衆院憲法審査会は9日、約1年半ぶりに実質的な審議を行い、改憲の是非を問う国民投票時のCM規制について、民放連幹部の意見聴取と質疑を行いました。
民放連の永原伸専務理事は、「表現の自由」に抵触する恐れからテレビCM量の自主規制はできないとの立場を表明し、「放送事業者の『表現の自由』を侵害する恐れがあり、法令による規制を加えるのは望ましくない」とも述べました。
「表現の自由」を言うのであれば、公職選挙法で選挙ビラやポスター、CMなどに規制が掛かっているのもおかしいということになり、説得力がありません。財源が豊富な自民党側に有利になっても構わないし、何よりもテレビCM代の莫大な収入を減らしたくないという魂胆が透けて見えます。
立民党の枝野幸男代表は、「2006年の国民投票法審議では民放連は規制に積極的だった。その前提で法律が成立した。自主規制をしないのであれば現行法は欠陥法になる」「当時に戻って議論しないといけない」と主張し、当時法案作成に関わった自民党の船田元氏らの参考人招致を求めました。
日本共産党の赤嶺政賢氏は、大阪都構想の賛否を問う15年の住民投票では賛成派が流した意見CMは480本であったのに対して反対派の意見CMは120本で、「資金力によって賛否のCM量が偏る」と指摘しました。
民放連からの意見聴取で憲法審査会での与野党の対立は深まりました。
日本共産党は、もともと憲法審査会は開くべきでないという立場です。
立民党はCMの全面禁止に向けた独自の改正案作りを進めており、憲法審でのさらなる参考人招致を求め「自民がのまないなら審議に応じない」とハードルを上げました。
国民党は既に策定した党独自の改正案の議論を求め、立憲と足並みをそろえるとしています。
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憲法審1年3カ月ぶり開催 国民投票のテレビCM巡り意見聴取
毎日新聞 2019年5月9日22時26分
衆院憲法審査会(森英介会長)は9日、憲法改正の国民投票で賛否を呼びかけるテレビCM規制に関し、参考人招致した日本民間放送連盟(民放連)から意見を聴取した。民放連は規制強化に慎重な考えを改めて表明。与野党10会派が質疑した。CMの量的規制のあり方やインターネット広告の規制など論点は山積しており、与党が目指す国民投票法改正案の今国会成立の見通しは立っていない。
国会の実質審議は、昨年2月の参院憲法審で行われた自由討議以来、約1年3カ月ぶり。今国会では初めて。
民放連の永原伸専務理事は衆院憲法審で、放送法の範囲内で自主規制を行うとしたうえで「放送事業者の表現の自由を侵害する恐れがあり、法令による規制を加えるのは望ましくない」と表明。「広告には国民投票運動の盛り上がりを下支えする役割がある」とも述べ、規制は投票率の低下を招く可能性があるとの認識を示した。CM内容の真偽の判断については「放送広告でフェイク(偽)はあってはならない」と述べ、内容を精査することで対応する考えを示した。
これに対し、主要野党は自主規制に難色を示した。現行法は投票日前の14日間を除いて自由にCMを放送できるため「資金の豊かな大政党に有利」と懸念するためだ。立憲民主党の枝野幸男代表は、2006年の国民投票法審議で民放連が規制に積極的だったと指摘。「我々の前提と違う。現行法が欠陥法になる」と反発。国民民主党の奥野総一郎氏は、外国資本や外国政府による意見CMが集中する恐れがあるとして、自主規制では不十分との認識を示した。
それに対し、公明党の遠山清彦氏は「国民投票期間中はなるべく自由闊達(かったつ)な議論がなされるべきで、規制は最小限にすべきだという考え方が党内には強い」と民放連の方針に理解を示したが、共産党の赤嶺政賢氏は、大阪都構想の賛否を問う15年の住民投票で賛成派が反対派の約4倍の意見CMを放送した事例を挙げ「資金力によって賛否のCM量が偏る」と指摘。都構想を推進する日本維新の会の馬場伸幸幹事長が「資金力ではなく準備力の高さだ」と反論する一幕もあった。民放連の田嶋炎番組・著作権部長は、賛否両派のCMが放送された住民投票について「大事な経験だった。参考にしている」と述べたが、都構想を巡る住民投票のCMのあり方も今後の議論の対象となりそうだ。
一方、自民党の平沢勝栄氏はインターネット広告について「インターネット(CM)は規制の対象にならない」と指摘。田嶋氏は、民放連が国民投票のテレビ・ラジオのCMに関する加盟社向けのガイドラインを決定していることなどを挙げ「ネット事業者にも一定の効果はある」との認識を示したが、今後、ネット上の規制の是非についても議論の対象となるのは確実で、課題は山積している。【遠藤修平、村尾哲】
憲法審再開でも野党硬化 首相「20年改憲」辻元氏「出直せ」
毎日新聞 2019年5月9日22時25分
自民党は国会での実質審議が衆院憲法審査会で1年3カ月ぶりに再開したことを受け、改憲議論を加速化し、安倍晋三首相が掲げる「2020年新憲法施行」の実現に結び付けたい考えだ。だが、野党は警戒を強めて態度を硬化しており、先行きは見通せなくなっている。
与党筆頭幹事の新藤義孝氏(自民)は9日の衆院憲法審査会後、記者団に「憲法審査のスピードを速めていかなくてはいけない」と強調した。だが、野党は与党が同日の憲法審幹事会で、国民投票法改正案の質疑と採決を16日に行うよう改めて提案したことに対し回答を保留した。
そもそも自民党が今回、民放連の参考人招致に応じたのは、安倍首相の下での改憲に慎重姿勢を崩さない野党に対し、改憲論議への呼び水にしようと狙ったためだ。だが、野党側は「20年新憲法施行」にこだわる首相に対し「公平、公正な国民投票ができない状況。顔を洗って出直してこい」(立憲の辻元清美国対委員長)と批判を強め、今後の改憲議論のスケジュールは見通せなくなっている。
自衛隊明記など4項目の改憲条文案を策定した自民は衆院憲法審開催を狙い、現行の国民投票法に公職選挙法とのずれがあることに着目。共通投票所の設置など公選法の規定にそろえる国民投票法改正案を昨年の通常国会に提出した。「改憲の中身と関係ないため、野党も憲法審で審議に応じざるをえない」と見たためだが、野党側はさらに改憲の国民投票で賛否を呼びかけるCMを問題視。積み残しの国民投票法改正案の審議より、CM規制強化の議論を優先するよう要求。逆に対立は深まった。
立憲はCMの全面禁止に向けた独自の改正案作りを進めており、枝野幸男代表は9日の憲法審を受け、インターネット広告も規制対象とするよう党内に指示。立憲は憲法審でのさらなる参考人招致を求め「自民がのまないなら審議に応じない」(幹部)とハードルを上げる。国民民主党も既に策定した党独自の改正案の議論を求め、立憲と足並みをそろえる。【野間口陽】