2019年5月29日水曜日

日本はどうしたのか 正気とは思えないトランプ“狂騒”

 トランプ大統領が来日したこの4日間は、すべてが安倍首相による『接待ゴルフ』の連続で、それをNHKをはじめとするテレビ局が嬉々として報じた4日間でした。
 まさに『狂騒』と呼ぶに相応しいもので、その陰で選挙に勝つためには国益も投げ出すという安倍首相の実態が明らかにされたのに、メディアはそうした指摘を一切しませんでした。「ファッショ政治」の顕れかも知れません。
 日刊ゲンダイが「日本はどうしたのか 正気とは思えないトランプ“狂騒”」とする記事を出しました。
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日本はどうしたのか 正気とは思えないトランプ“狂騒”<上>
日刊ゲンダイ 2019/05/27
 いくら令和初の国賓とはいえ、ここまでやる必要があるのか――と思うほど、トランプ大統領に対する安倍首相の接待は、あまりに異様な光景と言わざるを得なかった。
 
 26日の午前9時すぎ。青のジャケットと白のズボン姿で千葉・茂原市の「茂原カントリー倶楽部」に現れた安倍は直立してトランプを待ち、遅れて到着したヘリからトランプが出てくると、急いで駆け寄って握手。そしてゴルフカートのハンドルを自ら握って運転手を務め、トランプがパットを決めるたびに傍らでパチパチ拍手。そしてトランプが同行を希望したというプロゴルファーの青木功氏をゲストに招き、昼食はトランプの大好物というハンバーガー。まさに、これぞ“接待ゴルフの見本”という姿だった。
 
 その後、2人は都内の両国国技館に直行。土俵近くの升席にイスを設置し、SPや制服警察官ら100人を超える超厳戒態勢の中、トランプは現職大統領として初の大相撲観戦。取組後は、わざわざトランプが土俵に上がるための「特殊階段」まで作り、大統領杯を渡すパフォーマンスの場まで提供したのだから、前代未聞だ。
 
「朝鮮半島の危機」などの著書がある米ジョージ・ワシントン大准教授のマイク・モチヅキ氏は25日付の朝日新聞で〈安倍首相に対しては「トランプ大統領のペット」という批判があります。ノーベル平和賞の推薦文を書いたり、大相撲の表彰式という機会を用意したりと、いくつかはやり過ぎだと思います〉と断じていたが、その通りだろう。法大名誉教授の五十嵐仁氏(政治学)がこう言う。
「来日目的がいまひとつハッキリしないトランプ大統領をなぜ、安倍首相はこれほど持ち上げるのか。どこまでご機嫌を取れば気が済むのか。日本の国民として情けないし、恥ずかしいとしか言いようがない」
 日本は米国従属を超え、もはや主権国家さえも放棄してしまったかのようだ。 
 
実況中継し、はしゃぐテレビ局の亡国 
「トランプ大統領が今、羽田空港に到着しました」「トランプ大統領を見ようと多くの人が詰め掛け、カメラを構えています」「ゴルフ場の外では双眼鏡を手にトランプ大統領の姿を追う住民の方々の姿があります」――。
 唖然ボー然だったのは、トランプを持ち上げる安倍の姿を、生中継を交えて垂れ流していたテレビだ。
 特に酷かったのはNHKだろう。トランプが日本に到着する前から〈間もなく到着〉などとお祭りムードを演出し、26日の大相撲中継でも、安倍とトランプが会場に姿を見せると、取組を控えた土俵の力士ではなく、2人をズームアップ。さらに大相撲の後番組「これでわかった!世界のいま」でも、本来の番組テーマである「国際ニュース」そっちのけで、東京・六本木の高級炉端焼き店に向かう安倍とトランプの様子を延々と生中継していたからバカバカしくなる。
 
 国民を煽り、視聴率さえ稼げればそれでいいのか。元共同通信記者でジャーナリストの浅野健一氏は「これぞ大本営発表の典型」と言い、こう続ける。
「トランプ大統領というのは今、世界でどんな目で見られているのか。対中貿易戦争で世界経済を揺さぶり、イランや中東で火種をつくり、ロシアとの関係も微妙です。そういう問題人物が国賓で来日したからといって手放しで喜ぶべき状況にあるのか。冷静に考えれば分かることでしょう。本来は、淡々と報じればいいだけ。それなのに、政府広報と化して、どこで何を食べたとか、バカ騒ぎしている。ジャーナリズムの視点、意識が全く欠けています」
 安倍政権の思うつぼだ。 
 
安倍首相はなぜ、ここまでトランプに媚びるのか 
 ここまで安倍がトランプに媚を売る理由はハッキリしている。すべて支持率アップ、政権維持、夏に行われる参院選に勝利するためだ。
「外交の安倍」をウリにしている安倍政権は、「安倍―トランプ」の蜜月関係を演出できれば、支持率が上昇し、苦戦必至の参院選も勝利できると踏んでいるという。
 実際、大手メディアは、来日前から「トランプ大統領と渡り合えるのは安倍首相しかいない」などとヨイショ報道に終始している。今ごろ安倍は、計算通りだ、とニンマリしているのではないか。
 
