日刊ゲンダイが立民党の辻元清美氏(衆院予算委野党筆頭理事)を「直撃インタビュー」しました。
彼女は今国会で、菅首相から日本学術会議の新会員候補6人の除外について説明を受けた相手が「杉田官房副長官だった」という答弁を引き出しました。その話から始まっています。
インタビューの動画を見ることが出来ます(全15分42秒)。
それは辻元氏の発言だけをピックアップしたものですが、話しぶりを聞くと頭の中が整理された人であると分かります。
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注目の人 直撃インタビュー
辻元清美氏が菅政権をバッサリ「古い、出がらし政権だ」
日刊ゲンダイ 2020/11/30
やっぱりソーリの追及ならこの人――。衆院予算委員会で菅総理の口から、日本学術会議の新会員候補6人の除外について説明を受けた相手は「たぶん杉田官房副長官だった」という答弁を引き出し、注目された。菅総理は当選同期(1996年)で、当初は親近感とともに、安倍前総理とは違う叩き上げの政治への期待感もあったというが、今は「古い」とバッサリだ。
*インタビューは【動画】でもご覧いただけます。
⇒ 動画 (nikkan-gendai.com)
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■ 総理に「慣れない」は「成れない」の意味も
――菅政権が発足して2カ月です。
先日、宿舎で菅総理とエレベーターが一緒になったのね。疲れている様子はなく「官房長官の頃の方が忙しかった。国対的なこと(国会対策)もやらなきゃいけなかったから」と言ってました。菅さんって、どうしても官房長官のような「裏方」が似合うような気がするんですよ。「まだ、慣れないところもあるかなぁ」ともボソッと。「慣れない」というのには「成れない」という意味が含まれることもあると私は思ってしまいました。
――予算委員会での質問で、「やはり辻元さん」と注目されました。実際に菅総理と対峙してみて、どうでしたか。
安倍さんとは全然違いますね。安倍さんが脂っこいステーキだとしたら、菅さんはさらさらしたあまり味のないお茶漬け。たぶん官僚が書いた答弁で乗り切ろうとしてくるだろうと予想していたので、「いつ知ったんですか」「誰から聞きましたか」など、分かりやすくて総理しか答えられない事実関係を質問しようと決めていました。そうしたら「杉田副長官です」とポロッと言っちゃった。割合、正直な人だなと思いながら聞いていました。
――狙い定めた質問だったのですね。
相当考えました。7年8カ月ぶりに総理大臣が代わった。初っぱなは非常に大事だと思ったので、1カ月以上前から菅総理の著書「政治家の覚悟」だけではなく、過去のインタビューや国会での質疑・答弁、官房長官時代の発言などかなり読み込みました。質問というのは、大量に資料を読んだ中から、いかに削るか、最後に骨の部分だけにして、いかにシンプルにしていくかが肝なんです。
――「桜を見る会」前夜祭に関して安倍前総理の事務所関係者が検察の事情聴取を受けたことが明らかになった。25日の集中審議では当時官房長官だった菅総理の責任も追及されました。
安倍前総理の国会答弁が全部嘘だった可能性が濃厚になったわけです。官房長官だった菅さんは、安倍さんを擁護するような答弁をしてきたので、そのことを問われましたが、「安倍さんから聞いたから」としか答えられない。ボソボソと。そんな人に危機管理ができるの、と思いましたよ。安倍さんは「秘書から聞いた」として逃げようとしている。ならば、安倍さんは7年間も秘書に騙され続けていたのか。そして、その安倍さんに菅さんは騙され続けてきたと言っている。事実なら情けなくなります。こんなやすやすと騙される人たちに、外交もコロナ対策も任せられません。安倍さんは嘘で塗り固められたような総理であり、菅さんはその安倍さんと一心同体。日本が衰退していっている原因は政治家にあると思いましたね。呆れて言葉がありません。
――まともに答弁できない総理だと、予算委の野党筆頭理事は大変ですね。
筆頭理事は、答弁不十分とか間違った答弁をしていたら委員長のところに詰め寄って「おかしいじゃないか」と時計を止めたり、「大臣や総理にこういうふうに答弁してもらわないと困る」と整理して指図する、そんな役割ですね。党の中でも誰に質問させるか、今回は特技があるこの人にしようなどと考えて、質問者を決めるんです。そういうポジションだからこれまでは男性ばかりで、衆議院では国対も予算の筆頭も、与野党超えて女性は私が初めてです。参議院は森ゆうこさん。野党の予算の筆頭が衆参ともに女性というのも初のことです。
