2020年12月12日土曜日

菅首相のコロナ経済支援打ち切りの狙いは中小企業の淘汰

  菅政権は1日に3000人近くのコロナ感染者が出ているのにも関わらずGo Toとは関係ないとして、3000億円を「Go Toトラベル」に追加投入することを決めました。

 11日、共産党の志位委員長は「Go Toキャンペーン」を直ちに全面的に中止し、医療機関への財政支援を強化することなどを、西村経済再生担当大臣に申し入れました
 医療崩壊に対して橋下徹氏や竹中平蔵氏は、1億人以上の人口を擁する国がどうして僅か500人足らずのコロナ重症者で医療が崩壊するのかと述べていますが、それは医療の実態を知らないものです。
 もしも1000床ほどの病室を確保し、1万人近くの医療スタッフを常時「待機」させておく余裕があれば別ですが、勿論医療機関にはそんな経済的余裕はありません(国家が補償すれば別ですが)。それだけの施設と陣容があっても、経営を維持するためにはすべて当面の対応に回さざるを得ないというのが医療機関の実態であり宿命です。
 現下は3~4日毎にコロナ感染者が1万人ずつ増えているので、日ごろから目一杯の状態にある医療機関がパンクしない道理がありません。それが理解できないのであれば政治家として失格です。
 日本医師会長をはじめ各地の医師会長が、これ以上感染者が増えたら医療機関が持たないからと感染抑止の徹底を繰り返し訴えてからもうかなり経ちますが、いまだに政権はその意味を理解できていないようです。

 それだけではありません。菅政権は見掛けの金額が大きければいいだろうとばかり736兆円の追加経済政策を打ち出しましたが、そのうちコロナ対策費は6兆円に過ぎません。
 それだけでなくコロナ関連については
「雇用調整助成金」の特例措置は来年2月末まで延長のうえ、3月以降段階的に縮減
「持続化給付金」と「家賃支援給付金」1月に終了
・「実質無利子・無担保の融資」は3月末まで延長それ以降は条件を厳しくする)
ことを明らかにしました。
 第3波のコロナ禍は3月やそこらでは収束しないだろうし、収束しても経済全体が立ち直るまでには相当の期間を要します。そんな中で特例措置を次々に打ち切れば、生活困窮者は増え、解雇や雇い止めが広がり倒産や廃業が増えるのは明らかです。

