2020年12月10日木曜日

政府が追加経済対策73兆円 しかしコロナ拡大への危機感が見えない

  政府が「勝負の3週間」と呼んだ期間は、9日で既に2週間が経過しました。しかしコロナの感染拡大は一向に収まる気配を見せていません。NHK・NW9の担当アナウンサー(MC)も、さすがに「政府は何の見解を出していませんが、対策を強化するような考えはないのでしょうか(要旨)」と述べていました。

 政府がコロナ拡大の第3波をどう見ているのかがさっぱり分かりません。

 東京都の例では、65歳以上の高齢者は、11月は1348人で「第2波」がきていた8月の734人と比べ、18倍にのぼりました。若い世代が中心だった夏とは異なり、このところ中高年にも感染が広がっています。65歳以上の高齢者の感染者全員に占める割合も8月が9%だったのに対し、11月は137%で、今月は9日までで157%に上昇しています。
 これは死亡者の増加に直結するもので、北海道、大阪と同様に、東京都も緊急事態に向かっているわけです。
 この件を含めて感染拡大で直接的に被害を受けるのは医療機関です。たださえ医療機関は第1波で大打撃を受け上にその後の受診の自粛で経営も悪化しているのに、いまだに給付金はまだ2割程度しか渡っていません。もうこれ以上の患者の増加には耐えられないというのがウソ偽りのない実態です。
 これは医師会が繰り返し強調してきたことですが、そののことに政府が懸念を示しているということも伝わってきません。
 
 しんぶん赤旗が9日、「コロナ拡大 危機感どこに 政府が追加経済対策73兆円」などとする二つの記事を出しました。政府は8日、追加経済対策を決定しました。その額は公称73兆円ですが、肝心のコロナ対策には6兆円に過ぎず、感染拡大防止の決め手になるPCR検査の抜本的拡大に必要な全額国費の枠組みは盛り込みませんでした。
 共産党の小池書記局長は8日、この「追加経済対策」について「医療や暮らしの危機に対する、緊急の支援策になっていない」と厳しく批判しました
 LITERAも「菅首相の追加経済対策が“自助”丸出し! コロナ感染対策は10分の1以下、~ 」とする記事を出しました。
 日刊ゲンダイも「菅政権73兆円補正は国民の希望と裏腹 コロナ対策8%だけ」とする記事を出しました。
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コロナ拡大 危機感どこに 政府が追加経済対策73兆円
                       しんぶん赤旗 2020年12月9日
 政府は8日、臨時閣議で新型コロナウイルスの感染拡大を受けた追加経済対策を決定しました。感染再拡大の重大局面にもかかわらず、PCR検査の抜本的拡大に必要な全額国費の枠組みは盛り込みませんでした。受診控えなどで経営難に陥った医療機関への減収補てんや、持続化給付金の再支給など、家計と事業者への支援も抜け落ちています
 政府は経済の好循環のためと称して「Go Toトラベル」を来年6月末まで延長するなど、感染防止に逆行する施策を盛り込みました。
 追加経済対策の事業規模は73・6兆円で、国費や財政投融資を合わせた財政支出は40兆円。このうち国費は30・6兆円で、2020年度第3次補正予算と21年度当初予算で確保する方針です。事業の内訳は、感染拡大防止が6兆円、コロナ後に向けた経済構造の転換が51・7兆円、「国土強靱(きょうじん)化」が5・9兆円。
 直接の新型コロナ対応を行う医療機関向けの「緊急包括支援交付金」を拡充しますが、同交付金の交付は遅れており、多くの医療機関が“すでに借金漬けだ”と悲鳴をあげています。
 中小企業の業態転換や事業再編を促す事業再構築補助金を創設します。また、合併や経営統合を行う地域金融機関に対して資金交付制度を創設します。地域金融機関が減って競争が失われ、貸出金利の上昇や貸し渋りを招く恐れがあります。デジタル化の加速に向けた1兆円超の関連予算も盛り込み、大企業を支援します。
 低所得のひとり親世帯などに対しては、5万円の「臨時特別給付金」を年内に再支給します。当事者や支援団体が求め、日本共産党や立憲民主党など野党が国会に法案を提出して実現を迫っていたものです。


