2018年5月2日水曜日

02- 拉致問題から逃げるかのよう・・北に見透かされている安倍政権

 対北圧力路線で米国と完全に一致していると思っていた安倍首相は、今年に入って大勢は南北宥和から米朝会談に向かっていることを知り、慌てふためきました。それで2月以降、色々なルートで日朝会談を模索しましたが、北からはケンもホロホロに扱われたということです。
 それが27日の南北首脳会談で、金正恩氏が「日朝会談にいつでも応じる」と述べたことが分かりようやく愁眉を開いたのですが、なぜか安倍首相はそのことには一切触れずに外遊に出掛けました。安倍首相に依頼され尽力してくれた文大統領に対して随分と礼を失した話です。
 
 いずれにしても日本と北朝鮮との対話の窓口が開かれたのは喜ばしいことなのに、安倍首相の態度はなぜかチグハグです。
 元外交官の天木直人氏は、
日朝首脳会談が実現すれば、拉致問題をめぐるウソがばれてしまうからではないか。安倍政権はストックホルム合意14年5月に基づく再調査結果を正式には受け取っていないが、内容は把握しているはずで、安倍首相にとって都合が悪いものだと伝えられている。安倍首相が全ての拉致被害者を取り戻すと言い続けているのはデタラメである可能性が高い」と述べています。
 彼は自分の利害で動きかねない人ですが、この件でそれはあってはならないことです。
 もしも指摘の通りであるのなら自らの責任でキチンと釈明すべきです。
 
 ところで安倍首相は、河野外相とともにいまもなお北への制裁強化を訴えていますが、なぜそんなに強気で、しかも無用な不快感を北に与えようとしているのでしょうか。
 
 日本政府の対応について最近の北の論調を見てみると、朝鮮中央通信は28日、
〈朝鮮半島と地域に流れる平和の流れをきちんと感知できない〉
〈急変する情勢下で朝鮮民族や国際社会の願いは眼中になく、自分たちの利害ばかり計算している〉
〈南北の同胞はもちろん国際社会も、対話ムードを壊そうとする行為を決して許さないだろう〉
 党機関紙「労働新聞」29日、同じく
〈外交の流れから追い出され心穏やかではない日本〉
〈米国行脚でも、ボスにしがみつき対朝鮮制裁圧迫を物乞いした〉
〈慌てふためき、我々に対する「最大限の圧力」や「核ミサイル放棄」を言って、くどくどと歩き回っているざまは見るに堪えない〉
という具合で、完全に足許を見透かされています。このことを安倍氏も河野氏も自覚すべきでしょう。。
 
 日朝会談のテーマは02年の「日朝平壌宣言」の具体化で、拉致問題の解決と国交正常化後に行われるかつての植民地支配に対する償いとしての経済援助が主要な課題になります。償いの経済援助は当然行うべきものであり、それは米・韓とも承知の上のことです。
 しかしながら前記の様にすべてが見透かされている中で日本は大丈夫なのでしょうか。
 日刊ゲンダイの二つの記事を紹介します。
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北との対話に尻込み拉致問題から逃げる安倍首相の二枚舌
日刊ゲンダイ 2018年5月1日
 膠着状態の日朝関係が動きだす兆しが見えてきた。南北首脳会談で文在寅大統領から水を向けられた金正恩朝鮮労働党委員長が、「いつでも日本と対話を行う用意がある」と応じたというのだ。それで解せないのが、「拉致問題は安倍内閣の最重要課題」と言ってきた安倍首相の動きだ。金正恩の発言をとうに耳に入れておきながら言及せず、韓国大統領府が発表するまで頬かむりしていた。一体どういうつもりなのか。
 
