2018年5月4日金曜日

安倍退陣間近 その後の激動と空前の混乱(上・中)(日刊ゲンダイ)

 いまや国会の体たらくは悲惨というべきで、愛媛県職員らから、「本件は首相案件」と述べたと言われた柳瀬氏も、もはや「記憶の限りでは会っていない」では済まされなくなったと、党首脳部が認めざるを得なくなりました。何とか今の事態を打開しようというつもりなのでしょうが、それはそれで政権の傷をさらに大きくすることにもなります。
 いわゆるニッチもサッチもいかないという状態で、はや政権を浮揚させる手段はなくなりました。政権の末期を迎えて、かつてのドンたちが水面下で蠢いているということです
 
 安倍政権が退陣するのは当然の成り行きとしても、問題はこの5年間、ひたすら大企業と大金持ち・投資家たちを大儲けさせてきた、マヤカシのアベノミクスをどう納めるかです。これほど異常な手法が何時までも継続できる筈がありません。何とかうまく収束できればいいのですが、そんなことが不可能なのはことの始まりから指摘されていました。
 
 日本が出口に向かいはじめたと市場が認識すれば、一気に円高が進み、株は下がり、大混乱に陥ります。大企業や大金持ち、投資家はうまく売り抜けることでしょうが、国民の年金積立金で買い集めた株は大暴落し、二束三文になります。なぜなら政府サイドが率先して売り抜けることは許されないからです。かくして本当の地獄が到来します。
 
 日刊ゲンダイの「安倍退陣カウントダウン その後の激動と空前の混乱」の<上・中>を紹介します。
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安倍退陣カウントダウン その後の激動と空前の混乱 <上>
日刊ゲンダイ2018年5月3日
ささやかれる安倍退陣Xデーとそれまでのシナリオ 
 独裁者の末路は、いつも哀れだ――。この5年間、日本を破壊してきた安倍首相の終わりがいよいよ近づいてきた。
 早くも小泉純一郎元首相は、「安倍さんの引き際、国会が終わるころじゃないか」と“6月総辞職”を予告している。政界も“安倍退陣”を想定して動きはじめている
 安倍退陣のカウントダウンは、麻生財務相の辞任が号砲になるとみられている。麻生の辞任は、早ければ連休明けだ。
「麻生財務相が辞任したら、一気に総辞職のムードが高まっていくはずです。安倍首相が防波堤を失うだけではありません。これまで安倍さんを支えていた麻生派も政権から距離を置くようになるでしょう。なにより、政権発足以来、閣内にいた盟友の麻生さんが去ったら“安倍政権は終わった”という空気になりますよ」(政治評論家・本澤二郎氏)
 
 いま政界が注目しているのが、いわゆる“青木理論”と呼ばれるモノだ。内閣と党の支持率を足しても50%を切ったら、政権に赤信号がともる。例えば朝日新聞では、現在、内閣支持率は31%、党の支持率は33%である。党の支持率まで下がりはじめたら、安倍批判が噴出するのは確実だ。
 それでなくても、来年は春の統一地方選と夏の参院選があるだけに、大手紙の調査でも内閣支持率が30%を割ったら、地方から「安倍首相では戦えない」と、安倍降ろしが勃発するのは間違いない。
「安倍さん本人は、まだ辞めるつもりはないようです。でも、10年前、国会で所信表明を行いながら、その2日後に政権を放り投げた前科がある。あの時の再現も囁かれています。安倍首相にとって絶望的なのは、もう政権を浮揚させるカードがないことです。外交もボロが出た。モリカケ疑惑も終わりそうにない。支持率が30%を大きく割り込み、“総裁3選”が絶望となったら、プツンと気持ちが切れて、突然“総裁選不出馬”を表明してもおかしくない。体調もかなり悪そうです」(政界関係者)
 
 国民の支持を失っても、安倍が政権にしがみつこうとしたら、自民党は“昭恵喚問”を認める可能性がある。さすがに、昭恵夫人の証人喚問を突きつけられたら、安倍も総辞職を受け入れざるを得ないだろう。国民を苦しめた政権も、ようやく終わりの時期が迫っている。
 
