先週発表された3月の毎月勤労統計調査では、実質賃金が前年同月比2・5%減と3カ月連続のマイナス、下げ幅では15年6月以来3年9カ月ぶりの大幅減でした。先進国で名目賃金や実質賃金が下がっているのは日本だけです。
引きつづいて内閣府が13日に発表した「3月の景気動向」は「悪化」でした。誰もが納得できる評価です。因みに「悪化」は最低の評価で、その下は「下げ止まり」(悪化の終点)です。
政府が月末に発表する月例経済報告では一貫して「景気は緩やかに回復している」で もはや聞き飽きましたが、「景気動向」はいくつかの指数で機械的(自動的)に決まるので、主観で変えることの出来ないそれなりの「客観性」を持っています。
この先20日には1~3月のGDP速報値が発表されますが、その内容は「マイナス」、良くて「ゼロ成長」と見込まれています。これまで虚偽・捏造で飾られてきた「経済」の化けの皮が次々と剥がされて、実態が明らかにされて行くことになります。
アベノミクスは単に大企業と富裕層を儲けさせただけで、国民は年々貧しくなりました。それでも政府としては、「10月からの消費増税」を叫ぶしかないというのは、一体何ごとなのでしょうか。
しんぶん赤旗とLITERAの記事を紹介します。
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主張 景気動向の「悪化」 消費税増税の根拠は崩壊した
しんぶん赤旗 2019年5月14日
内閣府が発表した3月の景気動向指数で、景気の基調判断が2月までの「下方への局面変化」から「悪化」に転じました。消費の不振や輸出の落ち込みで、安倍晋三政権も、景気悪化を認めざるを得なくなったものです。来週発表される1~3月期の国内総生産(GDP)も実質ゼロ成長が見込まれます。月末に発表される政府の月例経済報告でも、これまでの「景気は緩やかに回復している」との判断を変えるのではないかとの見方が強まっています。
この経済情勢の中で、10月からの消費税の増税強行など最悪です。直ちに中止を決断すべきです。
6年2カ月ぶりの「悪化」
景気動向指数は、企業の生産や雇用などの統計をもとに、内閣府が機械的に算出します。先行き、現状、過去の3種類の指数があります。現状を示す「一致指数」にもとづいた景気の基調判断は、「改善」「足踏み」「局面変化」「悪化」「下げ止まり」の5段階で表現します。1月と2月の基調判断は、「下方への局面変化」でした。3月は、「一致指数」が前月に比べ0・9ポイント低下、基調判断も2013年1月から6年2カ月ぶりに「悪化」に転じました。
安倍首相は12年末に第2次政権を発足させてから、「戦後最長」の景気拡大が続いていると言い張ってきました。昨年から今年にかけ政府の経済統計の偽装が相次いで明らかになったように、“上げ底景気”の疑いが濃厚です。
実際には安倍政権が強行した14年4月の消費税の8%への引き上げ以来の消費の低迷が続いているうえに、“頼みの綱”だった輸出や企業の設備投資も、中国経済の悪化や、米中の貿易摩擦の影響で、落ち込みがあらわになっています。内閣府が景気の基調判断を、「悪化」に変えたのは当然です。
先週発表された3月の毎月勤労統計調査でも、物価変動の影響を除いた実質賃金が前年同月比2・5%減と3カ月連続のマイナス、下げ幅では15年6月以来3年9カ月ぶりの大幅減となりました。
安倍政権が10月から強行を狙う消費税の10%への引き上げが、消費をさらに落ち込ませ、経済に打撃になるのは目に見えています。もともと消費税は、低所得者ほど負担が重い逆進性のある税制です。複数税率の導入やキャッシュレス決済時の「ポイント還元」、「プレミアム付き」商品券の発行など、どんなに「十二分の対策」をとっても、増税の痛みは消えません。制度を複雑にするだけで、消費者にも中小商店にも、負担の軽減にならないことは明白です。
景気の悪化が鮮明になる中での消費税の増税は、それこそ暮らしも経済も破綻に導くものです。消費税増税の中止は、まさに待ったなしです。
参院選で厳しい審判を
景気の落ち込みは、首相側近の萩生田光一自民党幹事長代行でさえ、日本銀行の6月の全国企業短期経済観測調査(短観、7月1日発表予定)の結果次第では、延期もありうると言い出した(4月18日のインターネット番組)ように、政権内も動揺させています。増税は今からでも中止に追い込めます。
自らの失政に全く反省がなく、増税に固執する安倍政権に、政治は任せられません。7月の参院選で厳しい審判を下し、安倍政権と増税計画を葬り去りましょう。
実質賃金マイナス2・5%、景気動向指数「悪化」へ!
アベノミクス破綻、安倍政権は富裕層を儲けさせただけだった
LITERA 2019.05.14 10:30.
