先の改元イベントでは、安倍首相はまるで自分のことであるかのように騒ぎ立てました。その勘違いぶりは呆れるばかりでしたが、そのせいで支持率がアップしたということなので、目的は達したのでしょう。
しかし皇室を政治的に利用した空騒ぎは所詮空騒ぎです。連休明けの3日間で日経平均株価は合計850円も下落しました。この先13日には「景気動向指数」が、20日には1~3月のGDP速報値が発表されますが、景気判断は「悪化」、GDPはマイナス、良くてゼロ成長と見込まれています。いくら虚偽の数字を捏造してその場を飾ってもいずれは化けの皮は剥がれるということです。
安倍政権になってから富裕層と大企業は大儲けしましたが、庶民の所得を抑え込んで物価だけを上げる政策をしてきたのですから、経済が上向くはずがありません。アベノミクスは“道半ば”なのではなく、間違った道を突進したのでした。
株価下落に青ざめて現実を見渡せば「この政権では経済無策で外交は破綻」、ひたすら米国の食い物にされているのが実態です。
こんな政権がダラダラと続いたところで、日本経済は没落の一途をたどるだけです。「いま本当に変えるべきものは何なのか。国民はそろそろ気づくはずだ」
日刊ゲンダイはそう述べています。
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経済無策と外交破綻 令和効果が失せればこの政権は終わる
日刊ゲンダイ 2019/05/10
阿修羅文字起こしより転載
3日間で計850円もの下落だ。9日の日経平均株価は、前日終値比で200円46銭安の2万1402円13銭で取引を終えた。10連休明けの株価は3日間続落。連休中の5月1日に元号が「令和」に変わり、日本中に漂っていたお祝いムードに冷や水の様相である。
「改元も新天皇の即位も日本国内だけのことで、元号が変わったからといって世界情勢や経済状況が一新されるわけではないし、われわれの日常生活も連綿と続いている。改元フィーバーに浮かれた10連休が終わった途端、日本が抱える諸問題を突きつけられることになりそうです。中身空っぽの政権が目いっぱい改元イベントを利用したところで、目の前にある危機はなくならない。むしろ、バカ騒ぎをあおって危機から目をそらしていた分だけ対応が遅れ、取り返しがつかないことになりかねません」(法大名誉教授・五十嵐仁氏)
思えば、新元号発表の頃から、国民の関心は、ほとんど強制的に改元イベントに向けられてきた。4月1日、菅官房長官が「令和」の墨書きを掲げた新元号発表会見は全テレビ局が生中継。その直後には、平成の時にはなかった首相会見も行われた。朝から特番対応が取られ、NHKはなんと4時間半の特番を組んで一挙手一投足を報じたのだ。
その後も、万葉集を典拠とする「令和」が安倍首相の意中の案であったことなどが、平然と報じられてきた。
いったい元号は誰のものなのか。安倍が「自分が決めた」かのように振る舞う独善と破廉恥に対する違和感も置き去りに、メディアがお祭りムードを盛り上げる中、10連休に突入したのだった。
歴史的イベントの主役は誰か
連休中、天皇の退位と即位をめぐる一連の行事でも、安倍は前面にシャシャリ出た。国民代表として言葉を発する場面も少なくなかった。
「その様子をメディアがもり立て、国民は喝采する。国会議員の中には『なぜ国民の代表が内閣総理大臣なのか。しいて言うなら衆参議長が国民の代表にふさわしいのではないか』と疑問を呈する声もあったのですが、祝賀ムードにかき消されてしまった。この歴史的な改元イベントの主役は、天皇ではなく安倍首相でした。『新しい令和の時代』『いい時代になるように』といった常套句で経済政策や外交の諸問題が覆い隠され、内閣支持率も上がった。そういう意味では、政治利用は大成功に終わったのでしょう」(政治ジャーナリスト・山田厚俊氏)
