2019年5月23日木曜日

拉致問題大集会を「公務」を理由に中座して自宅に戻った首相

 19日に拉致被害者家族とその支援組織「救う会などが毎年春と秋に開いている「国民大集会」が開かれ、安倍首相も挨拶に立ちました。
 首相は「私自身が金正恩委員長と直接向き合わなければならないと決意」したことを誇示し、「条件を付けずに金正恩委員長と会って、率直に虚心坦懐に話をしたい」と殊勝げに語りましたが、それが実現する可能性については、「残念ながら日朝首脳会談は、目処も立っていない」と述べました。これまで世界の先頭に立って北朝鮮に対する制裁の強化を煽ってきたのですから、急に手の平を返したからといって簡単に実現しないのは当然です。
 
 そして挨拶が終わると「公務」を理由にそそくさと退場したのですが、「公務」というのは嘘偽りで、そのまま富ヶ谷の私邸に直行し来客もないまま自宅で過ごしたのでした。
 実は昨年も同じで、422集会に出席した安倍首相は、やはり「政務」を理由に挨拶を終えると退席しましたが、会場をあとにすると私邸に帰り、来客もなく朝まで過ごしています。
 
 拉致被害者家族たちの、一日千秋の思いで被害者の帰還を待ち侘びている気持ちを思えば、普通の心情の持ち主ならそんな酷薄な行動は取れません。それを平然と繰り返せるのは“やってるふりの安倍”ならではのことです。
 6年半、全く拉致問題を放置しておきながら、年に1回出席する「国民大集会」でよくもそんなことが出来るものです。
 
 ところで通常の政権であれば水面下での北朝鮮との交渉はそれなりに行われるものなのですが、安倍政権下の6年余ではそれも一切なかったということです。LITERAの記事に登場する田中均・元外務審議官が、小泉氏が訪朝した際の下打合せを行った立役者でしたが、その後田中氏が安倍氏について批判めいたことを口にしたことに激怒して田中氏を北朝鮮ルートから外して以降、水面下の交渉は完全に途絶しているということです。まさに外交の何たるかを知らないもののやることで、拉致被害者を抱える国のトップには最も相応しくない人間と言えます。
 
 LITERAが「パフォーマンスだけの北朝鮮外交」を批判しました。
 
註 安倍首相は、新天皇の即位パレードのルートを「自民党本部前」を通るルートに強引に変更させたということです。安倍首相の「天皇の政治的利用」が止まりません。興味のあるかたは下記からアクセスしてください。
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安倍首相が拉致問題の国民大集会を「公務」理由に中座し、自宅で休養!
パフォーマンスだけの北朝鮮外交に批判
LITERA 2019.05.22.
 最近になって、北朝鮮の金正恩委員長との首脳会談に関して「条件をつけずに向き合わなければならない」と述べ、日本人拉致問題解決という条件を外す意向を示しはじめた安倍首相。「対話のための対話はだめだ」などと公言し、Jアラートを作動させて“北朝鮮パニック”を政治利用してきたが、ついに“蚊帳の外”外交では立ちゆかなくなってしまった結果だろう。
 そんななか、「北朝鮮による拉致被害者家族連絡会」(家族会)とその支援組織「北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会」(救う会)などが毎年春と秋に開いている「国民大集会」が19日に開催され、安倍首相も挨拶に立った
 そこで安倍首相は「トランプ大統領が米朝首脳会談で拉致問題に関する私の考え方を明確に伝えてくれた」とアピール。そして、「私自身が金正恩委員長と直接向き合わなければならないとの決意」という耳タコフレーズをまたも繰り出し、「条件を付けずに金正恩委員長と会って、率直に、虚心坦懐に話をしたい」と宣言した。
 
 さらに、「国民大集会」前におこなわれた拉致被害者御家族との面会の席では、安倍首相はこうも述べた。
「拉致問題は安倍内閣で解決する。拉致被害者の方々と御家族の皆様が抱き合う日が来るその日まで、我々の使命は終わらない。その決意で、今後とも全力で取り組んでまいります」
 まったくよく言うよ、とツッコまざるを得ない。というのも、昨年の総裁選での石破茂元幹事長との討論会では、記者から拉致問題に進展がないことを質問された際、安倍首相は「拉致問題を解決できるのは安倍政権だけだと私が言ったことはございません」などと開き直ったからだ。 被害者家族の前では「拉致問題解決は私の使命」とアピールし、実際には成果がないことを追及されると「言ったことはない」とうそぶく。これを拉致問題の政治利用と言わずして何と言うのだろう。
 実際、今回の「国民大集会」でも、安倍首相は拉致問題解決に本気に向き合っているのか、疑わざるを得ない行動に出た。
 というのも、安倍首相は集会で挨拶を終えると、「公務」を理由にそそくさと退場し、途中退席した。だが、この日の首相動静はこうだ。
〈午後2時から同19分まで、同所内の会議室「シェーンバッハ・サボー」で拉致問題の国民大集会に出席し、あいさつ。同20分、同所発。 
 午後2時36分、私邸着。
 午後10時現在、私邸。来客なし。〉(時事通信)
 つまり、「公務」を理由に集会を途中退席したのに、そのまま東京・富ヶ谷の私邸に直行。来客もなく自宅で過ごしたというのだ。
 