ついに、アベノミクスの化けの皮が剥がれてしまった。昨日、内閣府が3月分の景気動向指数の基調判断を発表したが、景気の現状を示す一致指数が前月比で0.9ポイント低い99.6となり、基調判断を1、2月の「下方への局面変化」から景気後退の可能性が高いことを示す「悪化」に引き下げたのだ。「悪化」は、5段階ある判断のうちもっとも悪いもので、じつに6年2カ月ぶりとなる。
一方、10日に厚労省が公表した3月の「毎月勤労統計」調査の速報でも、物価の影響を考慮した実質賃金は前年同月比でなんとマイナス2・5%と大幅に下落した。しかも、3カ月連続の減少だ。
これは統計不正問題であきらかになったことだが、これまでの実質賃金の賃金伸び率はまやかしだった。
中江元哉首相秘書官(当時)の圧力によって、2018年1月から、「毎月勤労統計」の調査手法を変更。それにともない産業構造や労働者数などの変化を統計に反映させるための「ベンチマーク更新」でさかのぼり補正をおこなわなかったり、常用雇用者から日雇い労働者を除いたりと、あの手この手で賃金伸び率を引き上げていたのだ。
しかし、統計不正の発覚で、今年1月からは数字を上ぶれさせていた不正調査の数値補正やベンチマーク更新がおこなわれなくなったため、「毎月勤労統計」の1月および2月確報値の名目賃金や実質賃金も前年同月比で一転、マイナスになった。
だが、3月の実質賃金マイナス2・5%という速報値は、1月のマイナス0・7%、2月のマイナス1・0%(ともに確報値)を大幅に上回るもの。これはどう弁解しても、国民生活が悪化しているという証明だろう。
しかも、恐ろしいのはこの先だ。アメリカが中国に対する追加関税引き上げに踏み切ったが、米中貿易摩擦の激化と中国経済の減速は今後さらに深刻さを増していくだろう。今回の、3月分景気動向指数の「悪化」とする判断でも「中国経済の減速」が要因として挙げられたが、日本経済に及ぼす影響はこれから本格化するはずだ。
にもかかわらず、安倍首相は10月から消費税を増税するというのだから、正気の沙汰ではない。
だいたい、これまで安倍首相が「アベノミクスで経済が上向き」などと言っていられたのは、アベノミクスの成果などではなく、たんに世界経済の好調に救われてきただけだ。
たとえば、安倍政権の前内閣参与で消費税の10%への引き上げに反対してきた藤井聡・京都大学大学院教授の著書『「10%消費税」が日本経済を破壊する』(晶文社)によれば、GDPは2014年の消費増税前から2018年4-6月期までの間に約18兆円(実質値)伸びているが、この間に輸出は約15兆円も増加。ようするに、輸出の増加がなければ〈一年あたり約0・7〜0・8兆円、成長率にして実に年率平均約0・2%しか伸びなかった〉のである。
また、この4年で、輸出に次いで伸びたのは「民間投資」だが、これも輸出が伸びた結果であると考えられるという。藤井氏はこう述べている。
〈つまり、世界経済の好況という「他力」がなければ、日本経済はやはり、消費増税によって「衰退」していたのである〉
〈万一、消費増税によって内需がこれだけ弱々しい状況に至っている中で世界的な経済危機が勃発すれば、衰弱した日本経済は恐るべきダメージを被るであろう〉
頼みの綱の「外需」がトランプ政権の圧力でなくなり、日本経済は完全破綻
その上、2014年の消費増税時は「外需の伸び」という幸運があったが、これは「アメリカ経済の好況」と「安い原油価格」があってのこと。ご存じのとおり、トランプ大統領は先日、安倍首相に日本の農産物関税の撤廃を要求したほか、自動車の追加関税をちらつかせており、原油価格も上昇。つまり、〈2019年増税の外需環境は、2014年増税よりも、より深刻な被害をもたらした1997年増税時のそれに類似している〉のである。
藤井氏は世界各国の経済成長率(1995〜2015年)に目を向け、〈日本の20年間成長率は断トツの最下位〉〈日本の成長率だけが「マイナス」の水準〉であるとし、〈日本はもはや、「経済大国」でないばかりか、「先進国」ですらない〉〈先進国でも発展途上国でもない、世界唯一の「衰退途上国」とでも言わざるを得ない〉と明言。こうした元凶が、バブル崩壊後の1997年に実施した消費税の3%から5%への引き上げによって「デフレ不況」に突入したためだと説明している。その再来のような危機的状況を迎えつつあるのに、そこで消費税を増税すれば、一体どうなるのか。藤井氏は〈確実に破壊的ダメージがもたらされる〉と警告を発するが、もはや増税中止どころではなく減税すべき局面にあると言っていいだろう。
本サイトでお伝えしてきたように、今月20日に発表される四半期別のGDP速報値でもマイナスになると見られている。その結果を受けて、参院選を睨んで安倍首相が増税見送りに踏み切るか、その動向に注目が集まっているが、増税見送りなど当然のことであって、むしろ問題は、あきらかな「アベノミクスの失敗」のほうだ。
安倍首相はつい先日も民主党政権時代を「悪夢」と呼んだが、アベノミクスがほんとうに誇れる結果を出しているならば、そんな昔の話をいつまでも持ち出すわけがない。実際、民主党政権時代の実質賃金の平均賃上げ率が2・59%であるのに対して、第二次安倍政権での平均賃上げ率はわずか1・1%にすぎない。
また、暮らしぶりが良くなっているのかどうか、現に5月11・12日におこなったJNN世論調査では景気回復について「実感がある」と答えた人はたったの9%で、「実感がない」と答えた人は87%にものぼった。ようするに、「悪夢」と呼ぶべきは、景気は回復などしておらず、むしろ「悪化」しているのに「緩やかに回復している」などと現実を無視して喧伝する安倍政権のほうなのだ。
大企業や富裕層を優遇する一方でここまで庶民の生活を悪化させたその責任をしっかり取らせなければ、ほんとうの「悪夢」が、これからはじまるだろう。(編集部)