新型コロナの感染者は全国では9日が2811人、10日が2973人と過去最高を連続で更新しました。東京都も10日は602人(9日は572人)とついに600人台に入りました。3日毎に全国で9千人弱が増える計算になります。8日に出されたGoogleの予測によると、年末には1日に3834人になるとされていますが、今の勢いはそれをはるかに超えそうです。
影響の大きい医療機関のクラスター発生件数も、10月の31件から11月には105件と3・4倍に増えています。
9日に開かれた衆議院厚生労働委員会で“新型コロナ”対策分科会の尾身会長は、「従来から分科会は、ステージ3(感染急増)相当の地域については、Go Toも含めて人の動きを、あるいは接触を控えるべき時期だと述べてきた。早く感染を下火にしてステージ2(感染漸増)相当になってから、じっくりとまたGo Toを再開すれば、所期の目的に合致するのではないか(要旨)」と述べました。
政権はその分科会の見解を無視し続け、「『Go Toトラベル』利用者の“コロナ疑い”の比率は2倍」という東大などの調査結果が明らかにされても、査読中の論文だとか「Go Toトラベルの利用が直接的にコロナ症状の増加につながった因果関係は断定できない」と当事者に確認している(加藤官房長官)などと一蹴しました。査読中であろうが28000人の調査で分かった結果ですから、それを尊重するのが国民の生命を守るべき政府の姿勢でなくてはなりません。
医療関係者は、これ以上感染者が増えれば医療従事者の体力の限界を超えると必死に訴え、通常の患者の治療に重大な支障が出るとの警告を繰り返してきましたが、政府は聞く耳を持ちません。
直近のニューでは、政府は、予備費3700億円のうち3000億円を「Go Toトラベル」に支出すると決めました。何故「医療機関に」ではないのか耳を疑う話です。
以下の3つの記事を紹介します。
・「止まらない感染再拡大 尾身会長が最後通牒 Go Toやめろ」(日刊ゲンダイ)
・「菅首相“無為の大罪” 対策放置で病院クラスター1カ月で3倍」( 〃 )
・「感染拡大推進 菅義偉氏投降が間近」(植草一秀の「知られざる真実」)
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止まらない感染再拡大 尾身会長が最後通牒「Go Toやめろ」
日刊ゲンダイ 2020/12/10
ついに身内からもスガ批判が飛び出した。収束する兆しがまったく見えない新型コロナウイルスの感染再拡大を巡り、政府の新型コロナ対策分科会の尾身茂会長が菅首相肝いりの「Go Toトラベル」について、「ステージ3(感染急増)相当の地域では、Go Toを含めて人の動きや接触を控えるべきだ」と発言。菅政権に対する最後通牒にも聞こえる強い口調に不安が広がっている。
時には安倍前首相と並んで会見し、政府と仲良く二人三脚でやってきた尾身氏が意見したのは、9日の衆院厚労委員会の閉会中審査。いい加減にしろ、とばかりにこう言っていた。
「今の感染状況の時は中止した方がいいと再三申し上げている。早くステージ2にして、しっかり感染を抑えてからやる方が国民の理解も得られるのではないか」
菅首相は「トラベルが(感染再拡大の)主要な原因だというエビデンスは存在しない」と強弁しているが、関連数字はどんどん膨らんでいる。国交省や農水省によると、トラベル事業利用者の感染者は258人(8日時点)に上り、一度に5人以上が感染したケースが8件もあったという。参加登録している宿泊施設の従業員が220人感染したほか、イート事業でも飲食店58店舗の従業員76人が感染したという(3日時点)。
新規感染者また過去最多更新
西武学園医学技術専門学校東京校校長の中原英臣氏(感染症学)は言う。