 LITERAが、そうした支援を打ち切って中小企業の淘汰を行うことこそが菅首相の狙いなのだとする記事を出しました。
 これを機会に中小企業の「新陳代謝」を促がし、ただの寄生虫である慢性的な赤字企業を淘汰するという、菅氏のブレーンであるデービッド・アトキンソン氏の年来の主張を実現させようとするものと述べています。
 菅首相はかつて講演で「私はアトキンソンさんの言うとおりにやっている」と語っているのですからその通りなのでしょう。冷酷無惨というしかありません。
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菅首相のコロナ経済支援打ち切りの狙いは中小企業の淘汰! 
     ブレーンの「中小は消えてもらうしかない」発言を現実化
                              LITERA 2020.12.11
 新型コロナの感染が拡大するなかで菅政権が閣議決定した追加の経済対策は、まさしく菅義偉首相の「自助」という方針が色濃く反映されたものだった。本サイトでも既報で指摘したように、73.6兆円と数字だけは威勢はいいが、そのほとんどはデジタル化の推進やマイナンバーカードの普及促進などといった成長戦略に費やされ、新型コロナ感染防止策はたったの6兆円だったからだ。
 しかも、今回の追加経済対策でもっとも菅首相の「自助」思想が全開となっているのが、国民の生活を支えるさまざまな支援策の打ち切り、要件の厳格化だ。
 たとえば、「雇用調整助成金」の特例措置は〈来年2月末まで延長のうえ、3月以降、段階的に縮減〉と明言。「延長」といえば聞こえはいいが、実態はコロナ感染拡大がつづくと予想される時期で縮小させるということ。さらに、今回の追加経済対策では「持続化給付金」と「家賃支援給付金」についての言及はなく、来年1月に終了する。
 また、実質無利子・無担保の融資についても来年3月末までの延長が発表され、それ以降は新たな融資制度が設けるというが、日本経済新聞にはこんなことが書かれていた。
〈民間の金融機関を通じた実質無利子・無担保の融資制度は21年度からは条件を厳しくする。政府は金融機関による融資を保証しつつ、融資先の企業が健全な経営体制かどうかを監視する仕組みにする。〉(日本経済新聞8日付)
 帝国データバンクによると、11月に全国で倒産した企業数は563件。じつはこの数字、11月としては民事再生法が施行された2000年以降でもっとも少ないものだ。その要因を、帝国データバンクでは〈実質無利子無担保の融資や雇用調整助成金などの資金繰り支援策で倒産が少なくなっている〉と分析している(NHKニュース8日付)。逆にいえば、支援策の打ち切りや融資条件の厳格化によって、倒産件数が増加することは目に見えているのだ。
 実際、東京商工リサーチが10月に公開した倒産状況の分析では、〈全体では倒産は落ち着いているが、零細企業では倒産や廃業が増えている。倒産がより規模の大きい企業にも広がり、増勢をたどる可能性が高まるなかで、次の支援の一手をどうするかが重要になっている〉と指摘。また、全国労働組合総連合も「雇用調整助成金」の特例措置について「措置が終われば、解雇や雇い止めが広がりかねない」と懸念を示している(東京新聞11月16日付)。

財政審の「持続化給付金の期限延長は新陳代謝を妨げる」という提言を受け入れた菅首相
 現在の感染拡大の状況から考えても、とりわけ中小・零細企業が大打撃を受けることは必至で、春以降の手厚い支援が必要なのははっきりとしている。にもかかわらず、菅首相は倒産・廃業や解雇、雇い止めを止めるための支援策を打ち出そうとはしないのだ。
 しかも、これはたんに菅首相が支援をケチっているというような問題ではない。むしろ、支援を打ち切って中小企業の淘汰をおこなうことこそが菅首相の狙いなのだ。
 現に「持続化給付金」は、10月26日に開かれた財政制度等審議会の歳出改革部会で「事業が振るわない企業の長い延命に懸念する」「人材の流動化やM&A(合併・買収)が阻害され、経済成長につながらない」などという意見が噴出し、予定通り来年1月までで終了すべきという意見が大勢を占めたといい(日本経済新聞10月26日付)、会合後に部会長代理である土居丈朗・慶應義塾大学教授もこう述べていた。
「期限をずるずると先延ばしすると、本来はよりよく新陳代謝が促される機会が奪われてしまう
 新型コロナという未曾有の“災害”の影響を受け、生活苦や先行き不安で自殺者が増加するなかで、その国民の生活を守るための支援策を「新陳代謝が促される機会が奪われてしまう」と口にする──。土居教授といえば、政府税制調査会でも、コロナによる景気悪化のために減税措置をとるべきという意見が高まるなかで「消費減税をすることによって格差拡大を助長するということをまず国民にしっかりと訴えるべき」などというトンデモ発言をおこなった人物だが、この「新陳代謝」発言にも新自由主義的な弱者切り捨ての思想がありありと見える。
 だが、この財政制度等審議会による「持続化給付金」打ち切りの提言を政府が採用するかどうかは「不透明」だとされていた。“来年に衆院選を控えるなかで打ち切りは困難”というのがその理由だ(「日経ビジネス」11月9日号)。
 しかし、菅首相はこの提言を受け入れ、「持続化給付金」打ち切りを決め。菅首相は政権維持のため衆院選に神経を尖らせていると言われているが、その衆院選に悪影響をおよぼしかねないにもかかわらず、だ。