その流れで、5月3日の憲法記念日に安倍が日本会議系の「公開憲法フォーラム」に寄せたビデオメッセージも興味深いものだった。
「令和元年という新たな時代のスタートラインに立って、どのような国づくりを進めていくのか、この国の未来像について真正面から議論を行うべきときに来ている」というのだ。元号と改憲に何の関係があるのか分からないが、改元の祝賀ムードをとことん利用する気なのは間違いない。まるで時代の寵児気取りだ。
だが、そう浮かれてばかりもいられないのが現実で、それが連休明けの株価下落であり、足元の経済指標の悪化だ。
統計いじってカサ上げしても隠せない経済の悪化
内閣府が13日に発表する「景気動向指数」は、景気判断が「悪化」になる可能性が高い。相関関係にあるGDP速報値も20日に発表されるが、1~3月期は下手すればマイナス、よくてゼロ成長と見込まれているのだ。
9日付の日経新聞によると、民間15社のエコノミストの予測は、年率換算の平均値が前期比0・003%だという。ほぼゼロだ。そうなると、2018年度のGDP成長率も、ほとんどゼロということになる。日本経済の低迷は、もはや隠しようがないということだ。いつまで経っても道半ばのアベノミクス詐術も通用しない。さんざん統計をゴマカして、かさ上げしてもゼロ成長とは、実態はどこまで悪いのかと空恐ろしくなる。
「消費動向調査も、ここ1年ほど下げ続けています。庶民の所得を抑え込んで物価だけ上げる政策をしてきたのだから、それは当然の結果です。アベノミクスは“道半ば”なのではなく、間違った道なのです。消費者をないがしろにして、ガタガタになった日本経済を放置し、国民にツケを回すことは許されない。現時点でゼロ成長ということは、早く手を打たないと、オリンピック景気が息切れする来年以降は反動で大不況になりかねません。参院選を控えて、急に日朝首脳会談などと言い出していますが、選挙向けの外交パフォーマンスの前に、国内を何とかしろと言いたくなります」(経済評論家・斎藤満氏)
安倍が突然、「無条件で」日朝首脳会談を目指すと言い出したのも、日本中が改元イベントに浮かれていた連休中だった。
「今まで『対話のための対話はしない』と、圧力一辺倒で拳を振り上げてきたのは誰なのか。ロシアとの北方領土交渉が行き詰まり、米国との貿易交渉もかなり押し込まれそうな中、急に日朝を持ち出してきた。外交の八方塞がりをゴマカすための目くらましなのは明らかです」(五十嵐仁氏=前出)
外交も株価も天皇も利用
場当たり的に北朝鮮直談判を言い出す無節操には、野党だけでなく、さすがに身内の自民党内からも説明を求める声が上がっている。谷垣グループの逢沢一郎代表世話人は「外交のことなので、全て国民に説明をしてというわけにはいかないが、何がしかの説明責任を果たす義務も総理には同時にある」と苦言を呈した。
目先の支持率アップと政権維持のために、期待感を膨らませるだけ。あれこれブチ上げては食い散らかし、何の成果もないままポイ捨て。そんなことを繰り返してきたのが、いまの政権ではなかったか。このご都合主義首相は、外交も株価も、そして天皇までも、自分の保身と延命のために利用する。
そういう厚顔の化けの皮がはがれてくる端緒になりそうな10連休明けの現実である。お祭り気分の「令和効果」が失せれば、立派に見えた馬車は、そこらに転がるカボチャに戻る。おとぎ話の「シンデレラ」と同じだ。
株価下落に青ざめ、ハタと我に返って現実を見渡せば、この政権の経済無策、外交破綻。いくらNHKを筆頭とする大メディアを支配下に置き、改元ムードを引っ張ってゴマカそうとしたところで、もう隠しようがないだろう。
こんな政権がダラダラと続いたところで、迷走が加速し、日本経済は没落の一途をたどるだけ。こんな政権はもうオシマイなのだ。令和をいい時代にしたければ、本当に変えるべきものは何なのか。改元イベントの宴から覚めた国民は、そろそろ気づくはずだ。