2019年5月8日水曜日

08- 消費税を凍結・減税すべし! (8) 消費増税による不況を絶対回避せよ!

 藤井聡・京大教授によるシリーズ「消費税を凍結・減税すべし!」の8回目です。
 今回は、多くの国民や政治家たち、たかだか数%程度消費税が増えたところで問題なかろうと思っているとして、代表例として公明党山口那津男代表の発言を取り上げています。
 それはまさに絵にかいたような楽観論で、3%→5%、5%→8%と増税されたときの影響に対する認識を全く欠いているだけでなく、そもそも社会的弱者へ視線を持っているのかさえ疑われます。かつては生活の党、平和の党を強調していたにもかかわらず、特定秘密保護法以下、戦争法、共謀罪法などの全ての悪法に賛成してきた背景が窺い知れます。
 消費税ありきの発想も大衆政党らしからぬもので、消費税は廃止乃至減税をして、法人税と所得税の拡大をこそ目指すべきとするこのシリーズを最初から読み直すべきでしょう。
 太字強調個所は原文に拠っています。
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<8>消費増税による「令和不況」を絶対回避せよ!

日刊ゲンダイ 2019/05/07(更新)
 ついに「令和」の世が明けた。
 消費税導入から始まった平成は、平成9年(1997年)に5%に増税したことでデフレに突入。それ以後、20年以上も「失われ」続けた日本となってしまった。そのデフレがまったく脱却できないままに、平成26年(2014年)には8%にまで増税されてしまい、ますますデフレ脱却ができないままに、「令和」の時代となった。

 このまま、令和元年に消費税が10%にまで増税されてしまえば、「令和不況」が導かれ、「平成日本」よりも深刻な経済不況に国民があえぐことになることは避けられない。不況下での消費増税は、強烈に経済を破壊するディープインパクトをもたすからだ。
 にもかかわらず、多くの国民や政治家たちは、たかだか数%程度、消費税が増えたところで、さして問題なかろう、と思っている。たとえば公明党の山口那津男代表は、景気が厳しくなっている状況を踏まえて消費増税の可能性を示唆した萩生田光一自民党幹事長代行に対して、短期観測というね、アンケート、主観的な調査だけをもってうんぬんするというのは、到底論外だと思っておりますと発言している。
 
■公明党山口代表の楽観論
 しかし実際には、消費増税をするかどうかは、その時点での景気によって判断しなければ、とんでもない経済被害をもたらすことになる。こうした山口代表に典型的に見られるような「楽観論」こそが、日本経済を破壊する恐ろしいものなのだ。
 そもそも4%や5%ずつ毎年モノの値段が上がり、しかも、それを上回る速度で所得も上昇していく、1970年代や80年代の景気の良い「インフレ日本」ならば、確かに、消費増税によって数%モノの値段が強制的につり上げられても、多くの国民はあまり気にはしなかっただろう。継続的にモノの値段が上がっていくことに慣れているし、それ以上に給料が上がっていくからだ。実際、平成元年の消費税導入時には、さして大きな混乱は生じなかった。
 しかし、平成9年以降、日本はデフレに陥っており、モノの値段は上がっていくどころか、むしろ下落し続けている。しかも、そのモノの値段よりも「所得」の方が、より激しく下落し、国民は貧困化し続けている

 こんな状況で、消費増税によって強制的に2%や3%、モノの値段がつり上げられれば、その破壊的影響は計り知れない。実際、バブル経済の崩壊によって深く傷付いていた平成9年の消費増税はインフレの日本を「デフレ」にたたき落としたし、平成26年の8%増税は、デフレ脱却しつつあった日本を再び、デフレ状況にたたき落としてしまった。拙著10%消費税が日本経済を破壊するでも詳しく論じたように消費は9%も下落し、所得も5%以上縮小した
 ましてや今、日本は、平成26年の8%増税の影響を引きずったまま、世界経済の先行きが不透明になり、景気が急激に悪化している。先に紹介した萩生田発言は、こうした状況下での消費増税が恐ろしい帰結を導くとの認識に基づくものであり、いたって正当な判断だ。

■ネットマンガ「私立Z学園の憂鬱」が話題に
 ただし、こうした萩生田氏の危機感を共有する国民は、この令和の御代で急速に拡大しつつある。たとえばネット上では今、私立Z学園の憂鬱なるマンガが話題を集めている。
 これは、「普通」の女子高生・高橋あさみが消費増税問題の深刻さに気付き、増税凍結に向けた国民運動を展開すべく、大手新聞社や経済学者達の軽薄な消費増税論の「デマ」をあばき、徹底論破し続けていく、という痛快なストーリーだ。一つ一つの主張は、的確な資料に裏付けられており、さまざまな比喩をちりばめたマンガ表現の圧倒的なわかりやすさが今、多くの国民の支持を受けつつあるようだ。

「令和」へと御代替わりした今、日本は確実に変わり始めている。不況を導き、財政を根本的に悪化させる愚かしい消費増税を凍結し、国民の力で自ら明るい時代を築き上げる――この新しい御代がそうした時代にならんことを、心から祈念したい。
 
 藤井聡 京都大学大学院工学部研究科教授
1968年、奈良県生まれ。ニューディール政策等についての安倍晋三政権内閣官房参与に2012年着任、10%消費税増税の深刻な問題を指摘しつつ2018年12月28日に辞職。著書に経済レジリエンス宣言(編著・日本評論社)国民所得を80万円増やす経済政策──アベノミクスに対する5つの提案 』「10%消費税」が日本経済を破壊する──今こそ真の「税と社会保障の一体改革」を(いずれも晶文社)など多数。