支援策打ち切り、融資条件厳格化は、菅首相が心酔するD・アトキンソンの影響か
 さらに、前述したように、菅首相は「持続化給付金」打ち切りのみならず、企業倒産を防ぐために設けた「家賃支援給付金」の打ち切りや実質無利子・無担保融資の条件厳格化を決めたが、これも、菅首相が「心酔」していると言われる、例のあの人物の“教え”が頭にあるからだろう。
 その人物とは、竹中平蔵氏と並ぶ菅首相のブレーンで、「成長戦略会議」のメンバーにも選ばれた、小西美術工藝社社長であるデービッド・アトキンソン氏。アトキンソン氏はゴールドマン・サックス証券の元アナリストだが、菅首相の入れ込みようは相当で、講演では「私はアトキンソンさんの言うとおりにやっている」と発言しているほど(朝日新聞9月19日付)。
 そのアトキンソン氏の主張こそが、“中小企業の淘汰”なのだ。
 アトキンソン氏といえば“最低賃金の引き上げをおこなうべき”という主張で知られ、格差是正や貧困問題の観点からもその主張に肯首しそうになるものだ。しかし、アトキンソン氏の主眼は、最低賃金の引き上げによって中小企業を淘汰することにある。たとえば、アトキンソン氏はこんな発言をおこなっている。
「人口減少の観点からして、小規模事業者の中でも中堅企業にはならない、なろうとしない、慢性的な赤字企業はただの寄生虫ですから、退場してもらったほうがいい」
「中小企業は、小さいこと自体が問題。ですから、中小企業を成長させたり再編したりして、器を大きくすることをまず考えるべきです。それができない中小企業は、どうすべきか。誤解を恐れずに言うと、消えてもらうしかありません」(「プレジデント」5月29日号)
 雇用を守ることを最優先すべきこのコロナ禍にあって「ただの寄生虫」「消えてもらうしかない」と言い切ることには背筋が凍るが、恐ろしいことに、菅首相はこうしたアトキンソン氏の考えを政策に反映させ、実行に移そうとしているのだ。
 実際、閣議決定された追加経済対策のなかの中小企業の支援策は、事業転換が条件。わざわざ〈淘汰を目的とするものではない〉と記しているが、体力がないなかでの事業転換は容易なものではなく、〈人材やノウハウの乏しい中小が取り残される懸念がある〉という指摘も出ている(毎日新聞9日付)。

医療に予算を投じず、この状況で「インバウンドの回復」を打ち出す菅首相の異常
 さらに、アトキンソン氏は観光業こそが日本の成長戦略を担うという考えであり、菅首相が官房長官時代の昨年末、「日本各地に世界レベルのホテルを50カ所程度新設する」と言い出した際も、安倍官邸では「アトキンソン案件」と呼ばれていた(前出・朝日新聞9月19日付)。菅首相が感染拡大中でも固執しつづけ、中小企業の支援策を軒並み打ち切り決定する一方で来年6月までの延長を決めて3000億円もの追加予算をつけようとしている「Go Toトラベル」も、ある意味「アトキンソン案件」とも言えるものだが、さらに追加経済対策では〈インバウンドの段階的回復に向けた取組を進める〉とまで明言している。
 国内の医療提供・検査体制が危機的状況で、欧米でも感染拡大に歯止めがきかない状態にあるというのに、肝心の感染拡大防止策にわずかな予算しか付けないばかりか、まるで現実味のないインバウンドに力を入れる──。もはや支離滅裂と言うほかないだろう。
 繰り返すが、コロナの影響による生活苦で自殺者が増加するなかで、最優先すべきは国民の暮らしと命を守ることだ。だが、菅首相が打ち出した経済対策は、「国民の命と暮らしを守る安心と希望のための総合経済対策」と銘打ちながら、その実態は中小企業の倒産・廃業、解雇、雇い止めを推進しようという「国民を絶望に追い込むための経済対策」でしかないのである。菅首相のこの恐ろしい狙いに、国民は気づかなくてはならない。(編集部)