2018年5月2日水曜日

拉致被害者・蓮池薫氏が国民に対話を呼びかけ!

 5月中に行われる米朝首脳会談が上手くゆけば、日朝首脳会談の環境としてはこれ以上のことはありませんが、仮に初回は頓挫したとしても、日朝会談を行い02年の「日朝平壌宣言」の実行に向けての協議を続ける必要があります。
 
 日本の多くのメディアが、まるで安倍首相の考え方が伝染したかのように北朝鮮への猜疑心丸出しの報道を続けている中で、拉致被害者である蓮池薫氏が初めて重い口を開きました。
 薫氏はこれまで自身の立場や、北朝鮮に対する国民感情、安倍首相による対北圧力政策を考慮して公の場で、拉致問題に関する日本政府の方針について具体的な言及をすることはほとんどありませんでした。
 同氏は、29日に放送された『池上彰 緊急スペシャル(フジテレビ)のインタビューを受けて
「『拉致問題を解決すれば国交正常化』というこのパターンを受け入れて、(国民の皆さんに)支持していただきたい」と訴えました。
 
 拉致問題北朝鮮への強硬姿勢、圧力一辺倒では全く解決せず、対話やある程度の妥協が必要なのは自明のことで、そのチャンスは過去に何度もありました。しかし北朝鮮問題を改憲や愛国心扇動に政治利用したい安倍首相と安倍シンパで固められた「救う会」は、常に圧力だけが有効であるとして、対話の可能性を探る動きを徹底的に封殺してきました。 実に罪深い話です。
 
 蓮池薫氏は北朝鮮核開発と経済成長の両方を進めようとした「並進路線」を終わらせ経済一本に転換しようとしているこのときに、日本側が平壌宣言に立ち戻り経済協力を実施する姿勢を見せれば、拉致問題が大きく動くチャンスがあると冷静に分析したのでした。
 そして千載一遇のこのチャンスにという切迫感が、薫氏を突き動かした・・・LITERAはそう分析しています。
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南北会談を受け拉致被害者・蓮池薫が国民に対話を呼びかけ!
「拉致解決の大きなチャンス、日朝国交正常化を支持して」
LITERA 2018年5月1日
 朝鮮半島の平和に向けて歴史的な一歩となった南北首脳会談。2〜3週間のうちには米朝会談も行われる予定だが、日本もこの対話の流れを全面的に支持し、積極的にコミットしていく必要があるだろう。なぜならこれは朝鮮半島の非核化や朝鮮戦争終結につながるだけでなく、日本人拉致問題の解決にも大きな突破口となる可能性があるからだ。北朝鮮との対話は、政治的な立場とは関係なく、プラグマティックな意味で最大のチャンスなのである。
 ところが、日本のメディアは相変わらず「北朝鮮は日本の金を狙っているだけ」「北朝鮮に騙されるな」と連呼するばかり。安倍政権も、表向きは歓迎コメントを出したが、現実には強硬対決路線をまったく変えようとしていない。
 
 そんななか、テレビで勇気のある発言をしたのが、拉致被害者である蓮池薫氏だった。
 4月29日に放送された『池上彰緊急スペシャル 激動の朝鮮半島!どうなる拉致問題!平成の宿題 徹底解説』(フジテレビ)のインタビューで、池上氏から「日本にいる私たちに何ができると思いますか」と聞かれた蓮池薫氏は、こう踏み込んだのだ。
「国民のみなさんにお願いしたいのはですね、『そもそも拉致というのは国家犯罪でそこに見返りとかそういうものはありえない』というのは当然、正論だと思いますが、しかし『拉致問題を解決すれば国交正常化』というこのパターンを受け入れて、支持していただきたい
 強気に行って、追い込んで、降伏させるというには時間がかかるし、なかなか無理だろうと、いま当面は。だから、そういう日本政府が柔軟な政策に基づいて解決しようとしたときに、積極的に支持していただければ、政府は動きやすいでしょうし、そうすれば解決への道が大きく開けてくるのかなと。まさにそのタイミングはいま近づいてきているのかなと、こう思います」
 言葉こそ慎重に選んでいるが、これは、いままでの日本政府の圧力一辺倒に疑義を呈し、その転換を国民世論に訴えかけたものに他ならない。
 
 拉致被害者である蓮池薫氏自身が、ここまで踏み込んだ発言をするというのは異例のことだ。薫氏の兄である元「家族会」副代表・蓮池透氏は近年、安倍首相らによる拉致問題の政治利用と圧力一辺倒を真っ向から批判するようになったが、薫氏はこれまで公の場で、拉致問題に関する日本政府の方針について具体的な言及をすることはほとんどなかった。
 自身の立場や、北朝鮮に対する国民感情、そしてこれまでの安倍首相による圧力を考慮して沈黙せざるを得なかったのだ。
 
批判を承知で「対話と妥協」を呼びかけた蓮池薫氏の思い
 本サイトでは何度も指摘してきたが、拉致問題の解決を考えれば、北朝鮮への強硬姿勢、圧力一辺倒でなく、対話やある程度の妥協が必要なのは自明のことだ。そして、そのチャンスは過去に何度もあった。
 ところが、北朝鮮問題を改憲や愛国心扇動に政治利用したい安倍晋三首相と「北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会」(「救う会」)は、圧力を強めれば北朝鮮の体制はすぐに崩壊して被害者が帰ってくるとのデタラメを強弁し続け、対話の可能性を探る動きを徹底的に封殺してきた
 その結果、日本中が「圧力こそが唯一の道である」との空気で染められ、逆に、対話や妥協を主張することがタブーになってしまったのだ。
 
