植草一秀氏が、「桜」前夜祭に関する安倍首相資金管理団体の事件は、管理団体が前夜祭の収支を把握しながら記載しなかったもので、
・安倍氏事務所の支出は選挙区の有権者に対する寄附行為である
・従って明白に公職選挙法に違反するので、まずは秘書の逮捕が必要不可欠で家宅捜索を
行い、公判請求して公判廷で事実を明らかにする必要がある
と述べました。
しかしながら現実には第一秘書に対する「略式起訴」で終わりそうです。
検察はかつて民主党を衆院・参院の第1党に導いた小沢一郎氏を追い落とすために、まず「西松事件」をデッチあげ、それに失敗すると次に「陸山会事件」をデッチあげました。それは体制側の政治権力を小沢氏に奪われることを阻止しようとしたもので、体制側の意向を反映したものでした。
植草氏は、西松事件と陸山会事件の概要を簡単に説明しています。
その中で「悪徳ペンタゴン」が出てきますが、それは植草氏が命名したもので、政治屋・特権官僚・大資本・米国・御用メディアの五者の連合体のことです(米国国防総省の五角形の本部庁舎になぞらえたもの)。
添付した日刊ゲンダイの記事を併せ読むと、検察が体制側には甘く反体制側には極めて厳しく対応する存在であることが良く分かります。それは検察が、立場の弱い人間を「人質司法」で無理やりウソの自供に追い込むやり方を採っているのを見ただけで納得できます。
植草氏のブログと併せて、日刊ゲンダイの記事「『秘書の略式起訴』では犯罪者天国 ~ 」を紹介します。
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安倍秘書逮捕強制捜査公判請求不可欠
植草一秀の「知られざる真実」 2020年12月 5日
ダブルスタンダードという言葉がある。言葉の意味をしっかりと捉える必要がある。
2009年3月3日、小沢一郎民主党代表の公設第一秘書大久保隆規氏が突然逮捕された。
西松建設関連の政治団体である未来産業研究会、新政治問題研究会からの寄附を事実通りに政治資金収支報告書に記載して提出したことが、「虚偽記載」にあたるとの容疑だった。
政治資金規正法違反容疑での逮捕だ。
検察の主張は二つの政治団体に実体はなく、西松建設の名を記載しなければ「虚偽記載」になるというものだった。
当時の小沢一郎氏は民主党代表。2009年は政権交代をかけて衆議院総選挙が実施される年だった。
小沢一郎氏は2006年4月に民主党代表に就任した。前原誠司氏が偽メール問題の処理を誤り、民主党は解党の危機に瀕した。火中の栗を拾ったのが小沢一郎氏だ。
小沢一郎氏が民主党代表に就任するや、民主党は奇跡の大躍進を遂げた。2007年参院選で勝利して参議院第一党の地位を確保した。
2008年民主党代表選にかけて、小沢氏を代表の座から引きずり降ろそうとするメディアの激しい攻撃が展開されたが、小沢氏は攻撃をしのいだ。
このなかで2008年9月に麻生太郎内閣が発足した。
麻生氏は内閣官房副長官に警察出身の漆間巌氏を起用した。日本の秘密警察国家化はこのときから本格化した。
私は2009年1月16日付ブログ記事 「手段を選ばぬ「悪徳ペンタゴン」次の一手」
https://bit.ly/37BIPgT に次のように記述した。
「検察当局が西松建設の裏金疑惑解明に動き出した。「悪徳ペンタゴン」による政権交代阻止活動の一環としての行動であるとの見方が存在する。
日本の政治を「悪徳ペンタゴン」から「一般国民の手」に取り戻す、千載一遇のチャンスである。「悪徳ペンタゴン」はあらゆる手段を用いて、本格的政権交代阻止に全力を尽くすと考えられる。あらゆる工作活動の本質を洞察して粉砕(ふんさい)し、本格政権交代を成し遂げなければならない。」
私は、麻生内閣が西松建設問題を材料に小沢一郎氏攻撃を仕掛けることを予測したのだ。
3月3日の大久保氏逮捕は、その空前絶後の不正冤罪ねつ造事件がさく裂したもの。
小沢氏の事務所は二つの政治団体からの寄附を事実通りに収支報告書に記載して報告していた。これを「虚偽記載」だとして公設第一秘書を突然逮捕したのだ。
まったく同じ収支報告をした国会議員の資金管理団体が10以上存在した。二階俊博氏の資金管理団体も同じ事務処理を行っていた。
この問題について漆間巌官房副長官は「この問題は自民党には波及しない」と発言した。
