水道法改正案が27日、衆院厚労委で審議入りしました。それは「上下水道施設は自治体が所有し、運営権を民間に包括的に委託する方式にする」というもので、成立すれば浄水場の維持管理から、水質検査、料金徴収まで民間に任せるという、事実上の民営化です。
民営化というと何か経済的合理性が図られるかのようにイメージする向きもありますが、海外の事例を見ると実態はその正反対で恐ろしい結果となっています(日刊ゲンダイ)。
97年に水道事業を民営化したフィリピンのマニラ市では、米ベクテル社などが参入すると水道料金は4~5倍に跳ね上がり、メーター設置料を払えない低所得者は水道の使用を禁じられました。
99年にボリビアのコチャバンバ市の水道事業を買収したベクテル社は、ダム建設費調達を理由に料金を2倍以上も値上げし、雨水の利用にまで料金の支払いを求めました。
仏パリでも、自公が目指す官民連携方式を採用した結果、14年間で水道料金は倍増したため、2010年に再度公営化しました。
米アトランタ市でも民営化後、相次いだ排水管損傷や泥水噴出に対処できなくなったので、2003年に再公営化に踏み切っています。
こうした国民の命に直結する水道事業などの分野は安易に民営化すべきではなく、特に米国などの利潤追求第一のハゲタカ外資系に売り渡すことは厳禁ですが、日刊ゲンダイの記事中に、麻生副総理が2013年に米シンクタンク・CSISの講演で、「日本の水道はすべて民営化する」と国際公約したとあるのは、その惧れを感じさせるものです。
郵政民営化の際には、実務を任された竹中平蔵氏は民営化の効能を縷々述べ立てましたが、その裏で郵政公社株の取得を目指す米国代表(ゼーリック氏)と18回以上もの「密談」を行っていました。本当の狙いはそこにあったわけです。幸いなことにその後民主党政権に代わったため、鳩山邦夫総務相(当時)によってそれは阻止されました。
日刊ゲンダイの記事を紹介します。
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国民の“命の源”を売り飛ばすのか 水道民営化法案の危うさ
日刊ゲンダイ 2018年6月29日
よほど「カジノ延長」と呼ばれたくないのか。安倍政権がまたトンデモ法案を出してきた。水道法改正案がきのう(27日)、衆院厚労委で審議入りした。大阪北部地震では断水や漏水があちこちで発生。「水道管の老朽化対策の緊急性が高まった」とする公明主導で、与党は今国会での成立に躍起だが、真の狙いはズバリ、水道事業を民営化し、日本が誇る水道技術を外資に売り渡すことだ。
実際、麻生副総理は2013年4月、米シンクタンク・CSISの講演で、「日本の水道はすべて民営化する」と国際公約した。民営化によって経済合理性を優先させれば、いずれ料金は暴騰し、貧乏人は水さえ飲めなくなる恐れがある。
「法案では、上下水道施設は自治体が所有し、運営権を民間に包括的に委託するコンセッション(官民連携)方式を採用すると定めています。浄水場の維持管理から、水質検査、料金徴収まで民間に任せる事実上の民営化です」(野党議員)
政府は民営化で限られた予算を効率的に活用できると期待するが、その見通しの甘さは、海外の事例が教えてくれる。
フィリピンのマニラ市は97年に水道事業を民営化。米ベクテル社などが参入すると、料金は4~5倍に跳ね上がり、メーター設置料を払えない低所得者は水道の使用を禁じられた。ベクテル社は99年にもボリビア第3の都市コチャバンバ市の水道事業を買収し、ダム建設費調達を理由に料金を2倍以上も値上げ。雨水の利用にまで料金の支払いを求め、耐えかねた住民たちは大規模デモを起こし、200人近い死傷者を出す紛争に発展した。
先進国では水質やサービスの低下が多発している。米アトランタ市は排水管損傷や泥水噴出が相次いでも、行き過ぎたコストカットで復旧できる技術者が不足。03年に再公営化に踏み切った。仏パリも日本と同じコンセッション方式を採用した結果、14年間で水道料金は倍増。やはり10年に再公営化している。
15年までに再公営化を決断した自治体は世界で180に上る。民営化の旗振り役であるパソナの竹中平蔵会長が5年前に産業競争力会議に提出した資料によると、日本の上下水道の資産価値は126・1兆円。地震被害がチャンスとばかりに、あえて周回遅れで国民の“命の水”を売り渡すなんて許されない。