2019年5月23日木曜日

玉城沖縄県知事 日・米・沖縄3者協議を求める

 沖縄県の玉城デニー知事は21日、県庁で東京新聞の単独インタビューに応じ、名護市辺野古新基地建設に反対の立場を示した上で「政府は期限も工法も予算も明らかにしないが、当該自治体に説明を行わずに公共工事をすることはあり得ない」とし、「日米、沖縄との協議が現実的に最も早い普天間の基地問題の解決策だ」と沖縄県を交えた三者協議に応じるよう日米両政府に求めました
 
 沿岸部に軟弱地盤が存在している辺野古での基地建設は予算の膨大化工事の長期化避けられず、「一日も早い普天間飛行場の危険性除去」という観点にも反しています。それを政府が「辺野古新基地建設が唯一の選択肢」というのは明らかな欺瞞です。辺野古近海の環境破壊の問題も深刻です。
 玉城氏は「沖縄県民の圧倒的多数がなぜ辺野古新基地に反対しているのか、全国の皆さんに理解してもらえるように」と、東京など全国で辺野古新基地建設問題を考えるシンポジウムを開く考えを明らかにしました。
 
 併せて熊本日日新聞22日の「(社説) 沖縄復帰47年 主権回復とは程遠い現実」を紹介します。そこでは沖縄の日本復帰後の現状と沖縄県民の意思が端的に語られています。
 米軍人らによる刑法犯罪は本土復帰から昨年末までの47年間に6千件、航空機関連事故は786に上っているという事実は何よりも雄弁に沖縄の実情を語っています
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日・米・沖縄3者協議求める 玉城知事 本紙インタビュー
東京新聞 2019年5月22日
 沖縄県の玉城(たまき)デニー知事は二十一日、県庁で本紙の単独インタビューに応じ、政府が進める米軍普天間(ふてんま)飛行場(宜野湾(ぎのわん)市)の名護市辺野古(へのこ)移設に伴う新基地建設に反対の立場を示した上で「政府は期限も工法も予算も明らかにしないまま工事を続けている。当該自治体に説明を行わずに公共工事をすることはあり得ない」と政府の姿勢を批判した。「日米、沖縄との協議が現実的に最も早い普天間の基地問題の解決策だ」と沖縄県を交えた三者協議に応じるよう日米両政府に求めた。 (山口哲人)
 
 玉城氏は、辺野古沿岸部に軟弱地盤が存在していることから「予算の膨大化、工事の長期化は避けられない」と指摘。一日も早い普天間飛行場の危険性除去の観点からも、辺野古への新基地建設が不適当だとの考えを示した。
 防衛省による環境影響評価の調査でも数多くの絶滅危惧種が辺野古周辺で見つかっていることも挙げ「世界自然遺産登録地の知床や小笠原よりもはるかに多くの生物が確認されており、世界的に貴重な生物多様性が残された海域は保全されるべきだ」と主張した。
 
 昨年十二月の土砂投入以降、絶滅危惧種のジュゴンの食べ跡が辺野古沿岸部で確認されなくなったことにも触れ「国が環境行政としてジュゴンを保護すべきなのに、国による埋め立て工事が生息域に大きな影響を与えている懸念が高まっている」と矛盾を指摘した。
 玉城氏は「沖縄県民の圧倒的多数がなぜ辺野古新基地に反対しているのか、全国の皆さんに理解してもらえるよう取り組む」と強調。具体策として、東京など全国で辺野古新基地建設問題を考えるシンポジウムを開く考えを明らかにした。
 
 現在、沖縄県の埋め立て承認撤回が国土交通相によって取り消され、これを不服とした県が総務省の第三者機関「国地方係争処理委員会」に審査を申し出ており、七月二十三日までに結論が出る。玉城氏は、県の申し出が認められなかった場合に訴訟に踏み切るかについては明言を避けた。
 
 新基地建設を止める手段として埋め立て承認を「再撤回」するかは「承認撤回が認められるべきだという立場なので、現段階で再撤回を検討する状況にはない」と答えた。
 
 
(社説) 沖縄復帰47年 主権回復とは程遠い現実
熊本日日新聞 2019年5月22日 07:11
 太平洋戦争での敗戦に伴い、米国の施政権下に置かれた沖縄が本土に復帰してから、15日で47年となった。この間、在日米軍基地を巡る沖縄の負担軽減は、日米地位協定の見直しも含め進んでいない。約半世紀を経てまだ完全な主権回復とは程遠い沖縄の現実を今、改めて見つめ直すべきだ
 
 沖縄の在日米軍専用施設面積は、今年1月時点で約1万8496ヘクタール。1972年の復帰時の約2万7893ヘクタールから減ったものの、整理・縮小のペースは本土より遅く、国土面積の0・6%しかない沖縄への集中度は58・8%から70・3%に上昇している。
 この間、沖縄県民は負担軽減を求める声を上げ続けた。特にこの1年間は、米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古移設に反対する総意を相次ぎ示した。
 辺野古移設の阻止を掲げ、昨年9月の知事選に立候補した玉城デニー氏は、安倍晋三政権が支援する候補者に圧勝した。辺野古埋め立ての是非を問う今年2月の県民投票は、「反対」が72・2%。4月の衆院沖縄3区補欠選挙でも、辺野古反対派が勝利した
 
 にもかかわらず、安倍政権はこれらの民意を顧みることなく、「辺野古移設が(普天間の固定化を避ける)唯一の解決策」と繰り返し、工事を進めようとしている。こうした現状を見れば、本土との間にある溝はますます深まったと言えるのではないか。
 玉城知事は本土復帰47年に合わせて発表した談話の中で辺野古埋め立てに触れ、「憲法が定める国民主権、民主主義、地方自治が脅かされている」と訴えた。沖縄では復帰によって初めて日本国憲法が適用された。しかし、憲法と同時に適用された日米地位協定が、沖縄では憲法より上位に置かれているように思えてならない。
 
 地位協定は在日米軍基地を巡る問題だけでなく、沖縄県民が被害者となる事件・事故にも大きく影響している。米兵による犯罪に対する米側の優先的な裁判権や、米軍機に対する航空法の適用除外などを協定が認めているからだ。沖縄県によると、米軍人らによる刑法犯罪は本土復帰から昨年末までに約6千件、航空機関連事故は786件に上っている。
 
 沖縄県は今年4月、ドイツやイタリアなど欧州4カ国が米国と結ぶ地位協定を調査した報告書を公表。それによると、いずれの国も駐留米軍に対して自国の国内法を適用していた。日米間の協定が著しく不公平なのは明らかだが、憲法改正に積極的な安倍政権は、一方で協定の見直しには腰が重い。
 日米地位協定の影響を受けているのは沖縄だけではない。東京など1都8県の上空の航空管制は米軍横田基地が握っており、羽田空港発着便も不自由さを強いられている。全国知事会は昨年7月、地位協定の抜本的見直しを政府に提言している
 沖縄の現状は、戦後日本の独立国としての主権の在り方も問うていることを、本土に住む私たちも理解すべきだろう。