2019年5月25日土曜日

25- 部落差別で長谷川豊が見せた悪あがきと「維新」の差別容認体質

「維新」は、「日本維新の会」が国政政党として全国的な選挙や国会活動を担い、大阪では地域政党「大阪維新の会」として活動するという やや分かりにくい組織です。先の大阪府知事・大阪市長選では圧勝しましたが、4月の道府県議選では関西以外では全敗を喫し、党勢は全国的な広がりを欠いています(現有16人の国会議員は全て関西地域から選出)。
 
 かつて橋下徹氏に率いられて登場したときにはメディアは盛んに第三勢力ともてはやしましたが、その実態は自民党の補完勢力で、最近は大阪での勝利をバネに、公明党を追い落として連立政権に参加したいと言い出しています。党の政治理念は安倍首相に勝るとも劣らないほどの改憲志向でその徹底ぶりには驚かされます。
 
 同党のことで我々の記憶に鮮明なのは足立康史議員の国会における数々の暴言演説で、それによって実に史上最多の6懲罰動議を受けています。
 最近は丸山穂高議員の「大暴れ」が大問題になっているのはご存知の通りです(丸山議員は「維新」から除名処分)。
 ところで夏の参院選に日本維新の会から候補者として公認されていた元フジテレビアナウンサー・長谷川豊氏が、「部落差別発言」で当の団体などから厳しく批判されています。長谷川氏は、それ以前にも、「自業自得の人工透析患者なんて、全員実費負担にさせよ!無理だと泣くならそのまま殺せ!」とか、待機児童問題では“子どもを預けて働きたい母親のワガママが原因”と決め付けるなど、驚くべき暴言の数々を口にしています(現在は部落差別発言で「当面 公認停止」扱いとなっています)。
 LITERAが彼の言動と「維新」の優柔不断さを批判する記事を出しました。
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部落差別問題で長谷川豊が見せた嘘八百の悪あがきと、
それでも公認を完全に取り消さない「維新」の差別容認体質
LITERA 2019.05.24
 本サイトでは20日にいち早くお伝えした今夏の参院選で日本維新の会から候補者として公認を受けていた元フジテレビアナウンサー・長谷川豊氏の部落差別発言。長谷川氏は22日になってようやく謝罪をし、これを受けて維新が「当面の公認停止」を発表した。
 この期に及んでも「取り消し」ではなく「停止」で、しかも「当面」しか公認停止をしないという維新の人権感覚の低さには呆れるが、そのことを批判する前に、まず、問題をおさらいしておこう。
 
 今年2月に東京・下北沢でおこなわれた講演会の様子が5月15日にYouTubeに投稿されたのだが、そこで長谷川氏はこんな発言をしていた。
「日本には江戸時代にあまりよくない歴史がありました。士農工商の下に、穢多・非人、人間以下の存在がいると。でも、人間以下と設定された人たちも、性欲などがあります。当然、乱暴なども働きます」
「プロなんだから、犯罪の」
 
 絶句するほかない部落差別発言だが、これに対して部落解放同盟中央本部は21日に日本維新の会に抗議文を提出。さらに中央本部の組坂繁之・中央執行委員長は維新の馬場伸幸幹事長と面会し、「思い込みや偏見にもとづいて誤った部落差別意識を拡散したのであればその責任は重大」「発言は『部落は怖い』『犯罪集団』などの差別意識を助長する行為」と直接抗議した。
 すると、22日に長谷川氏はブログで謝罪。〈講演会でお話をした中身を改めて読みました。今、自分で読んでも訳が分かりません〉などと釈明、〈とんでもない差別発言であることは、まぎれもない事実〉〈人間としてあってはならないことを犯してしまい、慙愧の念に堪えません〉として〈発言を全面的に謝罪するとともに、完全撤回〉したのである。
「自分で読んでも訳が分かりません」って、まったく何を言っているのだろう。しかも、長谷川氏はすんなり非を認めたわけではなかった。差別発言がSNS上で問題視された当初、発言の事実をごまかし、逆に批判のツイートに対して「切り取り」「捏造」「著作権侵害」などと攻撃していたのだ。
 
〈かつてこのような暗い歴史があったという史実を述べる事が貴殿には差別発言ですか〉
〈これが反維新のいつものやり方です。こうやって切り取り、悪意を持ってレッテル貼り。
江戸時代の時代に暗い歴史があったと述べる部分を切り取り著作者の許諾を取りもせず拡散。犯罪を平気で行うのがこの連中のやり口です。
情報ありがとうございます。毅然と対処いたします〉
〈切り取りならまだ(ダメですが)対応出来ますが、ここまで来ればただの「ねつ造」ですから厳正に対処します〉
〈屁理屈つけてこうして犯罪をする人間はネット上には大勢いる。そしてウソを1万回言ってまるで真実のようにする。
 本当にかわいそうな集団だ。皆さん、無視で!〉
 
 ようするに、当初は差別発言の上にさらに差別を上塗りしていたのに、維新が部落解放同盟から抗議を受け処分を検討するとした途端、一転して謝罪したにすぎないのだ。
 しかも、SNS上で批判を受けていた20日に長谷川氏は、〈注意〉と前置きして、こんな投稿までおこなっていた。
〈自由同和会の方からご連絡を頂戴しました。
「選挙前のせいか悪意ある編集が出回っているようです。どうかご注意を」とのこと。本当にお気遣いに感謝。〉
 自由同和会は自民党系の保守同和団体だが、それだとしても明確な部落差別発言に対して“悪意ある編集に注意”などするものなのかと疑問を持たざるを得ない。
 
