯瞰外交」。
 だが、この5年4カ月を振り返れば「安倍外交」が大失敗だったことは明らかだ。
 とりわけ、象徴的なのが急展開した朝鮮半島をめぐる情勢対応だ。北朝鮮に対して「対話のための対話は意味がない」と安倍が拳を振り上げる中、アレヨアレヨと“南北首脳会談”“米朝首脳会談”が決まり、中国も金正恩委員長が北京を電撃訪問して習近平国家主席と会談した。日本だけが「蚊帳の外」に置かれている。
 とうとう、北朝鮮にまで、〈森友学園の問題をはじめとする超大型不正スキャンダル事件で行き詰まり、退陣直前の状況〉(労働新聞)とバカにされる始末だ。
 
 元外交官の天木直人氏がこう言う。
なぜ、この5年間の安倍外交は失敗ばかりなのかといえば、米国一辺倒だったからです。隣国の韓国を見下し、中国包囲網に血道を上げてきた。その結果、アジアで孤立し、重要な外交情報すら教えてもらえない。外交センスがなさすぎます」
 頼みの綱だった米国もつれない。日米首脳会談では「鉄鋼・アルミの輸入制限適用除外」を拒まれ、逆に「武器購入」と「通商協議」を突き付けられた。米国はまだまだ日本を「財布」としてタカるつもりだ。
 
「頻繁に外遊を繰り返し、世界の首脳から『外交の安倍と評価されている』なんて言われていましたが、大嘘であって、何も中身がなかったということがハッキリした。米国のトランプ大統領も『カモ』としか見ていませんよ」(天木直人氏=前出)
 
 安倍外交は世界中に札ビラをばらまいただけ。まったく冗談じゃない。