医療・暮らし 緊急事態に対応せず 政府「追加経済対策」 
小池書記局長が会見
                       しんぶん赤旗 2020年12月9日
 日本共産党の小池晃書記局長は8日、国会内での記者会見で、政府が同日決定した新型コロナウイルス対策の「追加経済対策」について、「医療や暮らしの危機に対する、緊急の支援策になっていない」と厳しく批判しました。
 小池氏は、「いま、コロナ感染の急拡大により、全国各地で医療崩壊の危機が進行している。多くの国民、中小零細事業者からは、『年を越せない』という悲鳴が上がっている。政府が今日発表した『追加経済対策』は、現実に起こっているこうした事態に対応するものとなっていない。たとえ第3次補正予算が成立しても、現場にそれが届くのは、早くても3月以降であり、緊急の支援策にはならない7兆円も残っている予備費については、『適時適切な執行』というだけで、まともな活用策が示されていない」と批判しました。
 政府は、「追加経済対策」の事業規模は73兆円で、2020年度第3次補正予算と21年度本予算には30兆円を計上するとしています。
 小池氏は「その多くは『ポストコロナ』に向けた基金の創設とか、『国土強靱(きょうじん)化』の名による公共事業の上積み、そして『Go To』事業の延長などだ。肝心の検査・医療や暮らし・営業支援の予算はわずかなものにすぎない。いま求められているのは『ポストコロナ』の対策ではなく、現実のコロナ感染の広がりに対する緊急対策だ」と指摘しました。
 政府は、「経済回復はいまだ途上」としています。しかし、足もとの感染状況を見れば、7~9月に多少のプラスとなった成長率が、今後再びマイナスとなる恐れもあります。小池氏は「感染拡大を食い止めるとともに、収束までの期間の暮らしと営業を守る対策なしには、『いまだ途上』どころか、現状を維持することもままならない。政府には危機感がまったく欠如している。まともなコロナ対策なしに『ポストコロナ』を語る、『砂上の楼閣』のような経済対策だといわざるを得ない」と厳しく批判しました。
 さらに小池氏は、「中小企業に業態転換や事業再編を促すとか、銀行の業務範囲規制の見直しとか、マイナンバーカードの普及促進など、コロナ危機に便乗して、いっそうの新自由主義的政策の推進を図ろうとしていることも重大だ」と述べました。そして、「日本共産党は、政府の『追加経済対策』の問題点をただすとともに、医療・検査の抜本的拡充、暮らしと営業の支援のために、全力をあげる」と表明しました。


菅首相の追加経済対策が“自助”丸出し! コロナ感染対策は10分の1以下、大半が新自由主義経済政策に…坂上忍も「バランスおかしい」
                             LITERA 2020.12.09
 これが「自助」を掲げる菅義偉の正体だ。昨日8日、菅政権は追加の経済対策「国民の命と暮らしを守る安心と希望のための総合経済対策」を閣議決定したが、それはハリボテの数字で虚飾された上、事実上、国民切り捨て政策が並んでいたからだ。
 まず、メディアでは「追加経済対策に73.6兆円」と報じられているが、そのうち約7割にあたる51.7兆円と大半を費やすのは、デジタル化の推進やマイナンバーカードの普及促進、脱炭素、ポスト5Gの開発強化などといった中長期の成長戦略である「ポストコロナに向けた経済構造の転換・好循環の実現」に対して。そのなかには、「地方移住・住宅購入者への最大100万円ポイント付与」といった「いまやるべきことなのか」と疑わざるを得ないものから、「インバウンドの段階的回復に向けた取り組み」や「国が特定有人国境離島地域に指定している地域への旅行支援策」など、むしろ感染拡大期に実行すべきではないものまで含まれている。
 その一方、喫緊の最重要課題となっている病床の確保をはじめとする医療提供体制の強化や、検査体制の充実、時短営業に応じた店舗への支援金といった「新型コロナ拡大防止策」に充てられているのは、たったの6兆円にすぎない。
 しかも、この73.6兆円というのは民間投資などを含んだ「事業規模」でしかなく、「財政支出」の額は約40兆円で、そのうち国費は30.6兆円だ。また、そこには来年度予算案の約10兆円も含まれている上、経済対策には使い道が決まっていない予備費10兆円まで加算されている。
 つまり、73.6兆円と威勢のいい数字はかさ上げされたものであるばかりか、緊急に対策が必要な感染拡大防止にはほとんど充てられず、菅首相が舵取り役となっている経済政策に費やされるのだ。
 今年の春の段階から再三再四、医療提供体制の脆弱さが指摘され、とりわけ看護師不足はコロナ前から深刻な問題だったにもかかわらず、待遇改善のための抜本的施策を打たなかったために、ついには自衛隊の看護官派遣にまで至っている。だが、この危機的状況のなかでも、「地方移住者して住宅購入すれば最大100万円分のポイント付与」などという緊急性のない政策に予算を充てようというのである。
 菅首相は4日の会見で「医療機関、高齢者施設などへのコロナ対策について最大限の支援をおこなう」と述べていたが、一体、これのどこが「最大限」なのか