「尾身会長も重い腰を上げざるを得なくなったのでしょう。菅首相は『勝負の3週間』と言いながら、全く勝負しないのだから話にならない。9日の新規感染者は2811人に上り、また過去最多を更新した。トラベル事業の全面停止は不可避なのに、国民にカネを渡して移動を奨励し続けるなんて、新型コロナも国民もナメているからでしょう。11月後半から2月あたりまで流行するインフルエンザと同様に、新型コロナもこの期間に猛威を振るうのではないかとみています。遅きに失していますが、感染防止策を取るに越したことはありません」
感染再拡大や医療体制の逼迫に警鐘を鳴らし続けている日本医師会の中川俊男会長は、9日の会見で、「全国で感染、特に市中感染が拡大している現状では、誰もが感染している可能性があります」と警告。感染防止策の徹底を求めた。専門家らの悲鳴にも似た訴えを菅首相はいつになったら素直に受け入れるのか。ジョンソン英首相のように、感染して生死の境をさまよう経験でもしなければ変わらないのか。
菅首相“無為の大罪” 対策放置で病院クラスター1カ月で3倍
日刊ゲンダイ 2020/12/09
「Go Toトラベル」利用者は新型コロナの発症リスクが2倍――東大などの研究チームによる衝撃の調査結果に菅政権は聞く耳持たず。Go To継続に邁進し、感染抑制策は後手の極みだ。現在、病院クラスターが多発し、医療提供体制は危機的状況だが、この事態を招いたのは、他ならぬ菅首相だ。
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「査読を受ける前段階のものだ」
8日、衝撃の調査結果をそう突き放したのは、西村経済再生相だ。加藤官房長官も「Go Toトラベルの利用が直接的にコロナ症状の増加につながった因果関係は断定できないとされている」と一蹴した。
「国民の命や健康を第一に考えるなら、調査結果を謙虚に受け止め、Go Toは見直すべきです」(西武学園医学技術専門学校東京校校長・中原英臣氏=感染症学)
病院クラスター1カ月で3倍増
コロナの感染拡大が止まらず、医療体制は逼迫。北海道旭川市などで病院クラスターが多発しているからだ。厚労省は自治体の報道発表やメディアの報道をもとに、同一場所で2人以上の感染をクラスターとしてまとめている。10月の295件に対し、11月は814件。たった1カ月で2.8倍増だ。このうち、医療機関は31件から105件と3.4倍に増えている。
「重症化リスクの高い高齢者が集まる福祉施設もそうですが、最も避けなければならないのは院内クラスターです。病持ちの患者が感染すれば、重症化、死亡する可能性が高い。加えて、病床の逼迫や医療スタッフ不足に輪をかけることになるからです」(中原英臣氏)
定期検査の政府方針を3カ月放置
もっとも、病院や高齢者施設が要注意なのは、政府も夏から認識していた。安倍前首相は8月28日の辞任会見で「特に重症化リスクの高い方がおられる高齢者施設や病院では、地域の感染状況などを考慮し、職員の皆さんに対して定期的に一斉検査を行う」と表明。一斉定期検査で無症状陽性者を発見し、クラスターの発生を未然に防ぐ「社会的検査」の方針を示していたのだ。
ところが、菅首相はこの方針を長らく放置。ようやく病院や高齢者施設での無症状者を含む検査の徹底を担当大臣に指示したのは先月18日のこと。21日のぶら下がりでは「医療施設・介護施設において、検査を集中的に国費で行います」と“国費負担”を表明したが、後の祭りだ。
なぜなら、社会的検査は地方と国の折半のため、検査実施に二の足を踏む自治体も少なくない。現状でも社会的検査を実施しているのは、世田谷区や神戸市など10程度の自治体にとどまっている。
菅首相が重い腰を上げるまで、安倍前首相の方針表明から3カ月、首相就任から2カ月も無為な時間が過ぎ、事態は悪化した。旭川市の慶友会吉田病院では先月6日、旭川厚生病院では同21日に大規模クラスターが発生。自衛隊の看護官派遣を要請する事態になっている。