 それは、拉致被害者当人やその家族にとっても同様で、疑問を率直に口にした薫氏の兄・透氏は「家族会」を追放された。また、横田めぐみさんの両親、横田滋・早紀江夫妻は、2002年の段階で北朝鮮に行く計画が進んでいたが、「救う会」の圧力で断念せざるを得なくなり、その後もずっと“家族会の顔”として「北への圧力を強めろ」と叫び続けることを強いられた。
 この圧力強硬路線については、最近になって、早紀江さん自身が「(日本政府を)信じてよかったのか」と後悔の念を口にしたことが伝えられたが、薫氏も同じような圧力を受けていたことは容易に推測できる。
 
 いや、帰国を果たした被害者である薫氏へのプレッシャーはもっと強かったはずだ。北朝鮮への経済支援に対して好意的な見方をすれば「お前らは助けられた身でそんなことを言うのか」「残された被害者のことを考えろ」などというバッシングを受けるのは目に見えていた。それどころか「北朝鮮のスパイ」とレッテルを貼られ、血祭りにあげられてしまう可能性もあった。
 そんな蓮池薫氏が今回、勇気をふりしぼって口を開いたのは、前述したように、南北首脳会談が開かれ、米朝首脳会談が行われるこのタイミングが拉致問題解決の最大にして最後のチャンスと考えたからだろう。
 
 ところが、マスコミはあいかわらず「北朝鮮に金を払うなんてとんでもない」「制裁を解除したら思う壺だ」などとがなりたて、安倍政権も一向に前向きな姿勢を見せない。このまま、政権と世論が一体となって「北朝鮮に妥協するな」という声に覆われてしまったら、自分が帰国した直後のように、千載一遇のチャンスを逃してしまうことになりかねない。そうした切迫感が、薫氏を突き動かしたのではないか
 
北朝鮮の「並進路線」の行き詰まりを冷静に分析して戦略を語る蓮池薫氏
 ただし、蓮池薫氏の発言の中身そのものはけっして、感情論ではない。むしろ、そのベースには、北朝鮮の情勢に対する冷静な分析と戦略がある。少し長くなるが、可能な限り忠実に紹介しよう。
 
「私は、北朝鮮という国が拉致を認めたという理由は、2002年、つまり日本との関係改善といわゆる国交正常化とその後にある植民地支配に対する賠償に対する日本の支払いですよね、1兆円とか2兆円とかいう莫大な経済的支援が得られるというのがあったから動いたと思うんですね。
 その状況が、2006年ですか、北朝鮮が核実験をやりミサイルを撃ち、ということのなかでかなりトーンダウンしてしまった。平壌宣言はもう話にも上がらなくなってしまった。こういう状況で北が動くモチベーションというか、動機というのはなくなって、ほぼ見えなくなってしまった。
 ところが現在、米朝間で制裁やら軍事的圧力の結果でもあるかとは思うんですが、北が非核化に動こうとする兆しが見えてきたんです。これはつまり、核ミサイルの問題が解決する可能性が見えてきている。ならば、そこに拉致問題さえ解決すれば、あの2002年の平壌宣言がもう一回復活する可能性が出てきているわけです。だから、非常に大きなチャンスが今到来しつつあるのかなと、大きな期待をしているわけです」
 
「(北朝鮮が経済発展を考えたとき)そこで大きな役割をできるのは日本というのは、しっかり頭に入っていると思うんです。ですから、その時に日本がうまく交渉をしてですね、2002年の状況をもう一回回復し、先に進みましょうと。北にとっては非常に興味があるといいますか、十分に動く動機となる状況がつくられるとは思います」
 
 蓮池薫氏は現在の北朝鮮の姿勢が核開発と経済成長の両方を進めようとした「並進路線」を終わらせ経済一本に転換しようとしているとみており、日本側が2002年の平壌宣言に立ち戻り、植民地支配を謝罪し経済協力を実施する姿勢を見せれば、拉致問題が大きく動くチャンスがあると冷静に分析しているのだ。
 メディアではさまざまな自称“北朝鮮専門家”が登場して、その思惑を解説しているが、この薫氏の発言はなかでも最も冷静で説得力のある分析と言えるだろう。
 
 しかし、問題はこの蓮池薫氏の言葉が、安倍政権やマスコミに届くのか、ということだ。何度でも繰り返すが、安倍首相やその周りの右派勢力は拉致問題解決をめざしているわけでなく、改憲や愛国心強制に拉致問題を政治利用しようとしているにすぎない。そんな安倍首相が自分の支持層である右派勢力の反発を招いてまで、北朝鮮への経済協力に踏み切るとはとても思えないのだ。もちろん、いまも拉致タブーに縛られ、「北朝鮮に騙されるな」と叫び続けているマスコミもしかりだ。
 本サイトは、この問題について、安倍政権の拉致問題政治利用やマスコミの圧力扇動を批判してきた薫氏の兄である蓮池透氏に単独インタビューを行った。
その内容を近く配信する予定なので、こちらもあわせて読んでいただきたい。(編集部)