11月下旬に入って政府が「この3週間が勝負」だとしてスタートしたことになっていますが、一体何がスタートしたのでしょうか。既に2週間が経過しましたが、コロナの感染拡大が収まる気配は見えません。仮に1日当たりの新規感染者の増加が止まったとしても、そのまま高原状に高止まりする惧れの方が大きいのではないでしょうか。
因みにGoogleが定期的に発表している予測グラフによると、12月13日の新規感染者数は2650人、12月31日は3125人と、増加の一途をたどるとしています。1日当たりの死者数も12月31日が41人と直線状に増加しています。
日刊ゲンダイが「科学ではなく意地と ~ 狂乱の行く末」という記事を出しました。
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科学ではなく意地と票目当てと利権と…もう止められないGo To
狂乱の行く末
日刊ゲンダイ 2020年12月5日
(記事集約サイト「阿修羅」より転載)
臨時国会が5日閉幕することを受け、菅首相が4日夕、記者会見に臨んだ。新型コロナウイルスの感染拡大で国民の間に不安が広がっても、かたくなに会見を開こうとはせず、正式な会見は9月の就任時以来。何を話すのかと注目していたら、あまりに拍子抜けのスカスカ会見だった。
プロンプター(原稿映写機)を使わなかった点は安倍政権を継承していなかったが、用意された原稿棒読みは前政権と変わらず、冒頭およそ18分間にわたって原稿をボソボソ読み上げても心に残る内容は皆無だった。
「プロンプターを使わない分、ひたすら下を向いて原稿を読むだけで、国民に語りかける姿勢がまったく感じられませんでした。このコロナ禍を乗り切るために、前を向いて力強い政策を打ち出して欲しいのに、国民に勇気や希望を与えるリーダーとしての資質がまったくない。新型コロナに関しての言及も少なく、国民の不安なんて知ったことかと開き直っている感じすらありました。携帯料金の値下げやデジタル庁など自身の肝いり政策についてだけは、とうとうと語っていましたが、国民がいま一番聞きたいのはコロナ対策についてです。どうやって感染拡大を食い止めるのか。その具体策がまったくない。『国民のために働く』という言葉がむなしく響くばかりです」(法大名誉教授の五十嵐仁氏=政治学)
菅が会見で訴えたコロナ対策は「国民の皆さまにおかれては、科学的にも効果が実証されているマスクの着用、手洗い、3密の回避といった基本的な感染対策の徹底をしていただくよう改めてお願いを申し上げます」だった。
マスク、手洗い、3密を避ける――。そんなの春からずっと言われていることだ。国民はもう実践している。それでも感染拡大が止まらないから不安だけが高まるのだ。
4日発表の全国の死者数は過去最多の45人だった。重症者数も505人と初めて500人を超えた。重症者数は、この1カ月で約3倍に増えている。国は何をやっているのか。諸外国に比べてケタ違いに少ないPCR検査を拡充するとか、政治がやるべきことは、いくらでもあるのではないか。
ところが、菅政権は医療の逼迫を尻目にGO Toにシャカリキで、このタイミングで一時停止どころか延長を決めたのだから話にならない。
「撤退プランもなくキャンペーンを始めたことが異常」
赤羽国交相は4日の会見で、来年1月末をメドにしていた「GO Toトラベル」事業の延長について初めて明言。「制度を段階的に見直しながら(来年)6月末までとすることを基本の想定とする」と言っていた。8日に閣議決定する経済対策に具体策を盛り込むという。
「この期に及んでGO Toに邁進とは、コロナ感染の火が燃え広がっているのに、水ではなくホースでガソリンをまこうとしているようなものです。首相会見の最後に海外メディアの記者が『二階俊博幹事長が全国旅行業協会の会長だから、他の業界に比べて旅行業界を優遇しているのではないか』と質問していましたが、まさにそういうことで、観光地対策というより自民党の利権を優先しているのでしょう。それでGO Toを強行して感染拡大が進み、医療崩壊が起きたら経済の立て直しどころではなくなるのに、感染が広がるか止まるかは“神のみぞ知る”のギャンブル的な発想で、世紀の愚策を強権的に進めている。国民が実験材料にされているのです。命や健康に関わる局面でイチかバチかは、とても責任ある政府の対応とは言えません」(五十嵐仁氏=前出)