2010年1月13日の大久保氏事件第2回公判に西松建設元取締役総務部長の岡崎彰文氏が証人として出廷した。岡崎氏は二つの政治団体には事務所も専従職員も存在し、政治団体としての実体があることを証言した。この瞬間、2009年3月3日の大久保氏逮捕は空前絶後の不当冤罪逮捕であることが確定した。
これが西松事件の真相である。
窮地に追い込まれた検察は、大久保氏事件第2回公判の2日後の2010年1月15日に、大久保氏に加えて小沢氏元秘書の石川知裕衆議院議員、池田光智氏の3名を別件で逮捕した。
逮捕容疑は2004年10月に代金決済が行われ、2005年に移転登記が完了した世田谷区所在不動産の取得にかかる収支報告が2005年収支報告書で行われたことが「虚偽記載」にあたるというものだった。
小沢氏事務所は不動産取得の事実を事実通りに収支報告書に記載して報告している。これを検察は「虚偽記載」だと決めつけて元秘書3名を逮捕した。
しかし、この事件の公判で、商法と会計学の専門家は法廷で、小沢氏事務所の収支報告が法令上、もっとも適切なものであることを証言した。
これに対して、安倍首相資金管理団体の事件ははるかに悪質である。
収支を把握しながら記載しなかった。安倍氏事務所の支出は選挙区の有権者に対する寄附行為である。明白に公職選挙法に違反するもの。
まずは、秘書の逮捕が必要不可欠。家宅捜索を行うべきことも当然だ。
当然のことながら、公判請求して公判廷で事実を明らかにする必要がある。
西松事件、陸山会事件と比較すると、これ以上のダブルスタンダードが存在しないことが鮮明に浮かび上がる。
(以下は有料ブログのため非公開)
「秘書の略式起訴」では犯罪者天国 逃げ回る安倍 ワルがのうのうの世も末 スットボケ菅
日刊ゲンダイ 2020年12月4日
(記事集約サイト「阿修羅」より転載)
7年8カ月もの長期政権の終焉から、3カ月足らず。こんな短期間で歴代最長記録を塗り替えた前首相が、東京地検特捜部から呼び出しを受けるとは前代未聞だ。
「桜を見る会」前夜祭の費用補填を巡り、特捜部は安倍前首相の公設第1秘書を立件する方針を固めた。安倍本人にも任意の事情聴取を要請したという。
安倍は3日、聴取要請について「聞いていない」と国会内で記者団にシラを切ったが、どうせ聴取にも「秘書のせい」で押し通すに違いない。
布石はもう打ってある。大手紙に「安倍氏周辺」とやらが吹きまくったリーク情報だ。昨年末に安倍が国会答弁に備え、秘書に「会費以外の支出はないか」と念を押すと、秘書は「払っていない」と虚偽の報告。秘書は「政治資金収支報告書に記載すべきなのに、していなかったため、安倍氏に(補填はないと)答弁してもらう以外ないと勝手に判断した」と話しているといった説明のことである。
つまり安倍本人は「寝耳に水」と訴えたいようだが、こんなマヌケな話があるものか。「安倍氏周辺」の主張を真に受ければ、安倍は1年以上も秘書にダマされていたことになる。これほど危機管理能力の薄い首相に、国民は7年以上も命を預けていたわけだ。それだけでも非常に危うい。
また、補填額は昨年までの5年間で計916万円に及ぶ。それだけの金の工面を議員に何の相談もせず、一介の秘書の独断でできるのか。誰もが耳を疑う筋書きでも、安倍一味は乗り切れると、タカをくくっているのだろう。
なぜなら、安倍政権時代に立て続けに勃発した「政治とカネ」を巡る疑惑を散々、特捜部は見逃してきたからだ。
「ドリル優子」の二の舞だけは御免だ
中でも、今回と近いのは、2014年に発覚した小渕優子元経産相の政治資金事件だ。罪に問われたのは、安倍の秘書と同じ政治資金規正法違反。地元有権者を都内に招いて開催した「観劇会」などの実費と、収支報告書の記載にはナント3億円以上ものズレがあった。特捜部の捜索直前にパソコンのハードディスクをドリルで破壊し、証拠隠滅も図っていた。
当時、小渕は「私自身、分からないことが多すぎる」と他人事のような弁明に終始。3億円ものカネの動きを本人が把握していないとは不自然すぎるが、検察捜査は大甘だった。小渕本人を任意で聴取したものの、「関与が認められない」として不起訴処分。結局、報告書の作成に関わった元秘書2人を在宅起訴しただけで“一件落着”にしてしまったのだ。
それでも、虚偽記載額の大きさや悪質性を考慮し、刑事裁判に持ち込んだだけ、マシかもしれない。前夜祭の一件は、法曹関係者からも「検察官が簡易裁判所に略式命令を請求。非公開の書面の審理だけで刑を言い渡す『略式起訴』になるのでは」との声が上がる。
