2020年12月8日火曜日

08- 学術会議のあり方論議 すり替えだけ進んでいる(毎日新聞)

  日本学術会議のあり方を議論している自民党のプロジェクトチームが、3年後をめどに政府から独立させるよう求める提言をまとめました菅首相の構想を後押しするものです。

 先に井上信治科技担当相は日本学術会議の梶田隆章会長らと会談した際に、学術会議を国の機関から切り離すことも検討するよう要請しました。科技担当相の発言は勿論菅首相の意向を受けたものです。
 菅首相が、あれだけ不当介入を目指した学術会議を国から独立させようとしているのは奇異に思えます。国から独立させて兵糧攻めにしようという意向としか思えません。
 学術は国家にとって必要不可欠で国がその活動を支援するのは当然のことです。それなのにそこに配分されている予算は僅かに年間10億円ほどに過ぎません(大半は関係官僚群の給与と経費)。あまりにも過少です。
 なるほど米国の全米科学アカデミーや英国の英国王立協会などは政府から独立していますが、それでも米国は年間277億円、同じく英国は134億円を配分しています。政府からの独立は長い歴史の中で確立されたものであり、日本がいま俄かにそれを真似しようとするのには無理があります。
 そもそも国の機関でなくなると、国際機関から日本は脱退しなければならず、IAPやアジア学術会議、国際学術会議などにこれまでのように加盟し、リーダーシップを発揮することができなくなることは、先に白田佳子東京国際大教授が指摘しているところです。
  ⇒(12月2日)学術会議「民営化したら日本の未来に大きな危機」(白田佳子教授)

 決して菅首相などの、あまりにも狭い“管見”で決めていいような問題ではありません。
 毎日新聞の社説と関連記事を紹介します。
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社説学術会議のあり方論議 すり替えだけ進んでいる
                          毎日新聞 2020年12月7日
 日本学術会議のあり方を議論している自民党のプロジェクトチームが、3年後をめどに政府から独立させるよう求める提言をまとめた。政府内でも、非政府組織への移行が検討されている。 
 見直し論議は、菅義偉首相が新会員候補6人を任命しなかったことが表面化した直後に提起された。任命拒否への批判をかわし、組織のあり方の問題にすり替える意図が明白だ。 
 学術会議は拒否の理由を明らかにするよう求めている。だが首相は「総合的、俯瞰(ふかん)的観点からの判断」との説明を繰り返すばかりだ。 
 プロジェクトチームは、会員がより自由な立場で活動するには、欧米のアカデミーのような非政府組織が望ましいと判断しているという。だが、日本と欧米とでは学術をめぐる歴史が異なる 
 日本は明治維新を機に欧州から近代科学を導入した。国家主導で大学を作り、学問体系を構築した。学術会議もこうした歴史を踏まえ、政府の特別機関として発足した。同時に、政府から独立して活動することが法律に明記された。 
 今回の見直しは、このような事情を無視している。形だけをまねて非政府組織にしても、機能するとは限らない 
 政権内には、学術会議が2017年にまとめた軍事研究に関する声明への批判がある。声明は、防衛装備庁が新設した安全保障に関わる研究への助成制度を「政府の介入が著しい」と指摘した。 
 これを受け、制度に応募しないとの決定をする大学が相次いだ。政府が、その方針に従わない学術会議に対し、任命権を振りかざして統制を強めようとするなら筋違いだ。

 国際的な信用にもかかわる。学術会議が加盟する国際学術会議の会長は公開書簡で、学問の自由に与える影響を「極めて深刻」と批判した。学術に関わる決定が政治的な統制や圧力の対象になってはいけない、とも指摘している。 
 学術会議は新体制が始動したが、人文・社会科学系の第1部は、6人が任命を拒否されたことで約1割が空席のままだ。 
 科学技術大国の地位を、政府自ら損ねている。首相にはまず、任命拒否した理由を説明する責任がある。


日本学術会議、23年までに政府から独立を 自民PT、政府に提言へ
                          毎日新聞 2020年12月1日
 日本学術会議のあり方を検討する自民党のプロジェクトチーム(PT、座長・塩谷立元文部科学相)は1日、学術会議を2023年9月までに政府から独立させるよう政府に求める方針を固めた。論議の発端となった「任命権」については触れない。こうした内容を盛り込んだ提言を来週にもまとめ、政府に提出する。
 PT関係者が明らかにした。関係者は提言案に「政府から独立させるべきだ」と明記するとし、3年ごとに半数が改選される会員の次期改選期(23年9月)が独立期限のめどだとした。
 1949年発足の学術会議は、戦前に科学者が戦争に協力したとの反省から、政府組織でありながら一定の独立性を持った「特別な機関」と法律で位置づけられている。PTは、会員がより自由な立場で活動するには、米科学アカデミーなど欧米の学術団体と同様の非政府組織であることが望ましいと判断した模様だ。
 政府は現在、年間約10億円の予算を会議側に支出している。提言には独立後も国への提言や海外学術団体との連携を期待し、運営費の予算支出を続けるべきだとの見解も盛り込む。学術会議は「軍事目的のための科学研究を行わない」方針を掲げる。一方、政府や自民党内では研究成果を軍民両面で利用する「デュアルユース」推進を求める声が根強いが、この点での見解表明は避けるという。

 学術会議を巡っては10月1日、会議側が推薦した新会員候補105人のうち6人の任命を菅義偉首相が拒否したことが明らかになり、会議や野党などが反発。自民党は同14日にPTを発足させ学術会議の改革論議に着手していた。関係者は取材に対し「学術会議は今まで軽視されてきた。政府としてもしっかり活用できるような形にしなければいけない」と述べた。【遠藤修平】