政権タライ回しに蠢く自民党党内政局の腐臭 
 安倍の“3選出馬断念”が濃厚となり、俄然、騒がしくなってきたのが「ポスト安倍」をめぐる自民党内の派閥の動きだ。
 財務省の福田淳一前次官が辞任表明した当日(4月18日)、派閥パーティーを開いていたのは岸田派。“禅譲”狙いでいつも羊のような岸田文雄政調会長が、「いざという時はやる」と珍しく気を吐いたのだが、乾杯の音頭を取ったのは、実質的な派閥オーナーである古賀誠名誉会長だった。実はポスト安倍を狙う本人たち以上に、かつてのドンたちが水面下で蠢いている
 
 誰が次期首相に就くのか、カギを握っているのが、古賀、自民党の参院会長だった青木幹雄、現幹事長の二階俊博の3人だ。
「古賀さんと竹下派OBの青木さんは事務所が同じ建物内にあり、2人は今年9月の総裁選を見据えて、昨年末から頻繁に話をしています。『通常国会が終わったら動く』ということでしたが、安倍3選が難しくなってきたことで、動きが早まりそうです」(自民党関係者)
 古賀と青木。担ぐ人物が必ずしも同一というわけではない。ただ2人は「安倍1強のままでいいのか」という一点では一致している。青木の元へは、派閥領袖でもある二階も通っているという。
「派閥同士の会合がしょっちゅう行われ、腹の探り合いが始まっています。流れを決めるキーマンは、政高党低を不満に思ってきた二階幹事長でしょう。記者会見などで聞かれれば、安倍3選について『一分の変わりもない』と答えていますが、内閣支持率がさらに落ちたり、地方議員から『これでは選挙が戦えない』と突き上げられれば、安倍降ろしに舵を切るのではないか。二階さんは連立を組む公明党とのパイプも太い。公明党と組んでの安倍降ろしということもあり得るでしょう」(政治ジャーナリスト・鈴木哲夫氏)
 私物化政権の後は、派閥の主導権争いとドンの暗躍……。腐臭が漂ってくる
 
 
安倍退陣カウントダウン その後の激動と空前の混乱 <中>
日刊ゲンダイ 2018年5月2日
(阿修羅 赤かぶ より転載)
安倍退陣で孤立化、迷走必至の黒田日銀 
 安倍政権が退陣となったら、窮地に追い込まれるのが日銀だ。この5年間、中央銀行のプライドを捨て、マヤカシのアベノミクスに加担してきた黒田日銀。先月再任された黒田東彦総裁は「(政権交代しても政策を)変更する必要はない」と口にしていたが、政権の後ろ盾を失ったら孤立化し、迷走するのは必至だ。
 デフレ脱却を掲げる安倍政権のもと、日銀は物価上昇率2%を達成すると鼻息荒く異次元緩和に突入。当初2年の短期決戦だったはずが、達成時期を6度も先送りし、ついに達成時期を削除した。2017年末の国債保有額は、第2次安倍政権が発足した12年末の約4倍の440兆円に膨張している。
 
 いまや、異次元緩和は副作用ばかり目立つ始末だ。マイナス金利で経営を圧迫された金融機関ではリストラが広がり、年金運用が悪化するなど弊害がそこかしこで起きている。
「さすがに黒田総裁本人は異次元緩和の限界や副作用を認め、出口戦略へと舵を切る必要性を感じているといいます。安倍首相が退陣したら、正常化へ動こうとするはずです。でも、新任の若田部昌澄副総裁をはじめ、政策を決定する審議委員のメンバーは官邸主導人事によってリフレ派が多勢を占めている。彼らが政策変更に抵抗する可能性は小さくない。日銀内部も大混乱するでしょう」(金融関係者)
 経済評論家の斎藤満氏はこう言う。
「コトは一国の金融政策の変更では済まなくなっています。異次元緩和を5年も続ける日本は、市場に資金を流す最後のとりでになっている。日本が正常化に動こうとしたら、出口戦略を着々と進める米国や欧州などの海外勢からブレーキがかかる可能性がある。日本まで金融緩和をやめたら、世界経済が悪化する恐れがあるからです。日本が出口に向かいはじめたと市場が認識すれば、一気に円高が進み、大混乱に陥るリスクもあります」
 ハシゴを外された黒田も放り投げ辞任するんじゃないか。
 