歴代最長首相の任意聴取といえど、しょせん“ドリル優子”と同じ単なるセレモニーで終わるのか。あとは毎度のシッポ切りで秘書を略式起訴。公判も開かず真相は「やぶの中」なんてことになれば、この国はますます犯罪者天国になるだけだ。
不起訴連発でタガが外れた無法集団
前夜祭問題を告発した全国の弁護士有志らは収支報告書の不記載だけでなく、公選法違反の捜査を求めている。安倍側が選挙区内の有権者の参加費を補填すれば、公選法が禁じる「買収」にあたるとの見立てだ。
公選法違反に問われれば、政治家本人にも累が及ぶのは河井夫妻の事件を見ても明らか。だが、特捜部の捜査は現状、不記載にとどまり、本気度が疑わしい。
政治資金に詳しい神戸学院大教授の上脇博之氏が言う。
「いくら非常識な安倍氏とはいえ、高級ホテルの立派な宴会場で有権者を飲み食いさせれば、1人5000円の会費で賄い切れないと感づいたはず。自分は一切、何も知らず秘書に罪をかぶせるのは、あり得ません。そもそも1000万円近い補填の原資はどこから捻出したのか。説明できないカネなら新たな罪が芋づる式に出てくる可能性もある。だからこそ、特捜部には徹底捜査と正式な起訴が求められます」
大体、今の検察には、政治の恐るべきモラル低下を生み出した自覚はあるのか。18年10月から昨年9月まで安倍政権の農相だった吉川貴盛衆院議員が、鶏卵業界から便宜を図ってもらう目的で現金500万円を提供された疑いだって、その一例である。
今回の疑惑は、検察が河井夫妻事件の関係先として大手鶏卵会社を家宅捜索したのを機に浮上したというから、まさに自民の腐敗は芋づる式。吉川は大臣在任中に大臣室で、2度も現ナマを受け取った疑いがもたれているから、ア然だ。
この報道に触れ、安倍の側近中の側近の顔を思い浮かべた人も多いだろう。特捜部があっせん利得処罰法違反で強制捜査に乗り出しながら、不起訴処分とした「元祖・現ナマ大臣」の甘利明元経済再生相のことだ。
倫理観を失った社会は必ず滅びる
16年に甘利事務所が千葉県内の建設業者から都市再生機構の補償交渉を口利きした見返りに現金を繰り返し受け取った疑いが浮上。秘書と業者側のやりとりは全て録音され、甘利自身も大臣室での現ナマ授受を認めた。これだけ証拠が揃いながら、交渉を担った秘書を含めて立件が見送られればタガも外れる。
大臣辞任以降、「睡眠障害」とうそぶいて国会を長期欠席した甘利に倣い、吉川も「不整脈」を理由に雲隠れとモラル喪失の連鎖だ。
前出の上脇博之氏はこう言った。
「黒川弘務元東京高検検事長の暗躍も指摘される甘利氏の不起訴が、『悪しき前例』となったのは疑いようもありません。今の自民党は現職大臣が平然と大臣室で現ナマを受け取れるほど、モラル崩壊が進んでいます。隠蔽、改ざんが当たり前だった安倍政権下では類は友を呼ぶで、倫理観を失った政治家がこぞって集い、大臣を選んでいた。2年前の総裁選で石破元幹事長が掲げた『正直、公正』という当たり前のスローガンを寄ってたかって潰しにかかったことからも、自民党のモラル崩壊は歴然です」
いくら法律上の罪に問われなくとも、安倍の道義的責任は消えない。補填の原資はもちろん、あれだけ国会で追及を受けながら、本当に秘書任せで事実関係の確認を怠ったのか。直接、ただすべき疑問点は山積なのに、安倍本人はいまだに記者会見も開かず、説明責任から逃げ回る。数えきれないほど虚偽答弁を繰り返しても、自民は「捜査中」を理由に野党の国会招致要求を拒み、臨時国会の幕引きを急ぐ。
官房長官時代に安倍に追随して嘘を連発した菅首相も「前首相に確認して答弁した」とスットボケ。菅の言い分は安倍を通じて一介の秘書にダマされ続けたと認めたも同然。2代にわたって危機管理に欠けた首相とその政権下で暮らす国民は、命がいくつあっても足りない。
政治評論家の森田実氏が言う。
「政治指導者の嘘は最大の罪。国会軽視は国民を愚弄するのと同じです。国会で嘘を重ねた安倍前首相と菅首相の責任は免れませんが、野党と大マスコミはあまりにも無力すぎます。特に野党は解散を恐れて内閣不信任案の提出をためらっている場合ではない。このコロナ禍で庶民が日々の暮らしで精いっぱいなのを尻目に、ここまで政治を腐敗・堕落させた張本人、安倍政権の中心人物たちが今なお、のさばっているようではいけません。モラルの崩壊した社会は必ず滅びます」
ワルが「のうのう」の世も末を許したら、取り返しのつかないことになる。この国を終わらせたくなければ、国民はストレートに怒りを政治にぶつけるしかない。