■部落差別が明らかでも、維新は長谷川の公認を「当面」しか停止せず
 実際、自由同和会に問い合わせをおこなった人たちは、〈ことの成り行きをお話ししたら、呆れ絶句されてた〉〈対応してくださった方は“今回の発言は問題があることを前提にして長谷川氏と話した”ということと“エタ・ヒニン発言の事実誤認を指摘し部落の歴史を学習するよう要請した”と仰ってました〉と投稿している。
 
 本サイトが自由同和会中央本部に取材をおこなったところ、事務総長の平河秀樹氏は「長谷川氏が発言を取り消して謝罪してこれから同和問題について勉強しますという誠意を見せたので、うちはそれで結構です」「ノーコメントでお願いします」とのことだったが、別の関係者からは、自由同和会は解放同盟が動く前から長谷川氏と接触し、謝罪するようアドバイスしていたとの情報が得られた。党からコメントを出すという長谷川氏に対して、本人が謝罪コメントを出すべきだ、とも説得していたという。
 いずれにしても、長谷川氏が差別発言ののち、開き直った上に、事実のねじ曲げまでおこなって自己正当化をはかっていたのはあきらかで、その往生際の悪さ、無責任ぶりにはほとほと呆れるしかない。
 
 だが、もっと驚いたのは、前述したように、維新対応だ。維新は本日、常任役員会でこの部落差別発言を受けて長谷川氏の処分を検討。そこで出た結論は、なんと「当面の公認停止」。産経新聞ニュースによると〈党内で発言を検証し、参院選の公示までに立候補させるかどうかを判断する〉という。そう、即刻、公認を取り消すのでなく、とりあえず、一旦、保留するというだけなのである。
 言っておくが、長谷川氏の差別発言・暴言騒動はこれだけではない。「自業自得の人工透析患者なんて、全員実費負担にさせよ!無理だと泣くならそのまま殺せ!」という暴論をはじめ、待機児童問題では“子どもを預けて働きたい母親のワガママが原因”と決め付け、〈お前ら、子供を産んだんだろうが!〉〈一生言ってろ!バカ女!!! 悪いのはお前らの頭の中と仕事の能力だ!!!! 〉などとブログに投稿してきた。
 だというのに、維新はこうした暴言・差別発言を問題視することなく、2017年の衆院選で長谷川氏を擁立。そして、この期に及んで、今年の参院選での公認をいますぐ取り消すのではなく、「公示までに判断する」などと言っているのだ。これは安倍政権とまったく同じ「ほとぼりが冷めるのを待つ」「いずれ国民は忘れる」という、無反省・無責任な姑息な手段ではないか。
 
■「俺は女を買いたいんだ!」と喚いた丸山穂高と長谷川豊こそ「維新的」
 だが、これこそが維新の正体なのだ。事実、維新の生みの親でいまなお影響力を誇る橋下徹氏は「慰安婦制度は必要なのは誰だってわかる」と言ったり、沖縄県うるま市で女性強姦殺人事件が起こった際も、過去の“風俗の活用”発言を「撤回しない方がよかったかも」などとツイッターに投稿したりと、暴言を連発しながら反省の色を微塵も見せない。維新代表の松井一郎・大阪市長も、沖縄・高江で「土人」発言をおこなった大阪府警の機動隊員に批判が集まるなか、「出張ご苦労様」と差別を肯定するかのように労ってみせたほどだ。
 
 それだけではない。維新をめぐっては、除名した丸山穂高議員の「戦争しないとどうしようもなくないですか」発言の続報を、本日発売の「週刊文春」(文藝春秋)と「週刊新潮」(新潮社)が報じ、大きな問題となっている。丸山議員は、「戦争」発言が飛び出した同日夜、無用な外出が制限されているにもかかわらず「外に出たい」「近くの店に行かせろ! そこに女がいるだろう」「行かせろよ、俺は女を買いたいんだ!」「オレは女の胸を揉みたいんだ!」とわめき立てた上、「オレは国会議員だ! ここが日本の領土だろ! 議員だから不逮捕特権があるんだ!」などと言い放ったという。訪問団団員には島民3世の女子中高生も含まれていたというのに、である。
 
 党のトップらは暴言を吐いても反省するどころか逆ギレし、たとえ発言を撤回しても後になって自ら蒸し返して暴言を繰り返す。だからこそ、丸山議員の今回の問題をはじめ、維新所属の議員たちも伸び伸びと暴言を連発。実際、足立康史衆院議員にいたっては史上最多の6回もの懲罰動議が国会に提出されているが、まるで懲りた様子はない
 つまり、長谷川氏はじつに「維新的」な人物であり、事ここに至っても公認取り消しを決定しない姿勢こそ、維新の体質を見事に表しているのだ。
 
 しかし、この異常な維新が、先日の大阪ダブル選でも圧勝をしたように問題とならないのは、メディアの責任も大きいだろう。
 事実、今回の長谷川氏の部落差別問題も、メディアが伝えたのは、部落解放同盟の抗議と長谷川氏の謝罪がなされたあとの本日の朝刊から。謝罪がおこなわれるまでは、SNSと、ネットニュースである本サイト・リテラと「BUZZAP!」が批判したくらいだった。
 丸山議員の問題にしても、松井代表や橋下氏の暴言歴を取り上げて維新の体質を問うといった掘り下げ方はなされていない。
 異常な公党たる維新の体質を批判しないメディアの体たらくによって、長谷川氏や丸山議員の問題もフェードアウトしてゆくのか。そんなことでは、大衆の劣情を煽るための差別発言や暴言が、今後も維新からなくなることはけっしてないだろう。(編集部)