2月にクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」に乗り込み、船内感染の実態をリポートした神戸大学病院感染症内科教授の岩田健太郎氏も発売中の「週刊朝日」でこう指摘している。
<国はGo Toの一時停止についても自治体に判断を任せるなど無責任です。そもそも撤退プランもなくキャンペーンを始めたことが異常です。多くの旅行業者が対応に追われていると聞き呆れました。失敗を想定しないプランというのは、無謀な作戦で多くの犠牲を出した旧日本軍の「インパール作戦」と同じです>
<感染対策を優先した中国やニュージーランド、各フェーズで明確にメッセージを出してきた欧州各国に比べ、日本はリーダーシップが取れていない>
<政府にビジョンがない以上、国民に判断が任されている。まさに「自助」です>
経済効果が不明な事業に巨額の税金投入
たとえば、ロンドンを含むイングランド地方で4週間にわたってロックダウンが行われていた英国では、科学的根拠にのっとって事細かなガイドラインが定められ、解除の基準が明確に示されている。野党やメディアとも議論を交わし、政府によるブリーフィングも毎日ある。
翻ってこの国の政府・与党はさっさと国会を閉じ、「あとはマスク、手洗い、3密回避でヨロシク!」と国民に丸投げだ。GO Toをいつまでやるのか、どうなったらやめるのかも明示しないまま、目をつぶって狂乱のキャンペーンに邁進しようとしている。
「そもそもGO Toはアフターコロナ対策であり、収束後に始めるはずだった。しかし、収束を待っていたら、カネと票になる業界が干上がってしまうからと、前倒しでスタートさせたのです。その結果がコロナの全国的な感染拡大で、自分たちの利権にこだわって間違った判断をしてしまった。医療関係者ら多くの専門家が、人の移動がウイルスを拡散させると警告してきたのに、科学の知見より、自分たちの政治的思惑を優先して、メンツや利権を優先している。GO Toの旗振り役だった菅首相は失敗を認めたくないから屁理屈をこねて自身を正当化しているように見えます。高齢者や基礎疾患のある人は最初から旅行を控えているし、感染拡大に伴い、若年層の警戒も高まって旅行需要が落ち込んできている。どれだけの経済効果が見込めるか分からないキャンペーンを延長し、巨額の税金をつぎ込むことに国民の納得が得られるでしょうか」(経済評論家・斎藤満氏)
血税を投入してウイルスを全国に拡散させ、逼迫する医療現場への支援は後回し。8日に閣議決定する経済対策の裏付けとなる第3次補正予算は、2050年カーボンニュートラルの実現に向けた基金設立に2兆円、デジタル関係で1兆円など大盤振る舞いで、20兆円規模になるとみられる。そのツケは結局、国民にハネ返ってくることを忘れてはいけない。
今年度の当初予算と補正を合わせた新規国債発行額は初めて100兆円を超える見通しになった。これまで最多だったリーマン・ショック時(2009年度)が52兆円だから、実に2倍である。GO Toキャンペーンの経費も、将来世代に負担させるだけなのだ。それも、事業費や運営費でどれだけ中抜きされることになるのか。
キャンペーンには本来、「軍事的な作戦」の意味もある。映画「スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐」でも、アナキン・スカイウォーカーが「I lead the campaign」と、戦争の陣頭指揮を執ることを要望する場面がある。
作戦責任者が意地になって推し進め、国民に負担を押し付けるだけのGO Toキャンペーンなんて、行く末はロクでもないことにしかならない。財政破綻、市場暴落、世相の混乱……。アベノミクスの無謀な異次元緩和と同じ構図だ。そこは前政権をしっかり継承しているということなのだろう。