 しかも、じつはこれ、昨年も同じだった。昨年4月22日に同集会に出席した安倍首相は、やはり「政務」を理由に挨拶を終えると退席。だが、この日も会場をあとにすると私邸に帰り、来客もなく朝まで過ごしている
 その上、昨年の集会では、安倍首相が退席する際、参加者から「なんだ、もう帰るのか」「最後まで席にいろよ」とヤジが飛んだ。にもかかわらず、昨年につづき今年も、安倍首相はそそくさと自宅に帰ったのである。
 
田中均元外務審議官は安倍の北朝鮮外交を「ひとり相撲」「外交とは思えない」
 このような態度では、いくら無条件で対話の道を探ると言っても、どこまで真剣なのかと疑問視されても仕方がないだろう。
 もちろん、北朝鮮の脅威を煽りに煽る一方で圧力一辺倒の“勇ましさアピール”に勤しんできた安倍首相が、無条件という日朝首脳会談のハードルを低く再設定したことは評価に値する。しかし、問題は、実際に日朝首脳会談実現に向けた「ルート」を探れているのか、ということだ。
 だが、この点について、安倍首相は集会の挨拶で「残念ながら日朝首脳会談は、目処も立っていないのは事実」とあっさり白状しているのである。
 ようするに、韓国やアメリカ、ロシアといった関係国の首脳たちが会談実現に漕ぎ着けるなか、ただ唯一、金委員長と会う目処もないがために「無条件」と打ち出しただけで、いまだ見通しは立っていないのだ。
 
 これではお得意の“「やってる感」詐欺”でしかないようにも思えるが、実際、安倍首相の路線変更した対北朝鮮外交にも批判が出ている。
 たとえば、外務省アジア大洋州局長時代に小泉純一郎首相による日朝首脳会談を実現した田中均・元外務審議官は、16日に放送された『報道1930』(BS-TBS)で安倍首相の「無条件」という方針転換について、こう指摘した。
「ひとり相撲を取っておられるんじゃないですか。普通、外交というのはね、たとえば米朝首脳会談をやるとなると、中身をどうするかというのは必死に詰めるわけですよ。首相ひとりが外交をやられるわけじゃないので、そもそも前提条件があるとかないとか言うことがおかしい」
 中身も詰めずに前提条件を云々言うことがおかしい──。そして、田中氏は、安倍首相の姿勢をこのように一刀両断した。
「これは国内で、ひとりで呟いておられるってことじゃないでしょうか。とても外交だとは思えない
 「普通であったら、首相が『会いたい』とか首脳会談をやるんだというときには、もうすでに相手との間では合意がついているはずなんですよ。そういうもんですよ、外交って。首相だけがひとりで相撲を取るわけじゃないから」
 「外交のにおいをまったく感じない」
 
拉致被害者の蓮池薫氏は「人気取りだけのものであったら、黙っていない」
 先日、本サイトでもお伝えしたが、安倍首相の「無条件」発言に対し、これまで圧力強化を煽ってきた安倍応援団たちも一斉に“転向”して安倍首相の姿勢を礼賛しているが、肝心要の「ほんとうに交渉は進んでいるのか」「どこまで本気なのか」とは指摘しない。メディアの報道もそうだ。「外交のにおいをまったく感じない」のに、何やら前進しているかのような印象だけがひとり歩きしている。
 だが、「公務」を理由にして集会を抜け出しながら私邸に帰ってしまう態度を見ていると、「無条件」宣言もたんなる政治パフォーマンスなのではないかという疑念をもたれても仕方がない。
 
 実際、「パフォーマンスではなく結果を出してほしい」という声は拉致被害の当事者からもあがっている。蓮池薫氏は『報道1930』の取材に対し、「これがダメなら自分は辞める、というくらいの覚悟でですね、実際の結果を出していただきたい。パフォーマンスじゃなくて」と安倍首相に求め、さらにはこう釘を刺した。
パフォーマンス、人気取りだけのものであったら、あとで糾弾される。我々も黙っていない人が多いと思います
 
 今週末にはトランプ大統領が来日し、拉致被害者家族との面会もおこなわれる予定になっている。しかし、これも他力本願にすぎず、安倍首相が繰り返すトランプ大統領による金委員長への“口添え”も効果はまったく出ていないのが実情だ。それでも、これもまた安倍首相の手柄として大々的に報じられ、参院選を控えた安倍首相のアピールの場になるのは目に見えている。
 何の成果もあげていない安倍外交の実態は、こうして今後も覆い隠されてゆくのだろうか。(編集部)