 さらに、トランプの“口封じ”という狙いもあるという。
「日米首脳会談は4、5、6月と3カ月連続で行われます。いくら同盟国とはいえ毎月開くのは異例です。恐らく、安倍首相はトランプ大統領に『7月の参院選が終わるまではむちゃなことは言わないで下さい』と懇願しているのだと思う。安倍首相が懸念しているのは、“日米貿易交渉”でしょう。参院選前に“自動車”と“農業”で押し込まれたら、自民党は惨敗してしまう。相手があのトランプ大統領だけに、1度お願いしただけでは不安だから、頻繁に会って、ご機嫌を取るしかないと考えているのだと思います」(政治評論家・本澤二郎氏)
 
 しかし、トランプのご機嫌を取るためのコストはハンパじゃない。4月の安倍訪米時、トランプが「日本は大量の防衛装備品を買うことに合意した」と、“密約”をバクロしている。1機116億円の最新鋭ステルス戦闘機「F35」の100機取得だけでも1兆円超だ。 
 
 
日本はどうしたのか 正気とは思えないトランプ“狂騒”<下>
日刊ゲンダイ 2019/05/27  
阿修羅文字起こしより転載
天皇の政治利用のエスカレートとそれに慣らされる怖さ 
 新天皇の即位後、最初の国賓として招待されたことを、トランプは大喜びしているという。
 それにしても、安倍政権による皇室の政治利用は、度を越している。毎日新聞(5月23日付)によると、安倍は「どうすればトランプ氏の機嫌が良くなるか、さまざまな趣向を凝らしたい」「天皇陛下との会見や宮中行事がある国賓ならば、トランプ氏は喜ぶだろう」と語っていたというのだ。
 要するに「トランプ接待」のために天皇を政治利用したということだ。天皇は即位後、まだ1カ月もたっていない。行事も続き、多忙なはずだ。ムリをかけているのは間違いないだろう。それでなくても安倍政権は、天皇に国政を報告した「内奏」の写真を即日公表するなど、露骨なまでに皇室を政治利用している。
 
 それでいて、皇室には関心がないというのだから、信じられない。「『平成の天皇』論」を書いた毎日新聞の論説委員・伊藤智永氏が、「月刊日本6月号」のインタビューでこう答えている。
安倍政権の対応について皇室関係者が杉田官房副長官に抗議した際、杉田氏が思わず「いや、退位に反対とかいうことはありません。総理は本質的に天皇や皇室に関心がないんですから」と漏らしたで、あきれて絶句したそうです>
 関心がないのに、都合よく政治利用するとは、どういうつもりなのか。
 
「戦前の反省もあって、天皇の政治利用だけは絶対にやらないというのは、政治家が守るべき最低限のルールだったはずです。権力者が天皇を政治利用すると、この国はロクなことにならない。
 心配なのは、安倍政権によって天皇の政治利用が当たり前のように行われ、国民がそれをおかしいと思わなくなりはじめていることです」(立正大名誉教授・金子勝氏=憲法)
 好き勝手に皇室を政治利用している安倍政権に対して、どうして右翼は怒らないのか不思議だ。 
 
拉致被害者との面会の無意味、護衛艦視察の重大な意味 
 トランプは27日の日米首脳会談後、北朝鮮による日本人拉致被害者家族と面会する予定だ。面会する理由は「拉致問題の解決に向けた協力を確認する」となっているが、安倍自身が拉致被害者の家族に対して「日朝首脳会談については、まだメドが立っていないのは事実」と認める中で、果たしてどれだけの意味があるのか。
 そもそも、米国だって北朝鮮に対する姿勢は一枚岩じゃない。ボルトン大統領補佐官(国家安全保障担当)は25日に都内で会見した際、北の弾道ミサイル発射は「国連安全保障理事会の制裁決議違反」と非難したが、トランプは翌日のツイッターで〈私を困らせていない〉と投稿し、問題視しない考えを強調している。米国が今後の対北政策について、どんな展開を描いているのかは不透明なのだ。安倍にしてみれば、拉致被害者とトランプが面会すること自体が自分の外交「実績」であり、「アピール」になると考えているのだろうが全くナンセンスだ。
 
 対照的に重大な意味を持つとみられるのが、安倍とトランプが28日に予定している、海上自衛隊の護衛艦「かが」の乗艦だろう。トランプはその後、ステルス戦闘機「F35B」を搭載した米強襲揚陸艦「ワスプ」の艦上から米国民に向けて「戦没将兵追悼記念日」の演説を行う予定だが、「かが」も今後、「F35B」の搭載がささやかれている。そのため、「かが」にトランプを乗艦させることで、日本の防衛力をPRするとともに日米軍事同盟の強化や、米国製武器の“爆買い”をほのめかすのではないかとみられているのだ。
今後の日米貿易交渉で、米国に強硬姿勢で臨んでこられれば政権維持が危うくなる。ならば、『代わりに武器を買いますよ』というシグナルを送ろうと考えているのであれば言語道断です」(五十嵐仁氏=前出)
 選挙に勝つためには何でも利用する悪辣政権の考えそうなことだ。