2019年5月20日月曜日

首相の「9月訪朝」が急浮上 拉致問題

 安倍首相は56)、「条件をつけずに北朝鮮の金正恩委員長と向き合わなければならない」などと無条件で日朝会談に臨む考えを示し世間を驚かせました。本来はそうあるべきなのですが、「拉致問題の解決に資する会談としなければならない」などと、それを頑なに否定し続けて来たのですから驚きます
 一説にトランプ大統領からそういわれたからと言われます。そうでないとこれまでの流れと全く脈絡のない方針転換は理解できません。
 
 当初は「7月7日会談」という、選挙に利用しようとする意図が見え見えの日程が流されましたが、19日に開かれた拉致被害者の家族ら集会で安倍首相は「残念ながら日朝首脳会談めども立っていない」と述べました。長年放置してきた問題を、急に日本の都合で進めようというのは土台無理な話です。
 
 官邸周辺から「9月訪朝」「複数帰国」という情報が流れ始めているということです。これまでの長期間の不作為に比べれば2ヶ月の延期は小さなことかも知れませんが、政府は単に希望的観測を述べるのではなくその実現のために懸命に努力すべきです。もともと日本が最優先で取り組むべき課題なのですから。
 首相は19日に拉致被害家族らと面会した際に、「大統領は自分も力になりたいという気持ちを強く持っている」と強調したそうです。それ自体は悪いことではないにしても、本当に自分で解決しようとする気があるのかを疑わせます
 先に国会で、「拉致問題を解決すると言った覚えはない」と述べたのはまだ記憶に新しいところです。「外交の安倍」は所詮フェイクであるにしても、「拉致問題の安倍」までがフェイクであっては、安倍氏の存在そのものがフェイクということになってしまうことを自覚すべきです。
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日朝会談巡り急浮上「9月訪朝」「複数帰国」眉唾シナリオ
日刊ゲンダイ 2019/05/18 15:00
 安倍首相が唐突に打ち出した「日朝首脳会談の無条件実施」を巡る波紋は大きくなる一方だ。17日の衆院拉致問題特別委員会では菅官房長官が「対話のための対話であってはならない。政府として明快だ」と答弁。拉致問題や核開発などを巡り、一定の成果を目指す方針に変わりはないと主張した。折しも官邸周辺からは「9月訪朝」「複数帰国」という情報が流れ始めているという。
 
「日朝首脳会談を巡っては、GW前に7月7日に実施という日程が永田町で流れていました。北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長とのサプライズ会談で支持率を上げ、一気にダブル選になだれ込むシナリオです。2度目の小泉訪朝以来15年ぶり、安倍―金正恩としては初めてとなる日朝会談は両トップの顔合わせ。秋口にも2回目の会談を実施し、拉致問題について協議するという筋書きでした。それがここにきて、官邸周辺から〈安倍首相が9月に訪朝し、2~3人の拉致被害者が帰国する〉という情報が流れ始めています」(官邸事情通)
 
 日本政府が認定している拉致被害者は、2002年に帰国した5人を含む17人。象徴的存在の横田めぐみさん(当時13)をはじめ、久米裕さん(同52)、松本京子さん(同29)、田中実さん(同28)、田口八重子さん(同22)、市川修一さん(同23)、増元るみ子さん(同24)、曽我ミヨシさん(同46)、石岡亨さん(同22)、松木薫さん(同26)、原敕晁さん(同43)、有本恵子さん(同23)がいまだ故郷の土を踏めずにいる。警察庁が北朝鮮による拉致の可能性を排除できないとする「特定失踪者」は883人にのぼる。
 
 拉致問題に詳しい国際ジャーナリストの太刀川正樹氏は言う。
「これまで安倍首相は、〈対話のための対話では意味がない〉〈最大限の圧力をかけ続ける〉などと声高に訴え、対北強硬路線の急先鋒に立ってきた。百八十度の方針転換で対話の機運が醸成されるのであれば、それに越したことはありませんが、コトがそう簡単に運ぶでしょうか。はなはだ疑問です。拉致被害者についても、帰国を実現できるのか。14年のストックホルム合意を交わす前に、田中実さんと特定失踪者の金田龍光さん(同26)が妻子とともに平壌で暮らしているとの情報が政府に伝わっていたと報じられている。松本京子さんについても類似する情報があります」
 
■「国民大集会」でどう説明するのか
 一方、北朝鮮は「拉致問題は解決済み」とするスタンスを崩していない。
 国連人権理事会の作業部会が計262項目の勧告を採択したが、北朝鮮の韓大成駐ジュネーブ国際機関代表部大使は「拉致問題に関する勧告を拒否する」と演説をブッて反発した。
 拉致被害者の「家族会」と「救う会」などによる恒例の「国民大集会」が19日に開かれ、安倍首相も出席予定だ。安倍首相は方針の大転換をどう説明するのか。日朝会談実施の見通しをキッチリ示せるのか。昨年は参加者から「もう帰るのか!」「もっといろよ!」という罵声を浴びせられていたが、今年はそれ以上の修羅場となる可能性がある。
 
 
首相「日朝首脳会談はめども立っていない」実現目指す考え強調
NHK NEWS WEB 2019年5月19日17時37分
安倍総理大臣は拉致被害者の家族らが開いた集会で「残念ながら日朝首脳会談は、めども立っていないのは事実だ」と述べたうえで、問題の解決に向けて、首脳会談の実現を目指す考えを強調しました。
 
この集会は、拉致被害者の家族会などが、毎年、春と秋に東京都内で開いているもので、安倍総理大臣と拉致問題担当大臣を兼務する菅官房長官が出席しました。
この中で、安倍総理大臣は「拉致問題は、今日まで解決できなかった問題であり、そう簡単なことではない。残念ながら日朝首脳会談は、めども立っていないのは事実だ」と述べました。
そのうえで「解決に向けてわが国自身が主体的に取り組まなければならず、私自身がキム・ジョンウン(金正恩)朝鮮労働党委員長と直接向き合わなければならないとの決意だ。条件を付けずにキム委員長と会って直接に、率直に、虚心坦懐に話をしたい」と述べ、日朝首脳会談の実現を目指す考えを強調しました。
 
集会に先立って安倍総理大臣は、横田めぐみさんの母親の早紀江さんらと面会し、今月25日から日本を訪れるトランプ大統領が、おととしに続いて再び家族らと面会することについて触れ「大統領は自分も力になりたいという気持ちを強く持っている」と述べました。