しんぶん赤旗が、「政治考ーGo To固執で支持急落 早くも行き詰まり 菅政権」とのタイトルで、菅政権3ヶ月を総括する記事を出しました。
ようやく安倍政権が終わり、次にはいくらかマシな政権が出来るかと期待されたのですが、それは出だしから学術会議会員任命拒否という驚くべき本性を顕わして無惨にくだかれました。安倍政治ほどの悪を極めたものはよもや再現しないだろうと考えたのは甘かったのでした。
ただ直近の世論調査(毎日新聞)では内閣支持率は40%まで急落しました。もしも第3波のコロナ対策が現行のままであればさらに30%台に落ちることでしょう。
そうなれば今は沈黙を続けている自民党議員も、さすがに正月明けには頭を冷やして何らかの動きが出てくるのではないでしょうか。
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政治考
Go To固執で支持急落 早くも行き詰まり 菅政権
しんぶん赤旗 2020年12月13日
報道各社の世論調査で菅義偉内閣の支持率が急落。同政権の新型コロナウイルス感染症対策についての評価は軒並み、「評価しない」が優勢に転じました。首相官邸周辺からは「ここまで落ちるとは思っていなかった。不支持が12ポイント以上も上昇した調査もある。これ以上下がると危ない」という声が漏れてきます。いまや“菅政権による人災”の様相となってきた感染拡大の危機。その中で、いま政局はどう動こうとしているのか。
経済も黄信号
自民党議員の一人は「国民に努力を呼びかけるだけで、政府の対策が示されていない。しかも『Go To事業』が感染を拡大させていることは明らかで、批判が拡大するのは当然だ。経済活動優先というが、これでは経済活動そのものができなくなる」と述べます。
「加えて年末に向け失業者がさらに増える。自民党にはその声が聞こえていない」と無為無策を認め、「次の調査でも止まらない。さらに下がる」と表情を曇らせます。
共同通信の調査ではコロナ対策について「評価する」が11・8ポイント減って37・1%に。「評価しない」は12・6ポイント上がって55・5%になりました。これは安倍前政権の末期(今年7月)に「評価する」35・7%、「評価しない」59・1%となったときに近い水準です。
安倍前首相は内政・外交でも、コロナ対策でも行き詰まり、体調悪化の中で退陣に追い込まれました。「安倍政治の継承」を掲げ当初7割近い「支持率」で出発した菅政権も、発足3カ月を待たずにコロナ対策で行き詰まりがあらわになっています。
首相を支持しない「理由」として、「指導力がない」が11月の8・8%から25・3%へと16・5ポイントも増加。その最たるものが「Go To事業」への固執であることはあきらかです。
専門家も要求
「『Go Toトラベル』が感染拡大の契機になっている」として専門家も医療界も一致して「事業」の中止を要求。政府分科会もいまや「事業の停止」を提言しています。
日本共産党の志位和夫委員長は11日、菅首相に対し「事業」をただちに中止するよう申し入れました。応対した西村康稔経済再生担当相が「来週中ごろまでに判断」としたのに対し、「それでは感染拡大の影響が、医療体制の薄くなる年末年始に出てきて、大変なことになりかねない」と厳しく批判しました。
ところが菅首相は同日、インターネット番組で「いつの間にか『Go To』が悪いことになった。移動では感染しないと提言もいただいた」などと破綻が明白になった「Go To」擁護論をくり返し、中止は「考えていない」と述べました。
これを見た別の自民党議員の一人は「移動中はともかく、行った先で感染を広げているのは確かだ。『Go To』はいったん止めるべきだ」と述べます。
無策・金権 政局は風雲急 野党連合政権で命・暮らし守れ
自民党関係者の一人は「これまで感染の少なかった地方でも異常な増え方だ。党内では『緊急事態宣言を出すべきだ』という声も増えているが、経済活動と『Go To』を止めることになり、首相、幹事長とぶつかる」と指摘します。
「Go To事業」の旗を振ってきたのは菅首相と二階俊博幹事長。二階氏は全国旅行業協会会長です。事業は自身の利権にも深く関わっています。
最高権力者が「Go To」停止の最大の障害となる構図で、「公明党も赤羽一嘉国交相が『Go To』の担当であり止められない」との指摘もあります。「止めれば失策を認め責任論になる」(関係者)という深刻なジレンマがあります。
