日刊ゲンダイに「永田町の裏を読む」を連載しているジャーナリストの高野孟氏が「日本の首相がいまイランを訪れてどうするつもりなのか」という記事を出しました。
安倍首相はトランプ氏とのゴルフの最中に「日本はイランとよい関係を保っているので、近くイランを訪れて米国との間の橋渡しをしたい」と申し出て、賛同を取り付けたということです。
しかし米国とイランの対立は一方的に米国に非があるわけなので、一体イランに向かって何を言うつもりなのでしょうか。
高野孟氏は、トランプ氏がイラン経済封鎖の挙に出た背景について分かりやすく解説しています。
安倍首相はそうした基礎知識の上で喋っているのでしょうか。
そもそもイランのザリフ外相が16日に来日し、首相首相に米国との衝突回避に向けた仲介を頼んだ時に、首相は単にトランプの代弁者のような発言を繰り返し、同外相を大いに失望させました。
「半歩前へ」氏は17日のブログに次のように書いています。
米国寄りの発言に終始した安倍晋三に、イラン外相は強い不満を示した。
中東戦争を仕掛ける構えを見せるトランプに対し、戦争を避けたいイランは安倍に衝突回避に向けた仲介役を期待した。日本とイランは伝統的に深い友好関係にあるからだ。
ところが、安倍はトランプの代弁者のような発言を繰り返した。
こう言う時こそ「日本の出番」ではないのか
安倍は国益を損ねることはあっても、高めることが出来ない無能者だ。
これではイラン外相がトランプ訪日に先駆けて、わざわざ日本までやって来た意味がない。
安倍晋三は政治家ではない。ただのバカだ。
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安倍首相が説得すべきはイランではなくトランプ氏の方です。それをトランプ氏の了解を得たからと言って、どの面を下げてイランに行き、何を話そうというのでしょうか。
得意の『やってる振り』をしたいというのは論外で、トランプ氏が正しいという前提で話をしに行くのでは相手に軽蔑されるだけのことです。
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永田町の裏を読む
日本の首相がいまイランを訪れてどうするつもりなのか
高野孟 日刊ゲンダイ 2019/05/30 06:00
安倍晋三首相はトランプ米大統領とのゴルフ遊びの最中に「日本はイランとよい関係を保っているので、近くイランを訪れて米国との間の橋渡しをしたい」と申し出て、トランプから「ぜひ行ってもらいたい」と賛同を取り付けたという。しかし、米イラン間の一触即発的な危機が深まる中で日本の首相が出て行って、イランに向かって一体何を言うつもりなのだろうか。
そもそも、この危機をわざとつくり出したのは、他ならぬトランプ政権と、その中東政策を陰で操るイスラエルのネタニヤフ政権である。国連安保常任理事国の5カ国にドイツが加わって15年7月に達成された「イラン核合意」は、それなりの成果を上げてきた。ところがイスラエルはそれに不満で、18年4月にはネタニヤフがイランの秘密核兵器計画「プロジェクト・アマド」の機密文書10万ページを入手したと大々的に発表。それを真に受けたトランプは、すぐに核合意からの一方的な離脱と経済制裁再開に踏み切った。
反発したイランが核合意の義務履行の一部停止を表明すると、イスラエル情報機関はボルトン米大統領安保担当補佐官に「イランが中東地域の米軍を標的に攻撃を準備している」という偽情報を流し、それをまた真に受けたトランプが空母艦隊などの派遣を命令したのである。
これは、イスラエルがこれまでしばしば用いてきた情報操作の常套手段で、9・11事件後には「イラクが大量破壊兵器を隠し持っている」という偽情報でブッシュ政権をたぶらかしてイラク戦争に引きずり込んだ。その時に国務省にあって、この偽情報をパウエル国務長官に吹き込んで国連の大舞台で演説させたのは、ネオコン一派のリーダー格のボルトン国務次官だった。
ネオコン一派は、全世界の独裁者を陰謀・クーデター・戦争などいかなる手段を用いても抹殺しようとする超過激派集団で、それを通じてイスラエルは米国のイスラムへの憎悪をあおり立てているのである。
そういうわけなので、イランをめぐる現下の危機を鎮静するためにまずしなければならないのは、トランプが陰謀好きなネタニヤフや、“戦争屋”とか“悪魔の使い”とか呼ばれているボルトンなどの言いなりになって暴走しないよう歯止めをかけることであって、イランへ行くのはその後でもいいのではないか。
高野孟 ジャーナリスト
1944年生まれ。「インサイダー」編集長、「ザ・ジャーナル」主幹。02年より早稲田大学客員教授。主な著書に「ジャーナリスティックな地図」(池上彰らと共著)、「沖縄に海兵隊は要らない!」、「いま、なぜ東アジア共同体なのか」(孫崎享らと共著」など。メルマガ「高野孟のザ・ジャーナル」を配信中。