2020年12月5日土曜日

菅首相が記者会見 「Go To」の反省も独自の生活支援策もなく

  課題が山積し、問題が噴出している中、野党が要求している国会の延長は拒否し、5日で臨時国会を閉じることにした菅首相が4日夜、記者会見を行いました。

 しかしそれは猛威を振るい出したコロナの第3波に対する対策や今後も一層困窮を深める国民への支援策を語るものではありませんでした。
 確かに「雇用調整助成金」の特例延長無利子・無担保融資などの延長、ひとり親世帯の追加給付金、地方創生臨時交付金の15兆円確保などを発表しましたが、それらは野党から支援策として要求されながら具体的な回答をしなかったものを、ここに来て手柄顔に披露したのでした。
 政府が口では「この3週間が勝負」と言いながらその実何の対策も講じないコロナは、この1週間の感染者数が前の1週間の感染者数を1350人以上も上回り、勢いを増し続け、死者数に至っては前の1週間の数108人から75%アップの189人に増加中です。
 死者の数は言うまでもありませんが、感染者数もあと2週間が経過しても減りそうもありません。識者が警告したように、上手くいっても高原状に高止まりが続くのではないでしょうか。一体何を考えているのか分からない政権です。
 また学術会議会員の任命拒否の理由を問われた首相は、またもや憲法第15条を挙げました。それは「公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である」とするもので、国民が持っている権利を謳ったもので、とても首相の恣意的な振る舞いを公認するようなものではありません。さすがにその意識はあるようで、「学術会議会員は公務員」だからと付け足しますが、微々たる国費が配分されているからと言って「公務員」呼ばわりするのは暴論です。
 LITERAの記事を紹介します。
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菅首相がコロナ重症者最多のなか会見で「携帯料金20ギガで2980円」をアピール! Go To反省も独自の生活支援策もなく…
                             LITERA 2020.12.04
 この無責任さは一体何なのだ。本日、ついに首相就任会見以来となる臨時国会の閉会にともなう総理会見をおこなった菅義偉首相だが、この感染拡大の最中に国民に危機感を強く訴えるでもなく、冒頭から原稿を読み続けるだけという無能っぷりを見せつけたのだ。
 まず、菅首相は新型コロナの感染拡大で重症者用病床が逼迫していることについて「強い危機感を持って対応している」と述べ、医療機関や高齢者施設への「最大限の支援」をおこなうことをはじめ、「雇用調整助成金」の特例延長に必要な予算の割り当てや無利子・無担保融資などの延長、ひとり親世帯の追加給付金、地方創生臨時交付金の1.5兆円確保などを発表。だが、これらは国会で野党から支援策として要求されながら、具体的な回答をおこなってこなかったものだ。
 国会での審議で野党からの質問の際に明言していれば具体的な議論もできたというのに、それはせずに閉会が決定してから会見で手柄のように披露する──。しかも、医療機関への支援やひとり親世帯への追加給付金などは予備費を使ってもっと早く対応しておくべきだったもの。その上、「雇用調整助成金」の延長については、NHKなどの報道によれば延長は来年2月末までで、3月以降は段階的に縮減する方針だというのだ。
 かつてない感染の拡大が進むなかで、かたや「Go Toトラベル」は来年6月末まで延長する方針を示しながら、今後さらに厳しさを増すことがわかりきっている雇用を守るための助成金はカットする方針を早々に固める。そして、そのことは会見では明かさず「延長」とだけ述べる。これではもはや詐欺だが、驚いたのはこのあとだ。
 ここまで感染拡大に歯止めがきかない状態がつづいているなかで、何より必要とされているのはそれを阻止するための具体策だ。しかし、菅首相は「マスクの着用、手洗い、3密回避の徹底を」と述べただけ。それどころか、「わが国に必要なものはポストコロナにおける成長の源泉です」と言い出すと、その後は脱炭素化やマイナンバーカードの普及、デジタル庁の創設、外交、東京五輪などといった所信表明演説でもこってり聞いた話をしはじめ、最重要課題である新型コロナ対応の話題を早々に終わらせてしまったのだ。