刹那のバブル終焉後、国民には相当な覚悟が必要 
 異次元緩和で市場にマネーをジャブジャブつぎ込み、円安株高を演出したのがアベノミクスの正体だ。日銀はETF購入でも買い支え、日経平均株価は一時、2万4000円の大台を突破した。しかし、安倍が辞任し、アベノミクスが幕引きとなれば、2倍に値を上げた「官製相場」も終焉を迎えることになる。
「外国人投資家らはアベノミクスがトンデモないインチキだと分かっていながら、官製相場に乗じて株を買ってきました。いまのマーケットは刹那のバブル状態。いったんはじけたら、どこまで下げるか見当がつきません。第2次安倍政権発足前の水準まで売り浴びせられる可能性もありますし、それ以上に落ち込む可能性もないとはいえない。というのも、この5年間の市場操作によって、どのあたりが適正な水準なのか投資家も判然としないのです」(斎藤満氏=前出)
 
「円安株高」が逆回転し、「円高株安」となったら、ダメージをモロに食らうのが企業だ。輸出関連企業を中心に為替差益でウハウハだったのが一転、業績悪化で株価が下がる負のスパイラルに陥るのは必至。企業業績が悪化すれば当然、サラリーマンの給与へシワ寄せが及ぶ。なにしろ、内部留保が過去最高の417兆円に達するほど荒稼ぎしても、大半の企業が賃上げを渋ってきたほどだ。
 そうでなくても、サラリーマンの手取りは減り続けてきた。経済アナリストの菊池英博氏の試算によると、労働者の実質賃金は、年平均15万円もダウンしたという。5年間で75万円のマイナスである。
 筑波大名誉教授の小林弥六氏(経済学)もこう言う。
「デタラメなアベノミクスが日本を借金国家にしてしまった。国と地方の抱える借金は来年度には1100兆円を突破します。こんな放漫財政が2年も続けば、国債償還のメドが立たなくなり、財政破綻は避けられない。国家破産です。その先に待つのはハイパーインフレ。国は借金を踏み倒す代わりに、国民の財産はパーになってしまう」
 インチキ経済政策が広げた傷口は想像以上に大きい。ツケを回される国民は相当な覚悟が必要だ。 
 
安倍退陣で森友、加計ほか疑惑の解明は進むのか 
 2年にわたって国会で追及が続き、国政混乱の元凶となったモリカケ疑惑をはじめ、自衛隊の日報隠蔽、財務省の公文書改ざんなど史上最低・最悪の政権下で噴出した疑惑の数々――。果たして安倍退陣後にその解明は進むのか。ハッキリ言って期待できない。
 なぜなら、安倍退陣後も自民党政権が続くことは変わらないからだ。その自民党はアベ政治の5年間、ひたすら安倍にかしずき、1強体制を許してきた。気づけば“魔の3回生”と呼ばれる安倍チルドレンのように、自分の意見も思想も政治哲学もなく、安倍の言い分を全面支持するような“ヒラメ議員”ばかりに成り果てた。
 安倍にとことん気に入られたくてネトウヨ的な思想に同調し、“政敵”の前川喜平前文科次官にも嫌がらせを続けてきた連中に自浄能力など求めるだけムダだ。
 
 安倍夫妻が“主役”にほかならない森友疑惑が招いた財務省の公文書改ざんの内部調査も、安倍退陣でウヤムヤ決着がオチ。もはや疑惑解明の道筋は大阪地検の捜査くらいしか残されていないが、こちらも立件を見送ると報じられるありさまだ。いくら安倍が退陣したところで、新政権誕生のドサクサに紛れて疑惑解明は棚上げ、国民にはモヤモヤが残る結果となるのは目に見えている。
「日本にとって不幸なのは政権交代可能な野党が存在しないことです。保守政権と革新政権が入れ替わるたび、前政権の不正が掘り起こされる韓国とは大違い。だから、国民の間に『諦め』がはびこり、内閣支持率は下落しても、自民党の支持率は下がらない。野党も政権交代を目指すなら、安倍退陣で疑惑追及の手を緩めてはいけません。国民も野党に『しっかりしろ』とハッパをかけ続けることが大事です」(高千穂大教授の五野井郁夫氏=国際政治学)
 
 安倍退陣で疑惑がウヤムヤになれば“安倍残党”のネトウヨなどがアベ政治の5年を美化し、再び息を吹き返す可能性もある。史上最低・最悪の政権は完全に息の根を止める必要がある。