2019年5月17日金曜日

川崎市の自衛官募集協力 弁護士が特異性指摘

 安保法制(戦争法)によって既に自衛隊は海外で活動しやすくなっていますが、9条改憲は、自衛隊を憲法上に根拠を有する組織として権威づけることで、更に自由に海外派兵=海外での戦闘行為も行えるようにするものです。そうした海外派兵を志向する安倍首相の一連の言動によって、防衛大卒業生の任官拒否が増え、自衛官への応募者が減ったのは当然のことです。
 それを自覚したのかどうかは分かりませんが、安倍首相はこの3月にも、自衛官募集について「6割以上の自治体が協力を拒否している」と不満を表明し、自民党は自衛官適格者のリストを提出するように各自治体に働きかけを強化しました。
 
 自衛官の募集業務に自治体が住民の名簿を提供して協力している問題で、神奈川県弁護士会13日夜開いたシンポジウムパネリストとして参加した武井由起子弁護士は、17年度からの「個人情報保護条例の例外規定を根拠にして川崎市が適格者名簿の提供を始めていることの特異性を指摘しました
 
 武井弁護士は「個人情報保護法は情報の公開はあくまで限定的とする。自衛隊法施行令は自治体に『必要な資料の提出を求めることができる』とあるが、この『資料』を個人情報と読み解き、網羅的に提供するのは無理がある、「警察官や消防士の募集には名簿の提供はしておらず、公平性の観点からも疑問だ「実力組織である自衛隊は暴走しないよう法律で縛っておくのが法治国家。安倍首相特別扱いを求めるのは法秩序の観点から許されないと述べました。
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川崎市の自衛官募集 弁護士が特異性指摘
神奈川新聞  2019年05月15日 05:20 
 自衛官の募集業務に自治体が住民の名簿を提供して協力している問題で、神奈川県弁護士会は13日夜、法的な観点から問題を考えるシンポジウムを横浜市内で開いた。パネリストとして参加した武井由起子弁護士=第一東京弁護士会=は、市個人情報保護条例の例外規定を提供の根拠にしている川崎市の特異性を指摘。「プライバシー侵害につながる問題に市が関わっていることに抵抗感を持つ市民がいる。結果的に自衛隊の不支持にもつながりかねない」と市の対応に疑問を呈した。
 
 市が名簿の提供を始めたのは2017年度から。市内の日本人で18歳と28歳の氏名と住所、性別、生年月日を住民基本台帳から抽出し、リスト化している。それまでは台帳の閲覧という形での協力だったが、募集業務を効率化したい自衛隊の要請に応じたという。
 「プライバシー権や自分の情報を管理する権利の侵害という、憲法にかかわる問題だ」と位置づける武井弁護士が着目するのは、市が名簿提供の根拠とする同条例の例外規定だ。「正当な行政執行に関連があるとき」には個人情報の目的外利用ができるとしているが、その根拠の薄弱さを問題視。市は自衛隊法と同法施行令に基づく「正当な行政執行」と説明するが、武井弁護士は「個人情報保護法は情報の公開はあくまで限定的とする。自衛隊法施行令は自治体に『必要な資料の提出を求めることができる』とあるが、この『資料』を個人情報と読み解き、網羅的に提供するのは無理がある」との見解を示した。
 
 県内33市町村で名簿を提供しているのは3市1町と少数派で、「住民基本台帳法では閲覧までしか認められておらず、名簿の提供に応じていない自治体は、条例に照らしても『法令に定めがない』と判断しており明快。警察官や消防士の募集には名簿の提供はしておらず、公平性の観点からも疑問だ」とも語った。
 
 募集への協力を巡っては今年3月、安倍晋三首相が「6割以上の自治体が協力を拒否している」と不満を表明した。これに対し、武井弁護士は「実力組織である自衛隊は暴走しないよう法律で縛っておくのが法治国家。安倍首相は特別扱いを求めており、法秩序の観点から許されない」。
 
 昨年、武井弁護士らが名簿提供をどう考えるか街頭で市民に尋ねるシール投票を実施したところ、「知らなかった」「気持ちが悪い」という声が聞かれたといい、こう強調した。「法令上の根拠が怪しいことを無理やり続ければ、結果的に自衛隊の不支持につながり、逆効果。消防士の倍率が高いように自衛隊の募集はやりがいや処遇を改善すれば済む話だ。根本的には、自衛隊が国民の負託に応える仕事をしているかが問われている」