コロナ後手後手対応で感染を拡大させても「菅内閣で重要なのは変化に対応するスピード」と自慢
 しかも、開いた口が塞がらなかったのは、こんな話まではじめたことだった。
「2年前に、携帯電話については4割は下げられると講演で申し上げました」
「今回、大手のうちの1社が大容量プランについて20ギガで2980円という料金プランをメインブランドのなかで実現するとの発表がありました。本格的な競争に向けてひとつの節目を迎えたと思います」
 そう。菅首相は昨日ドコモが発表した新プランをわざわざ取り上げ、民間企業による値下げを自分の功績であるかのようにアピールしたのだ。
 そして、野党から要求されてきた支援策や民間サービスの値下げといった人の褌で相撲を取っておきながら、「菅内閣において重要なのは、変化に対応するスピードと国民目線の改革です」と強調したのである。
「Go To」に固執しつづけているせいで混乱を生み、感染拡大阻止のための具体的な政策も打ち出さず、「変化に対応するスピードと国民目線の改革」と言い切る鉄面皮……。そもそも、今回の会見は前述したように国会閉会にあわせておこなわれたものであって、新型コロナ感染拡大についての会見ではない。つまり、菅首相は総理大臣に就任して以来、一度たりとも新型コロナ対応について特化して国民に説明をおこなうという正式な機会を設けてはいないのだ。だが、それも必然だということが今日ははっきりとした。医療現場からいくら悲鳴があがり、「医療崩壊」が現実的になっても、感染拡大を阻止しようという気がこの男にはまるでないのだ。
 このあまりにもひどすぎる態度には絶句するほかないが、しかし、本当に言葉を失ったのは、会見の質疑応答だった。
 当然、本人が語らずとも、菅首相の無責任さを追及する質問が飛び交うに違いない。そう考えていたのだが、幹事社であるTBSと毎日新聞が「Go To」対応や特措法改正の考え、学術会議問題、安倍前首相の「前夜祭」問題といった厳しめの質問をおこなって以降は、「いま、その質問!?」とツッコまずにはいられない話題がつづいていったのだ。

菅首相にGo To問題を一切質問しないマスコミ NHK中継打ち切りのあとにようやく厳しい質問が
 実際、幹事社の毎日新聞につづいて当てられた時事通信の記者の質問は新型コロナワクチンについて。4人目のNHK記者は脱炭素化、5人目の産経新聞記者は安全保障。「海外メディアからの質問も」として当てられた6人目のロイターの記者は経済対策の規模、7人目の日本経済新聞の記者は高齢者の医療費負担増、8人目の共同通信の記者は日米関係。「フリーランスから」として当てられた9人目の安積明子氏は菅首相の説明不足を問うたが、つづく10人目の読売新聞の記者は衆院解散について、だった。
 たとえば「強い危機感を持って対応している」と言いながら「Go To」をゴリ押ししていることの矛盾や、医療現場の医療従事者たちから「看護師不足」「医療崩壊」という言葉が発せられるようになっている問題について、幹事社質問の後に当てられた記者が誰ひとりとして質問しない。しかも、当てられた社はものの見事に政権寄りのメディアばかりで、特筆すべき質問はフリーの安積氏だけ──。安積氏といえば菅氏が官房長官だった時代からよく質問に当てられ、かつ取るに足らない質問ばかりおこなってきた人物だが、きょうは詰めが甘いながらも菅首相の説明不足について質問したことは評価できよう。というか、ここまでの質問は、幹事社のTBS・毎日と安積氏以外、内容も訊き方もヌルすぎるものばかりだったのだ。
 しかも、ここで不思議なことが起こる。読売の質問に菅首相が答えたところでNHKは地上波での中継を打ち切ったのだが、その後、11人目の京都新聞の記者は学術会議問題をめぐってアカデミズムから反発が起こりつづけていることについて、12人目のラジオ・フランスの記者は自民党の二階俊博幹事長が全国旅行業協会の会長であることと「Go Toトラベル」優遇の関係についてという、角度を変えた厳しい質問がおこなわれたのだ。
 ちなみに、京都新聞は菅首相による「パンケーキ懇談会」を欠席した数少ないメディアのうちの1社であり、さらに付け加えれば、菅首相は記者から質問を受けても手元の原稿を読むなどしていたが、安積氏と京都新聞、ラジオ・フランスの記者のときはとくに集中して質問を聞いているようにも見えた。
 これはようするに、NHKの中継が打ち切られるタイミングまでは、フリーの安積氏を除いた社の記者からどんな質問が寄せられるか、ある程度、菅官邸は把握しており、想定問答を用意していたということなのではないか。
 約3カ月ものあいだ正式な記者会見を開かずに説明責任を放棄してきたというのに、いざ会見が開かれても、この茶番劇。「パンケーキ懇談会」のときからわかっていたことではあるが、この国を危機に陥れているのは、国民の健康と安全を守ろうとしない菅首相のみならず、問題を見て見ぬふりをして菅首相の実像をあぶり出そうともしない、記者たちの姿勢なのだ。(編集部)