 南北会談の翌日(28日)、安倍首相は文在寅から報告を受けたトランプ大統領と約30分間電話会談。その翌29日は文在寅とも約40分間電話会談し、来日した徐薫国家情報院長から80分間にわたって一連の説明を受けた。その都度、安倍首相はブラ下がり取材に応じたが、冴えない顔色で「詳細な説明を受けたが、詳細については差し控えたい」「詳細は現段階で申し上げられない」などと繰り返し、中東外遊に飛び立った。その後、韓国が「日本と対話の用意」という金正恩の意向をオープンにしたのがコトの経緯だ.
 急展開する北朝鮮情勢の蚊帳の外に置かれ、慌てて日朝対話を探り始めたのは安倍政権の方だ。圧力一辺倒に業を煮やす北朝鮮はナシのつぶてだったが、ここにきて態度を一変させた。
 
 横田めぐみさんの母親の早紀江さんは「安倍首相も金正恩さんも同じように会談を望んでいるという、今までで一番明瞭で期待できる内容だ」と顔をほころばせている。普段は過剰なほど成果を誇示する安倍首相が、だんまりを決め込んだのはなぜなのか。
 
■拉致問題の進展を阻んでいるのは誰?
 元レバノン大使の天木直人氏は言う。
「安倍首相が金正恩委員長の反応を最初に知らされたのは、トランプ大統領との電話でしょう。トランプ大統領と文在寅大統領に拉致問題の提起を頼み込んでいたわけですから、満額回答と言っていい。それなのに自分の口から一切明かさず、喫緊の課題もない中東へ向かった。日朝首脳会談が実現すれば、拉致問題をめぐるウソがばれてしまうからではないか。まさに敵前逃亡ですよ。安倍政権はストックホルム合意に基づく再調査結果を正式には受け取っていませんが、内容は把握しているはずで、安倍首相にとって都合が悪いものと伝えられている。安倍首相が〈全ての拉致被害者を取り戻す〉と言い続けているのはデタラメである可能性が高いのです」
 
 風向きが変わった途端、安倍首相周辺から「北朝鮮は日本から経済支援を引き出そうとして、拉致問題で態度を硬化させるんじゃないか」(外交筋)と日朝会談に慎重な観測が流れるのも不可思議だ。
 朝鮮半島情勢に詳しい国際ジャーナリストの太刀川正樹氏はこう言う。
北朝鮮からすれば拉致問題は解決済み。日本がストックホルム合意による再調査報告書を受け取らないため、宙に浮いたという認識なのです。安倍首相は拉致被害者の象徴的な存在である横田めぐみさんの救出を訴えてきましたが、北朝鮮は死亡という従来結果を覆していない。このタイミングでそうした事実を突きつけられたら、3年以上もウソを重ねていたことが明らかになる。安倍首相は相当なジレンマに陥っているでしょう」
 
 生存が伝えられる被害者もその家族も高齢化が進む。拉致問題の進展を阻んでいるのは紛れもなく安倍首相本人だ。「拉致問題は安倍内閣で解決する」はやっぱり嘘八百なのだ。
 
 
“圧力一辺倒外交”惨めな結末 金正恩に翻弄される安倍政権
日刊ゲンダイ 2018年5月1日
(阿修羅 文字起こしより転載)
 南北会談は単なる形式的なセレモニーではない、と対外的にアピールする狙いもあるに違いない。
「完全な非核化により、核のない朝鮮半島の実現という共通の目標を確認した」
 世界中が注目した韓国の文在寅大統領と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長による首脳会談から4日   (中 略)
 南北統一に対する金正恩の並々ならぬ意欲を、韓国や首脳会談を控えた米トランプ政権に示した効果は絶大だろう。
 1990年の東西ドイツ統一から28年経ち、極東アジアの民族分断国家である「韓国」と「北朝鮮」の統一実現に向けた動きが一気に本格化してきたと言っていい。
 
■北が求める日朝対話の見返りは100億~200億ドルの経済支援
「いつでも日本と対話する用意がある」。南北会談で金正恩はこうも語っていたというが、北が日朝対話の可能性を示唆した狙いは容易に想像がつく。拉致問題の解決と引き換えに、大規模な経済支援を獲得したいからだ。(中 略)
 金正恩が今後のインフラ整備などで必要になる巨額なカネを引き出す交渉相手に日本を挙げるのはごく自然な流れだ。
 