■ 女性議員を増やし世襲改革すれば政治は変わる
――「国対は男の世界」って感じですが、いつになれば女性議員が当たり前に活躍できるようになるんでしょう。
私は各党が自発的にクオータ制を導入して、所属議員の3分の1を女性にするなどすべきだと思うのね。数が増えれば文化が変わる。少ないとどうしても、おじさんに取り入って役職をもらおうという女性が出てくる。そういう意味では男性の方が競争が激しいわけで、女性も仕事で勝負してなんぼのもんや、ってならないといけない。
――文化を変えるという点では、予算委で世襲制限のことも質問してましたね。
すごく反響がありました。自民党議員は4割が世襲で、菅内閣は6割が世襲。それも100年前からの人とかもいて、大正時代からこの選挙区をお預かりしています、みたいな。それが日本の政治を硬直化させている。3親等以内は別の選挙区から出馬しなければならない、など改革すれば、日本の政治は変わっていくと思うんです。菅さんのお父さんも秋田で町会議員を4期もやられた方ですが、少なくとも秋田からは出馬せずに横浜で政治家になった。だから菅さんのそういう叩き上げの部分に期待をしていたんだけど、かつて世襲を制限すべきと主張していた菅さんが、総理になったら、悪しき前例の打破とか言っているのに、世襲については口をモゴモゴ。世襲の上に乗っかった総理大臣になってしまって、がっかりです。
■ 自助のために公助でサポートする時代
――菅総理の過去の発言などをじっくり読まれたということですが、どういう政治家だと思いましたか。
古いタイプの政治家って気がします。竹中平蔵さんが総務大臣だった時の副大臣としての体験と小泉純一郎政権での新自由主義的なグローバル経済に裏打ちされたような規制改革一辺倒で成長できるという体験。その2つの体験が強烈で、その時代から思考停止しちゃっている。「自助、共助、公助」という言葉も古い。今はむしろ、みんなが自助で生きていけるようにいかに公助でサポートするかという時代です。「子ども手当」や「児童手当」は自助しやすくするための支えとして現金を配るんです。農家の戸別所得補償も、今回のコロナ禍のような時に食料が入ってこなくなったら大変だから、農家を支援して食料の自給率を高める。気候変動を抑えるために自然を残さなきゃいけないから林業を支える。競争に耐えうるように自助をサポートしないと守れない産業もあるのです。労働法制の改悪もそうですが、竹中路線の規制改革では社会の底が抜けるんじゃないかと心配しています。カーボンニュートラルにしても、ようやく言ったけど、いまだ原発にしがみついている。結局、古いところから前に進めない。実は、しがらみだらけの総理なのかもしれません。
――そこで野党です。合流で立憲民主党は150人の政党になりました。民主党が政権を取った時と同規模になったのですが、世論の熱狂はなく、存在感が希薄です。
そこが大きな悩みです。ポストコロナの社会ビジョンを出していくということで、原発ゼロに代表される自然エネルギー立国、それこそ本当の意味でのカーボンニュートラル社会みたいなものが1つの柱になると思います。そこから雇用も生み出す。そして、もう1つはジェンダーフリーで多様性を認めていく社会の実現。それらを目に見える形にしなければと思うんです。合流であっちこっちに気を使って、この人もあの人も重宝しとかなあかん、みたいなのにとらわれてるから、「前と変わってへんやないか」みたいに見えてるんと違うかな。それを何とか変えていかないといけないと思っています。
――確実に1年以内に総選挙があります。
菅さんのポスターは「国民のために働く」、枝野代表のポスターは「あなたのための政治」です。今は「あなたのため」じゃないといけない。オーダーメードの政治というか、シングルマザーもいれば非正規の人もいれば大金持ちもいる。「国民」と十把ひとからげにするのは古い。規制改革一辺倒のような経済政策もそうですが、出がらしみたいな政権では、絞ってもおいしいお茶は出ない。だから新しい芽を摘んできて、新しい政治にしていく必要がある。結局、なんぼ叩き上げの総理だとしても、頭だけ代えても体質は変わらない。自民党の中の総理大臣のたらい回しでは、OS(⇒オぺレーティング・システム 政治の仕方)が変わらないんです。だから、私たちがもう一度政治を担う。少なくともしがらみはないですよ。
(聞き手=小塚かおる/日刊ゲンダイ)
▽つじもと・きよみ 1960年、奈良県生まれ、大阪育ち。早大教育学部卒。学生時代にNGO「ピースボート」を創設。96年衆院選で社民党から出馬し初当選。民主党政権では、国交副大臣、首相補佐官を務めた。大阪10区選出。当選7回。近著に、自身の体験を実名でつづった「国対委員長」(集英社新書)。