菅首相による日本学術会議への人事介入は憲法違反だとして、会員任命拒否の撤回を求める緊急院内集会が30日、国会内で開かれ学者・研究者や学生、市民ら約300人が参加しました。
主催した「菅政権による検察・行政の強権支配を糺す会」の藤田高景代表は「これまでも菅首相は問答無用の強権発動を連発し、意に沿わない官僚を粛清してきた。手を取り合って菅政権の横暴にストップをかけるたたかいを全国で広げよう」と力を込めました。
同日、「学問の自由」への政治介入に対し、学生が声をあげなければいけないと高校生や大学生の有志が主催した首相官邸前抗議集会も開かれました、集まった高校生、大学生は「学問を守れ」「自由を守れ」と声をあげ、任命拒否の撤回を求めました。
参加した高校2年生は、「学問の自由」への政治介入を許してしまえば、戦前のような社会になりかねないと危機感を感じてたと語りました。
しんぶん赤旗の記事を紹介します。
併せて、国際学術会議が日本学術会議に送った書簡(17日付)の日本語訳全文を紹介します。
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自由な社会守れ 菅首相の学術会議人事介入に抗議
しんぶん赤旗 2020年12月1日
学者・市民ら院内集会 小池氏が参加
菅義偉首相による日本学術会議への人事介入は憲法違反だとして、会員任命拒否の撤回を求める「許すな憲法破壊! 緊急院内集会」が30日、国会内で開かれました。主催は「菅政権による検察・行政の強権支配を糺(ただ)す会」で、学者・研究者や学生、市民ら約300人が参加しました。日本共産党の小池晃書記局長はじめ、立憲民主党、社民党、市民連合の各代表が駆けつけ、連帯のあいさつをしました。
「糺す会」の藤田高景代表は「これまでも菅首相は問答無用の強権発動を連発し、意に沿わない官僚を粛清してきた。手を取り合って菅政権の横暴にストップをかけるたたかいを全国で広げよう」と力を込めました。
小池書記局長は「任命拒否の最大の狙いは、学問の戦争利用は許さないという学術会議の原点を踏みにじろうとするもの。6人の任命拒否を撤回させる道しかない」と強調。「桜を見る会」前夜祭をめぐる安倍晋三前首相の虚偽答弁に象徴されるウソと私物化の政治、命とくらしに自己責任を押し付ける政治を、市民と野党の共闘で必ず倒そうと呼びかけました。
市民連合・平和フォーラムの福山真劫さんは「菅政権を総選挙で倒すために、今度こそ本格的な野党共闘をつくる必要がある。野党が全て結集しなければ勝てない。共産党との連携がどうのこうのという議論がありますが、何を言っているんだと。菅政権を延命させていいのか。連帯してともに頑張ろう」と訴えました。
元会員の羽場久美子・青山学院大学教授は、政府は ▽軍事と学問の両立▽政府を監視する人文社会科学の廃止 ▽憲法破壊―を狙っているとして、「いま声を上げなければ」と訴え。上智大学3年生は「任命拒否で学生は、自分たちが学んでいる学問、特に人文社会科学が政府の弾圧の対象になると分かってしまった。現役の学生は、政府を批判することに慣れていないが、内部からそういう風潮を変えていきたい」と語りました。
元学術会議会員の大沢真理・東京大学名誉教授、纐纈(こうけつ)厚・明治大学特任教授、評論家の佐高信氏、東京新聞記者の望月衣塑子氏、植野妙実子・中央大学名誉教授、古賀茂明・元内閣審議官、慶応義塾大学4年生、平野貞夫・元参院議員、内田雅敏弁護士も発言。生長の家の谷口雅宣総裁もメッセージを寄せました。
官邸前 高校生・大学生ら
臨時国会の会期末が迫る30日、菅義偉首相による日本学術会議への人事介入を許さないと高校生、大学生が首相官邸前で抗議を行いました。「ACADEMIC FREEDOM」(学問の自由)と書かれたプラカードが並ぶなか、「学問を守れ」「自由を守れ」と声をあげ、任命拒否の撤回を求めました。
明星学園高校2年生(17)は、「学問の自由」への政治介入を許してしまえば、戦前のような社会になりかねないと危機感を感じて抗議を呼びかけたと述べ、「自由にモノが言えなくなる社会にするわけにはいきません。そのために声をあげ続けていきます」と語りました。
次つぎと高校生がスピーチ。和光高校1年生(16)は、「時の政府に不都合なことを言う人たちを排除する政治はおかしいし、信頼できません。菅首相は、説明責任を果たす必要があります」と述べ、まともな政治や社会をつくっていきたいと話しました。
抗議は、「学問の自由」への政治介入に対し、学生が声をあげなければいけないと考えた高校生や大学生の有志で主催しました。
国際学術会議から日本学術会議への書簡(全文)
しんぶん赤旗 12月1日
国際学術会議が日本学術会議に送った書簡(17日付)の日本語訳全文を紹介します。(翻訳は日本学術会議による)
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パリ 2020年11月17日
梶田隆章教授 日本学術会議会長
cc 高村ゆかり教授 日本学術会議副会長(国際活動担当)
梶田隆章教授
件名:日本学術会議の総会への6人の学者の任命を承認しないとの日本の内閣総理大臣の
決定に関する懸念
国際学術会議(ISC)は、菅義偉内閣総理大臣が日本学術会議の総会への6人の学者の任命を拒否したとの報道以来、日本の動画を注視しています。
私たちはいこの決定が透明性を欠いていることについて日本学術会議が表明している懸念に留意し、このことが日本における学問の自由に与える影響をきわめて深刻に捉えています。
ISCは、日本学術会議がISCに加盟しており、その結果、国際的な交流と連携を通じた学術の発展を促進するためのコミュニケーションの拡大と緊密な協力の機会がもたらされていることを大変高く評価しています。
21世紀の世界が直面する最も緊急の問題のいくつかに対して、最先端の科学を推進することによって効果的かつ公平な解決策を確保しようというビジョンを共有し、自由で責任ある学術の実践こそが学術の進歩並びに人間の福利及ぴ環境の健全性にとって不可欠であるという価値観を共有する私たちは、日本における最高の独立した学術機関の推薦が菅内閣総理大臣に認められなかったことを懸念しております。最も重要なことは、学術に関わる諸決定(学術活動の優先順位や範囲に関するものを合む)は、国際的な学術コミュニティで受け入れられている学術の誠実さに求められる条件(scientific integrity constraints)にしたがって行われるものであり、それが、政治的な統制や圧力の対象となってはならないということです。
国際学術会議は、自由で責任ある学術の実践を提唱しており、それには以下のことが含まれます。
・学術の進歩並びに人聞の福利及ぴ環境の健全性にとって不可欠なものとしての自由で
責任のある学術の実践。このような実践には、そのすべての側面において科学者の移
動の自由、結社の自由、表現の自由及びコミュニケーションの自由、並ぴにデータや
情報への公平なアクセスの保障が必要です。
・あらゆるレベルにおいて、学術研究を誠実に遂行し伝達する責任。
したがって、世界の学術を代表するものとして、ISCが、学術の最高議決機関のメンバーを推薦する際の学術上の選択の自由を擁護し、確保することに取り組む日本学術会議に強力な支援を提供することが適切だと考えています。
本件について前向きな解決がなされることを期待しております。
教授 ダヤ・レディー
国際学術会議会長
国際学術会議・学術における自由と責任に関する委員会議長
南アフリカ計算力学研究会長
ケープタウン大学 数学および応用数学部