 安倍首相も「北朝鮮が正しい道を歩むのであれば、(2002年の)日朝平壌宣言に基づいて不幸な過去を清算し、国交正常化への道も開けてくる」と訴えているからだ。北はすでに1965年の日韓国交正常化に伴う経済支援を参考に、日朝国交正常化が実現した場合は100億~200億ドル(約1兆900億~2兆1800億円)の支援が見込める とソロバンをはじき、拉致問題の対応について検討を始めたとされる。
         (中 略
 コリア国際研究所所長の朴斗鎮氏はこう言う。
「金正恩は韓国を後ろ盾にして思い通りにコトを運ぼうとしている。例えば、即時の核廃棄を訴えていた米国は、中国やロシアが『段階的な非核化』に理解を示す中で、徐々に態度を軟化させています。おそらく、支持率が低いトランプ政権が中間選挙を控えて米朝会談を政治利用するだろうと判断し、韓国政府を通じて揺さぶりをかけているのだと思います。日米を知り尽くした北が今後、水面下であらゆる外交交渉を仕掛けてくると思います」 
 
日朝会談も拉致問題も米韓に頼る以外、戦略がない安倍外交 
 英大手ブックメーカーによると、今年のノーベル平和賞受賞者の予想(日本時間の29日夜)で、金正恩と文大統領の南北首脳が1・67倍と断トツ人気だ。中 略
 文大統領の行動力は受賞に値すると評価されても不思議じゃない。北に対して平昌冬季五輪の参加を呼び掛けるなど、南北融和ムードづくりに努めつつ、初の米朝会談の橋渡し役も担ってきたからだ近代民主主義国家の「平和外交」のあるべき姿とも言えるが、対照的なのが安倍外交だ。 (中 略
「対話のための対話は意味がない」「最大限の圧力」などと、ナントカの一つ覚えのように繰り返し、南北融和に冷や水を浴びせ続けてきたのだ。
 ところが、今や、気が付けば韓国、中国はもとより、「完全に一致」と豪語していたトランプ政権までも「対話路線」に舵を切った。はしごを外されて赤っ恥もいいところだ。
 
■「蚊帳の外ではない」と蚊帳の外でいっている
      (前 略
 結局、地球儀俯瞰外交なんて格好つけていた安倍外交の中身は空っぽ。日朝会談も拉致問題も米韓に頼る以外、ナ~ンの戦略もない。そんな安倍とは違って北の外交は二枚も三枚も上手だ。「対話」をチラつかせながらも、揺さぶりを掛けるのを忘れていない。4月29日の党機関紙「労働新聞」は蚊帳の外に置かれた安倍政権をこう酷評していた。
〈朝鮮半島を取り巻く外交の流れから追い出され、心穏やかではない日本〉〈安倍は米国行脚でも、ボスにしがみつき、核問題と一緒に「拉致」問題まで出しながら、対朝鮮制裁圧迫を物乞いした〉〈自分の眉に火が付いたように慌てふためき、我々に対する「最大限の圧力」や「核ミサイル放棄」を言って、くどくどと言いながら歩き回っているざまは、実に見るに堪えない〉
 
 いやはや、もはや完全に足元を見透かされている。日朝首脳会談前からこの調子じゃあ、実現しても先が思いやられる。
     (中 略
 法大名誉教授の五十嵐仁氏(政治学)はこう言う。 
「安倍政権が本気で北朝鮮問題と向き合ってこなかった事実が今、ハッキリしたのです。これまでやってきたのは、北との緊張関係をあおり、政権維持に利用してきただけ。だから、いまだに何ら北との外交ルートを築けず、他国頼みなのです。南北会談や米朝会談が決まったことに安倍首相は『蚊帳の外ではない』と蚊帳の外で言っている。世界の笑いものです」
 惨めの一言に尽きる。