愛媛県と今治市の担当課長らが15年4月、官邸を訪問した際に、首相秘書官(当時)の柳瀬唯夫氏が、加計学園の獣医学部新設について、「本件は首相案件。内閣府の公式のヒアリングを受けるという形で進めていただきたい」と国家戦略特区の活用を勧められ、「既存の獣医大学との差別化を図った特徴を出すこと」など助言も受けたということですが、元官邸スタッフや秘書官経験者らによると、「首相秘書官が自治体課長クラスの訪問を受けることは、一般的にはない」、「知事が陳情に来ることはあっても、自治体の課長クラスの訪問は見たことがない。ましてや秘書官が助言するなんてあり得ない」ということです。
その異例の面会が実現した後は、それまで15回連続で認められなかった獣医学部の新設が認められ、ついに今年4月開学に漕ぎつけました。
それは「首相案件」といういわば『旗じるし』が、如何に絶大な効果を発揮するのかの証明でもありました。
東京新聞の記事を紹介します。
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自治体職員 面会「異例中の異例」 元官邸スタッフら本紙に証言
東京新聞 2018年5月8日
柳瀬唯夫首相秘書官(当時)と愛媛県課長、加計学園幹部らとの二〇一五年の面会を巡り、元官邸スタッフや秘書官経験者から「首相秘書官が自治体課長クラスの訪問を受けることは、一般的にはない」との証言が相次いでいる。柳瀬氏は国家戦略特区の活用を勧めたとされるが、官邸側が自治体に直接助言するのもあり得ないとされ、面会の異例さが浮かび上がる。
「知事が陳情に来ることはあっても、自治体の課長クラスの訪問は見たことがない。そもそも秘書官の面会相手は大半が中央省庁で、自治体職員と会う機会はないはず。ましてや助言なんてあり得ない」
一五年当時、官邸スタッフとして首相秘書官と共に仕事をしていた職員が振り返る。「県の課長らに助言までしていたとしたら、どういう経緯だったのか。見当もつかない」
県の面会記録文書によれば一五年四月二日、県と今治市の担当課長、学園事務局長らが官邸を訪問。構造改革特区の申請が十五回連続で認められなかった獣医学部新設について、柳瀬氏から「本件は首相案件。内閣府の公式のヒアリングを受けるという形で進めていただきたい」と国家戦略特区の活用を勧められた。「既存の獣医大学との差別化を図った特徴を出すこと」など助言も受けたという。
かつて橋本龍太郎首相の秘書官を務めた江田憲司衆院議員は「秘書官が自治体の課長に会うことは絶対にない。あるとしたら首相の地元の市町村長くらい。地元でもない自治体の課長と面会したとすれば、異例中の異例だ」と強調。
一五年当時、官邸に出向していた官僚も同様に「秘書官が自治体職員の訪問を受けるのは一般的でない」と証言する。
秘書官が通常、自治体課長クラスと会わないのは、自治体の相談相手となる中央省庁が存在することに加え、「格の違い」という霞が関の論理もある。当時、官邸に詰めていた別の官僚は「秘書官は省庁の局長級に相当する」と説明。「私のような省庁課長に会いに来るのも、自治体なら部長クラス以上だ」と話す。
特別な面会が実現した理由について「首相案件だからでしょうか」と推測し、こう続けた。「国家戦略特区は本来、どこかを特別扱いできる仕組みではないのに」 (池田悌一)