雇用調整助成金は縮減、持続化給付金と家賃支援給付金には言及なし
 こうした菅首相の姿勢に対しては、昨日8日放送の『バイキング』(フジテレビ)でも、坂上忍がこのように怒りをあらわにしていた。
「もう『最大限』とかそういうことではなく、まず医療関係の環境を良くするっていうのが(必要)」
「あの人(政治家)たちの金じゃなくて、税金なわけ。この状態でどこに使って納得するかと言ったら、医療関係。経済を無視しろなんて言ってない。どう考えてもあのバランスはおかしすぎる
 また、政権寄りで知られるコメンテーターのミッツ・マングローブでさえ「具体的な数字みたいなのを提示されないと、人間のモチベーションって正義だけで保たれない。正義というか、ほんとにバカバカしくなってきちゃうってことが絶対にある」と発言。医療従事者の“正義感”に頼り切っている政府の態度に対し、こうした坂上やミッツのような意見を多くの国民が持っていると思うが、それも今回、菅首相は正面から裏切ったのだ。
 だが、今回の追加経済対策でもっとも菅首相の自助思想が全開となっているのが、国民の生活を支えるさまざまな支援策の打ち切りだ。
 たとえば、「雇用調整助成金」の特例措置は〈来年2月末まで延長のうえ、3月以降、段階的に縮減〉と明言。「延長」といえば聞こえはいいが、実態はコロナ感染拡大がつづくと予想される時期で縮小させると言うのである。
 さらに、今回の追加経済対策では「持続化給付金」と「家賃支援給付金」についての言及はなく、昨日、梶山弘志経産相が閣議後会見でこれらの申請期限の延長を発表。しかし、その延長というのは来年1月15日が締め切りだったのが1月末になるだけだ。
 東京大学の研究チームが感染リスクが高まると指摘した「Go Toトラベル」は、一時中止どころか、政府の新型コロナ対策分科会に諮問することもなく来年6月末までの延長を決め、予備費から3000億円を追加投入する方針を示しながら、今後、さらに厳しさが増していくことは間違いない国民の雇用や生活を支える支援策は早々に打ち切る──。政策が完全に状況と逆行しており、とてもじゃないが正気の沙汰とは思えないのだ。
 そればかりか、「持続化給付金」の打ち切りからも明らかなように、菅首相は新型コロナを利用した“中小企業の淘汰”をも目論んでいる。この問題については別稿で詳しく取り上げるが、ともかく、この経済対策は「国民の命と暮らしを守る安心と希望のための」ものではなく、菅首相がいよいよ本格的に国民に「自助」を迫る内容だということに国民は気づかなくてはならない。(編集部)


菅政権73兆円補正は国民の希望と裏腹 コロナ対策8%だけ
                           日刊ゲンダイ 2020/12/09
 事業規模約73.6兆円のうち、新型コロナの感染防止には6兆円程度 ―。8日、菅政権が閣議決定した追加経済対策の内訳をみると、絶望的になる。
〈国民の命と暮らしを守る安心と希望のための総合経済対策〉とうたいながら、感染防止に使うのはたった8%。事業規模51.7兆円と、大半は「ポストコロナ」に費やすのである。
 中には、所有者に最大5000円分のポイントを還元するマイナンバーカード普及策や、バーチャル株主総会の実現など「不要不急」な対策も目立つ。看護師不足は深刻で、コロナ患者を受け入れた病院ほど大幅減益に苦しんでいる。赤字に転落し、冬のボーナスも満足に払えない病院も続出中だ。なぜ、逼迫する医療機関を救うために予算を投じないのか
 最新の共同通信の世論調査では、感染防止と経済活動のどちらを優先すべきかとの設問に「どちらかといえば」を含め76.2%が感染防止を選んでいる

■政府が掲げる「希望」と国民の希望は真逆
「政府が掲げる『希望』と国民の希望は真逆です。予備費から3000億円も『Go To トラベル』延長に充て、人の移動を促す一方、医療体制の確保は交付金だけで、あとは自治体任せ。そもそも臨時国会を閉じたため、対策を裏付ける今年度3次補正予算の成立は、来年1月18日召集予定の通常国会を待つしかない感染対策は時間との闘いなのに、危機感もスピード感もない政権のせいで無事に正月を迎えられるか心配になります」(経済評論家・斎藤満氏)
 自助おじさんの菅首相に「公助」を求めるだけムダなのか。

年明け早々マイナス成長に転落
 新型コロナの感染再拡大で、日本経済は年明けに再びマイナス成長に転落する恐れが大きく、菅首相は早くも正念場だ。
 内閣府が8日発表した今年7~9月期の実質GDP(国内総生産)改定値では、GDPの過半を占める個人消費は前期比5.1%増だが、飲食店などへの時短要請で、一年で最も盛り上がる12月の消費の見通しは暗い。設備投資も2.4%減で「業績悪化で投資絞り込みが続く」(第一生命経済研究所)とされる。
 政府の73.6兆円の追加経済対策も「GDP押し上げ効果は期待しない方がいい」(農林中金総合研究所)というからお手上げ。実質GDPは年明け早々に再びマイナス成長に陥り「二番底」にはまる公算が大だ。