経済対策逆行
各地の医療機関や老人施設、障害者施設で集団感染(クラスター)が次々と発生し、医療崩壊の危機の重大な要因となっています。こうしたリスクの高い施設への社会的なPCR検査の徹底、感染拡大地域への大規模集中検査の実施も緊急の課題となっています。
距離の維持やマスクの着用、手指の消毒、人との接触回避など感染経路対策を強めるのは当然ですが、それに加えて無症状感染者の発見・保護・追跡という感染源対策を組み合わせ、強力に推進することが求められます。
医療に詳しい自民党議員の一人は「リスクの高そうなところに検査をかけ、感染者を隔離していくのは基本だ」と指摘。「検査対象を絞ればそれほどカネはかからない。ブラジルでも何十万と検査しているのに、日本がその10分の1では通用しない。よほどそういうところを削ってきたということだ」と述べます。「コンタクトトレーシング(接触者追跡)も、これだけ感染が増えると今の保健所体制ではできない。スキームは崩壊している。政策の責任だといわれればその通りだ」
浮き彫りになっているのは、保健所を半減させるなど医療・衛生体制を脆弱(ぜいじゃく)にしてきた新自由主義の害悪です。ところが菅首相が8日に決定した追加経済対策は、肝心のコロナ対策はわずかで、中小企業の再編促進や銀行の業務範囲の見直しなど、新自由主義的政策が盛り込まれる逆行ぶりです。
首相にも責任
安倍晋三前首相の「桜を見る会」の前夜祭参加者への参加費補填(ほてん)問題で、検察の捜査が秘書から安倍前首相本人に及ぼうとしていることも自公政権全体に大きな衝撃を与えています。
ある議員は「捜査が安倍氏自身にいくとは」と驚きを見せ、「『安倍1強』といわれる状況に動きが出てきた。挙党体制にも陰りだ」と漏らします。
「森友問題では人も死んでいて、『桜』以上にひどい問題だ。加計問題も残っており、秋元司元内閣府副大臣のカジノ汚職、河井克行元法相の選挙買収事件も積み残している」としたうえ、「吉川貴盛元農水相、西川公也内閣官房参与の金銭疑惑も出てきている。難題だ」と語ります。
「桜を見る会」をめぐっては、菅首相は安倍前首相の虚偽答弁をくり返し追認してきたうえ、自らも公文書の隠蔽(いんぺい)・廃棄など疑惑隠しに関わってきたのかどうか、問われています。
また吉川氏は9月の自民党総裁選で菅選対事務局長を務め、二階幹事長の派閥の事務総長を務めた人物。自民党関係者の一人は「隠れ菅派だ」と明言します。西川氏も菅政権発足直後に、内閣官房参与に再任されたばかり。吉川、西川両氏の疑惑には関連性も疑われています。
菅首相の周辺で相次ぐ金銭疑惑に、首相自身の真相解明に向けた責任も厳しく問われます。
高齢者いじめ
前週から持ち越しになっていた高齢者の医療費自己負担の2倍化方針を決定(10日)したことに、新たな批判が強まっています。
国民の厳しい批判を恐れる公明党は、対象範囲を絞る案を提起し、菅首相との「対立」を演出。実施時期を来年の総選挙と2022年の参院選挙後の同年10月とすることなどを含め露骨な党略的対応を示しました。
当初、菅首相は2倍化の対象範囲を「年収170万円以上」とする広い案で譲らない姿勢といわれましたが、9日に公明党の山口那津男代表とのトップ会談を突然開催。「年収200万円以上」とすることで合意しました。
自民党関係者は「公明党は首相の重要な権力基盤だ。支持率下落もあり妥協せざるを得なかったのだろうが、交渉していた政調会長に対しては『絶対に譲るな』と指示を出しながら、総理大臣が自分で乗りだして妥協するのは通例ではない。周辺もあきれている」と解説します。
コロナ危機のもとで、病院削減をはじめ社会保障削減路線に固執する政治の矛盾が、いたるところで噴出し政権は動揺しています。
コロナ無策と逆行に加え首相の説明拒否など政治姿勢への批判、噴出する政治とカネの問題など、政局は風雲急を告げています。
自民党内からは「安倍1強が崩れ、来年秋の総裁選や総選挙に向け、自民党内で主導権争いが強まると、より不安定になり危ない」という声も出されます。
政治情勢の急変の根本には、市民と野党の共闘が「安倍政治」を追い詰めてきたたたかいがあります。1年以内に迫った総選挙での政権交代、野党連合政権実現で、国民の命と暮らしを守れの声を、草の根から新たに大きく広げるときです。 (中祖寅一)