「安倍氏以上に菅首相は感染抑制策を何もしない。夏以降、菅首相がリーダーシップを発揮して、病院での定期検査を徹底していれば、防げたクラスターも少なくなかったはずです。菅首相の不作為が今の事態を招いています」(中原英臣氏)
「安倍路線の継承」「コロナ最優先」を掲げながら、このザマだ。菅首相はどう落とし前をつけるのか。
感染拡大推進 菅義偉氏投降が間近
植草一秀の『知られざる真実』 2020年12月 9日
コロナ感染が順当に拡大している。
感染が拡大している理由は二つ。
第一は菅内閣が感染拡大を推進していること。第二は季節的な要因。
冬季は感染が拡大しやすい。気温、湿度が低下するとともに、部屋の換気が行われにくくなる。
菅内閣による感染拡大推進は「人の移動拡大推進」によっている。人の移動と新規陽性者数との間には3週間のタイムラグが存在する。
11月の3連休に人の移動が拡大した。その影響は12月中旬になって表れる。
季節性の影響も加味される。
コロナで重要なことは無症状の感染者が存在し、この無症状の感染者が感染を拡大させる原因になること。感染が拡大する大都市から全国各地への人の移動が拡大すると、感染が日本全国に拡散される。
菅内閣、厚労省は、感染者を確認したら、その感染者を中心に追跡調査を行い、感染拡大を抑止する「クラスター対策」をコロナ対策の中核に位置付けた。
しかし、クラスター対策では感染抑止はできない。なぜなら、クラスター対策の対象外になる無症状感染者が感染拡大の主因であるからだ。
コロナ感染症に対する特効薬はまだ開発されていない。
このなかで、高齢者、基礎疾患を持つ人が重篤化するリスクが高い。
高齢者、基礎疾患を持つ人、医療従事者、介護従事者への感染を防ぐことが極めて重要だ。
政府は感染拡大を抑止するとともに経済活動の著しい悪化を防ぐことを求められている。
そのための正しい手順を設定することが必要不可欠。
正しい手順は 感染拡大抑止を優先し、その範囲内で経済活動の維持を図ること。
感染拡大を推進すれば、結局は極端な行動抑制策が必要となり、経済活動の著しい悪化を招いてしまう。
ところが、菅内閣は感染拡大推進をやめない。
Go Toトラブルキャンペーンは感染拡大の中心施策になっている。
とりわけ、感染が拡大している大都市から全国各地への人の移動促進は感染を全国に拡散する上で極めて有効な施策になっている。
「勝負の3週間」と銘打たれたが、「感染拡大推進に全力を挙げる勝負の3週間」になっている。
高齢者、基礎疾患を持つ人、医療従事者、介護従事者にとってGo Toトラブルキャンペーンは「菅内閣による殺人行為」と呼ぶべきもの。
国民の命と暮らしを守らない菅義偉内閣には即刻退陣が求められる。
政府が取り組むべきことは、
1.検査の全面的な拡大
2.陽性者の行動抑止、
3.正確なコロナリスクの周知、
4.すべての国民に対する生活保障
5.重篤化リスクの高い人の保護
である。
感染症対策の基本は「検査と隔離」。
検査を徹底的に拡大して無症状の感染者が感染を拡大することを防がなければならない。
低価格で実施できるPCR検査の高価格を維持してきたのはなぜなのか。
国民の命と暮らしよりも「利権」が優先されてきた。
PCR検査を無料化し、徹底的に検査が行われるようにするべきだ。
同時に陽性者の行動を抑止する実効性のある措置が取られる必要がある。
一方で重要なことは、コロナ感染症の正確な情報を流布すること。
日本においてはコロナ感染症で重篤化する比率が決して高ない。
とりわけ、高齢者でない健常者の重篤化リスクは高くない。重症化しない感染者の入院措置が医療機関の機能をマヒさせている現状を踏まえて、実態に即した対応を取ることが求められる。
まずは、感染拡大推進のGo Toトラブルキャンペーンを一時中断することが先決だ。
(以下は有料ブログのため非公開)