経済の実態からは大いに乖離しているとはいえ、1~3月期のGDPはプラスになった以上、安倍政権は消費税増税の延期を言い出しにくくなりました。言いだせばアベノミクスの破綻を認めることにもなります。
しかしいまの経済状況下で税率を10%に上げるのは自殺行為です。
かつて福島瑞穂議員の質問に激高して「もしも森友学園問題に関与していれば議員を辞職する」と断言した安倍首相を、関係文書を全て改竄・隠蔽して庇ったのは財務省で、尊い犠牲者まで出しました。
財務省はその恩義を自覚して増税すべきであると考えているし、いざとなれば全てを明らかにすると脅すことも出来る立場です。その思いを踏みにじって消費増税を再々延期・凍結をするのには安倍首相も多少の躊躇はあることでしょう。
植草一秀氏によれば、永田町には「政府は消費税増税を断行する。衆参ダブル選は行わない」という見立てがあるということです。
そして「消費税増税を強行し、その後に衆院解散総選挙を行えば安倍内閣は完全崩壊する」、いずれにしても「消費税増税強行に突き進むのは安倍内閣の終焉をもたらす」と述べています。是非そうなって欲しいものです。
田中龍作ジャーナルのブログ「 ~ 消費税減税を言えない“民主党の悪夢”」を併せて紹介します。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
消費税増税強行なら安倍内閣与党は参院選惨敗
植草一秀の「知られざる真実」 2019年5月22日
永田町筋の情報として次の見立てがある。消費税増税を断行する。衆参ダブル選は行わない。この路線で進むというものだ。
最大の背景は5月20日発表のGDP成長率がプラスになったこと。
消費税増税断行で衆参ダブル選はあり得ない。ダブル選を実施するかどうかは消費税問題とリンクしている。
消費税増税を強行するなら参院選単独実施。消費税増税を凍結するなら衆参ダブル選。
こうなる。
5月20日のGDP統計が消費税判断の根拠とされるなら、この統計数値を人為的な工作によってプラスにしようとする動機が財務省にあっておかしくないということになる。
GDP統計はプラス数値になったが、景気実態は極めて悪い。
すでに日本経済は昨年10月以降、景気後退局面に移行している可能性が高い。
この状況下で消費税率を10%にすることは経済の自殺行為である。極めて深刻な消費不況が到来することになる。
安倍内閣が消費税増税を強行して、その後に衆院解散総選挙に突き進むなら、安倍内閣は完全崩壊することになるだろう。
このリスクを冒して安倍首相が消費税増税に突き進むのか。注目される点である。
安倍首相が消費税増税を強行する判断をするなら、その背景には、財務省からのブラフ=脅しがあると見るのが自然であろう。
財務省は森友疑惑のすべてを知っている。財務省がこの真実を明らかにすれば安倍首相は確実に辞任に追い込まれる。総理大臣だけでなく国会議員も辞任せざるを得ないだろう。
安倍首相自身が国会答弁で明言しているのだから已むを得ない。
この脅しが存在するなら、安倍首相が消費税増税に突き進む可能性は考えられる。
しかし、消費税増税強行に突き進むのは安倍内閣の終焉をもたらすことになるだろう。「毒をもって毒を制する」結果になる。
安倍内閣が消費税増税に突き進む場合、参院選情勢は一変する。
消費税増税凍結で野党陣営がまとまると大きな力が発揮されることになるからだ。
共同通信社が5月18、19日に実施した全国電話世論調査によると、本年10月の消費税率10%への引き上げについて、反対が57.6%、賛成は37.6%だった。
主権者の多数が消費税増税に反対している。
この点を無視して増税を強行すれば主権者の厳しい審判を受けることは必定だ。
消費税が正しく使われるのなら消費税増税は主権者の理解を得られるだろう。
消費税は財政再建や社会保障制度拡充のために導入され、増税されてきたと説明されている。
庶民は財務省に騙されて税金をむしり取られている。財務省が実行してきたのは、富裕層と大資本の税金を減じるために、庶民に重税を被せてきたことである。
消費税増税が実行されたのは財政再建のためでも社会保障制度拡充のためでもない。ただひたすら、法人税減税と富裕層所得税の減税のためだった。
この増税を強行するためにアピールしてきたのが日本政府の借金1000兆円というプロパガンダ(悪意を持った宣伝)だ。
日本政府にはたしかに1000兆円の借金がある。日本のGDPの2倍の政府債務がある。
これだけを徹底的に流布してきた。
しかし、決定的な重要情報が欠落している。それは、日本政府が負債を上回る資産を保有していることだ。債務と資産を合算すると資産超過なのだ。資産超過の国が財政破綻することはあり得ない。
安倍内閣が消費税増税に突き進む場合、参院選で消費税増税阻止を訴えれば野党陣営は大勝利するだろう。
選挙に向けた対応が重要な局面を迎えている。
(以下は有料ブログのため非公開)
参院選大敗でも消費税減税を言えない“民主党の悪夢”
田中龍作ジャーナル 2019年5月23日 14:26
アベ政権が「消費税増税延期」を打ち出した場合、野党は「消費税の減税」を掲げなければ、参院選(衆参同時も)に大敗を喫するだろう。
にもかかわらず野党各党が「減税」の旗を掲げる気配は、今のところない。野党は手をこまねいたまま憤死するのだろうか。
「消費税廃止」を唱えてきた共産党までもが、選挙政策では「10%への増税を中止する」とトーンダウンしている。変だ。
共産党本部関係者は「ウチだけが消費税減税を掲げると浮くからね」と明かした。野党共闘への配慮である。
田中が「立憲が野党第一党だからですか?」と水を向けると、共産党本部関係者は「立憲は3党合意があるから減税を言えないんだよ」と背景を解説した。
3党合意は2012年5月、当時政権の座にあった民主と自民、公明の間で結ばれた。消費税率を2014年4月に8%へ、2015年10月に10%へと引き上げる法案だ。合意の提唱者は時の首相である野田佳彦。
2015年10月、合意の第一弾が実施され、消費税率は5%から8%に上がった。富裕層以外の国民はさらに生活が苦しくなった。
田中は22日の記者会見で志位委員長に、「増税中止とマイルドになっているのは野党共闘への配慮からか?」と質問をぶつけたが、委員長は明確な返答を避けた。
志位委員長は党が掲げる参院選向けの経済政策が「消費税減税3%と同じ効果がある」と説明した。
立憲の枝野代表は野田内閣の経産大臣、菅内閣では官房長官を務めた。福山幹事長は菅内閣の官房副長官だった。
菅、野田とも消費税増税をブチあげ、野田に至っては前述の3党合意で国民を地獄に叩き込んだ。
菅と野田に引き立てられた立憲の枝野と福山が、彼らの増税路線を否定できるわけがない。
立憲民主党のなかでは稀有な存在である庶民派の議員が「5%」を提案したが、ほとんど支持を得られなかったという。
立憲関係者は「言えても『凍結』まで」と苦り切った表情で語る。
立憲が「増税教」から改宗しない限り、国民の苦しい生活は続く。
~終わり~