2019年5月5日日曜日

安倍首相が「無条件で日朝会談」をと その皮算用は

 3日付の産経新聞のインタビューで、安倍首相が突然日朝首脳会談への意欲を示しました。
「条件をつけずに金委員長と会い、率直に、また虚心坦懐に話し合ってみたい」「拉致問題の解決には、国際社会と緊密に連携しつつ、わが国が主体的に取り組むことが何より重要」「まずは現在の日朝間の相互不信の殻を打ち破るためには、私自身が金委員長と直接向き合う以外はない。ですから条件をつけずに金委員長と会い、率直に、また虚心坦懐に話し合ってみたい」と述べたということです。
 
 つい最近まで、北朝鮮への「最大限の圧力」を国際社会に説いて回り、昨年の米朝首脳会談も実現を阻もうとした安倍政権が驚くべき変わりようです。
 拉致問題の当事国が主体的に動くのは当たり前のことでこれまで何もしてこなかったのは誰なのでしょうか。
 
 連休明けの9日から12日まで菅官房長官が訪米するのもその一環で、北朝鮮側と極秘に会って、食料支援などを呼び水に日朝首脳会談について話し合うのではないかとみられています。
 北朝鮮の食糧事情については最近国連が、北朝鮮の昨年の農産物収穫量は猛暑や洪水のため490万トンと過去10年で最低水準、国民1人当たりの1日の穀物配給量は、昨年1月は380グラムだったのに対し、今年1月には300グラムまで減少し、人口約2520万人の4割に当たる1010万人が食料不足に苦しんでいると報告しています。
 近隣国として支援するのは当然のことで、それを取引に使うべきではありません。
 
 ところで安倍政権はなんとしても衆参同時選挙をしたいのですが、消費増税の延期で国民に信を問うパターンは3回目インパクトがないだけでなく、野党こそが増税反対なので選挙の争点になりません。
 官邸は当初、6月の日ロ首脳会談で北方領土の2島先行返還に合意して信を問う『北方領土解散』(同時選挙)を目論んでいたのですが、日ロ合意の可能性は完全になくなり、それだけでなくその他の外交も全て行き詰まっているので、いまや拉致問題に取り組むしか政権の活路がなくなりました。
 そこで浮上しのが金正恩委員長とのサプライズ首脳会談で一気にダブル選になだれ込むというシナリオです。77日に日朝会談をし、同10日解散84日に衆参同日選挙という具体的な日程も囁かれているということです。すべては政権の安泰が目的であるわけであざといかぎりです。
 
 政治評論家・本澤二郎氏は、「平壌に飛んで首脳会談を行うのは小泉元首相の猿マネすが、外交成果を上げるには北朝鮮問題しか残っていないのです。安倍首相は北との関係をこじらせた張本人だし、外交オンチで拉致問題や国交正常化などの難題を解決することは不可能でしょうが、瞬間的に支持率が上がり、ダブル選挙で大勝すればいい」(日刊ゲンダイ)と考えているとみています。
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日ロの二の舞か…安倍首相「無条件で日朝会談」の皮算用
日刊ゲンダイ 2019/05/04
条件をつけずに金委員長と会い、率直に、また虚心坦懐に話し合ってみたい」――。3日付の産経新聞のインタビューで、安倍首相が日朝首脳会談への意欲を示した。これまで「制裁と圧力」一辺倒だったのに、唐突な方針変換だ。日朝会談で支持率アップなんて、もくろみ通りにいくのかどうか。絵に描いたモチに終わるのではないか。
 連休前から囁かれていたのが、電撃訪朝で日朝首脳会談、拉致問題解決の期待感を高めて衆参ダブル選になだれ込むシナリオ。ついに安倍首相自身がインタビューで明らかにした。
「拉致問題の解決には、国際社会と緊密に連携しつつ、わが国が主体的に取り組むことが何より重要です」
「まずは現在の日朝間の相互不信の殻を打ち破るためには、私自身が金委員長と直接向き合う以外はない。ですから条件をつけずに金委員長と会い、率直に、また虚心坦懐に話し合ってみたい」
 
 何を今さら、という感じだ。拉致問題の当事国が主体的に動くのは当たり前で、2002年に5人の拉致被害者が帰国して以来、「拉致の安倍」を売りに首相に上り詰めながら、何もしてこなかったのは誰なのか。
 つい最近まで、北朝鮮への「最大限の圧力」を国際社会に説いて回り、昨年の米朝首脳会談も実現を阻もうとしたのが安倍政権の対北朝鮮外交だったはずだ。それが突然、「無条件で会う」と言いだした。
「連休明けの9日から12日まで訪米する菅官房長官が、当地で北朝鮮高官と接触するという情報もあります。9日にワシントンでペンス副大統領らと会談した後、ニューヨークに移動して、国連本部で行われるシンポジウムに拉致被害者家族と共に出席する予定ですが、その他の日程が明らかになっていない。北朝鮮側と極秘に会って、食料支援などを呼び水に日朝首脳会談について話し合うのではないかとみられているのです」(大手紙の官邸担当記者)
 
■成果が上がるのかは不透明
 だが、無条件で会うことにはリスクがある。北朝鮮は「拉致問題は解決済み」の立場だから、かえって解決の糸口を失いかねない。戦後補償の問題もある。仮に日朝会談が実現しても、何の成果があるのか不透明だ。
「成果がゼロでも、日本側は会えればそれでいいのでしょう。拉致問題解決の期待を振りまいて、選挙前に一時的にでも支持率が上がればいいと考えているのだと思う。日朝の国交正常化は、本気で取り組めば大変な作業になる。場当たりで首脳会談をしたところで、本質的には何も解決しません。しかし、口から出まかせでも、御用メディアが“サプライズ会談”などと持ち上げて拉致問題解決の期待感をあおれば、国民はダマされてしまう。安倍政権の外交は、いつも“やってるふり”だけで、過度な期待をすれば裏切られる。日朝会談の実現も疑わしいと思います」(元外交官の天木直人氏)
 
 人気取りのパフォーマンスで、シタタカな北朝鮮を相手に渡り合えるはずがないのだ。日朝会談が実現したところで、いいとこ取りされるのがオチ。経済協力だけ食い逃げされて、北方領土は1平方メートルも返ってこない対ロ交渉の二の舞いになりかねない。
 国民の失望が大きければ支持率ガタ落ちの可能性もありそうだ。
 
 
北朝鮮の4割深刻食料不足 数百万人が飢餓の恐れと国連発表
日刊ゲンダイ 2019/05/04
 北朝鮮で早ければ数カ月後に数百万人が飢餓状態に陥る恐れがあることが分かった。国連世界食糧計画(WFP)が3日、スイスの国連ヨーロッパ本部で記者会見し、調査結果を発表した。
 調査は今年3月から4月にかけて北朝鮮の農村部を視察し、政府高官や市民に話を聴取するなどして実施。それによると、昨年の農産物収穫量は猛暑や洪水のため490万トンと過去10年で最低水準に落ち込んだ。その結果、国民1人当たりの1日の穀物配給量は、昨年1月は380グラムだったのに対し、今年1月には300グラムまで減少。人口約2520万人の4割に当たる1010万人が食料不足に苦しんでいるとして、国際社会の支援を呼びかけている。
 
 記者会見では「核兵器開発に資金を費やしている北朝鮮を支援する必要があるのか」といった質問が相次いだが、WFPのベルゼル報道官は「政治的ではなく、人道的な観点から行動すべきだ。今後数カ月から数年の間には飢饉に陥るかもしれない」と強調した。