2019年5月25日土曜日

国民投票法案 今国会見送り 参院選への影響考慮 与党

 与党は24日、国民投票法改正案今国会での成立を見送る方針を固めました。これから成立に向けて動いても参院選の前に成立させられなければ慣例で廃案となるからです
 現在の改正案は駅や商業施設などに「共通投票所」を設けられるようにするという、単に国民投票の利便性を高めるだけのもので、CM規制などは盛り込まれていません。
 公平性が担保されない中で利便性だけを高めてみても片手落ちです。。
 与党は、先に民放連の意見を聴取したことでCM規制の問題は解決したと考えているようですが、憲法学者の小林節・慶大名誉教授は、それだと資金の豊富な与党・改憲派に有利になることから法の下の平等(憲法14条)に反するし、民放連がCMの内容を精査するというのは検閲することに他ならないので憲法21条違反であると批判しています。
 
 首相の信頼の厚い萩生田氏が4月の段階で『真相深入り! 虎ノ門ニュース』(DHCテレビ)に出演し、「(改憲に関しては)ここまで丁寧に我慢してきた。令和になったらキャンペーンを張り  少し『ワイルドな憲法審査』を自民党は進めていかなければならない」と述べたのは、安倍首相の本心を語ったもので、事実昨年の段階で、良識派と見られる船田元・中谷元の両氏を改憲担当の責任者から外して、首相の信頼の厚いメンバーに代えています。
 いずれにしても「国民投票法改正案」の今国会での成立がなくなったのは喜ばしいことです。
 神戸新聞の社説も併せて紹介します。
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国民投票法案、今国会見送り 参院選への影響考慮 与党
時事通信 2019年05月24日18時32分
 与党は24日、憲法改正に関する国民投票の利便性を高める国民投票法改正案について、今国会での成立を見送る方針を固めた。立憲民主党など主要野党は6月26日までの会期内に改憲への道を開くことに警戒を強めている。採決を強行すれば反発は必至で、夏の参院選の前に対決色が強まるのは得策ではないと判断した。
 
 改正案は、衆参両院選と同様に駅や商業施設などに「共通投票所」を設けられるようにするのが柱。自民党は、今国会で成立させ、党改憲案の国会提示の環境を整えようとしてきた。これに対し、野党側は国民投票のテレビCM規制の議論を優先。与党はCM規制に関する参考人質疑に応じたが、野党の姿勢は変わらなかった。
 
 改正案を扱う衆参両院の憲法審査会の定例日は週1回。衆院で可決し参院に送付しても、参院選の前に成立させられなければ、慣例で継続審議とせず廃案となる。参院自民党は野党の抵抗を押し切る形での衆院通過に難色を示している。
 
 
社説 国民投票法/足りないCM規制の議論  
神戸新聞 2019/05/24
 衆院憲法審査会で先日、今国会初の実質審議が行われた。与党側の失言問題などで空転が長く続き、衆院審査会での実質審議は約1年半ぶりである。
 与党が提案している国民投票法改正案は、駅や商業施設などへの「共通投票所」設置を可能にするなど、公選法の規定に合わせた見直しだ。
 
 ただ安倍政権には改憲の動きにつなげたい思惑がある。今回は投票運動のテレビCM規制をテーマとすることで野党側に譲歩し、民放連の幹部を参考人に招いて意見を聴いた。
 民放連は「表現の自由」を侵害する懸念があるとして規制に反対する立場を表明した。法規制に否定的な自民、公明両党に近い考え方といえる。
 しかしそれでは資金量の差が投票行動に影響を及ぼす事態が予想される。「規制の在り方を考えるべき」とする立憲民主党など野党側の主張も当然だ。
 フランスや英国の国民投票では、公的なCM枠が均等に配分される。一方、それ以外のCMは全面的に禁止される。海外の例も参考に、時間をかけて議論を尽くすべきである。
 
 現行の国民投票法には、賛否を訴える広告の規制も運動費用の上限もない。テレビCMは投票14日前から禁止されるが、それまでは自由に放送できる。
 規制を最小限度にとどめたのは、国民の活発な議論を促すためだ。民放連の永原伸専務理事は、CM量の不均衡を抑制する放送業界の自主規制についても「国民の表現の自由を制約すべきではない」として、「行わない」と明言した。
 ただ、法の不備を指摘する声は少なくない。永原氏は「フェイク(虚偽)があってはならない」とも述べ、内容を精査する考えも示した。さらにインターネットの広告費がテレビCMに迫る状況を踏まえ、「広告全般の議論でなければおかしい」と訴えた。
 ネット広告のルールづくりは避けて通れない論点である。対象を広げて検討する必要があるだろう。国民民主党は、政党によるCM禁止を柱とする独自の改正案を衆院に提出した。
 与野党は、幅広い観点で一致点を見いだす努力を重ねてもらいたい。