2020年12月25日金曜日

菅政権 医療逼迫するなか病床削減推進の狂気/感染研は360人増員

 新型コロナによってこの国の医療提供体制が崩壊の危機に瀕しているというのに、菅政権はコロナ治療で中心的役割を担っている公立・公的病院の統廃合を目論み、病床削減を奨励する費用として195億円の予算を計上しました。
 政府は昨年9月に「再編統合の議論が必要」だとする全国の公立・公的病院を名指ししたリストを公表し、名指しした約440の病院がある都道府県に20年9月までに統廃合の結論を出せと要求しまし統廃合を要求した約440の病院のうち、53施設(106床)は国や自治体が認定する感染症指定医療機関でコロナ患者治療の最前線となっているのです。
 菅政権はこの統廃合を迫る検証期限を延期したものの、病院・病床を削減するという基本方針は何も変えていません。
   ⇒ (4月1日)  民生予算をケチる安倍政権 13万病床削減をいまも撤回せず
    (19年10月31日 )政府 424の公立病院を再編統合せよと 地方は猛反発
 一体何を考えているのか、これではつるべ落としに支持を失うのは当然です。

 その一方で、来年度、国立感染症研究所感染研の定員倍増となりました。来年度、感染研の定員は361人増員(うち研究者約300人)され、総勢716人の体制となります検疫所も177人(検疫官127人、検査員50人)、感染症対策を担う本省健康局も30人それぞれ増員されます。
 これらは当然の措置で、共産党が繰り返し要求してきたものです。それ自体は喜ばしいことですが、前述したように病院を大削減しては国民は救われません。政府は本気で国民の健康と命を守ることを考えるべきです。
 LITERAとしんぶん赤旗の記事を紹介します。
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菅政権が医療逼迫するなか195億円かけて「病床削減」する狂気の沙汰
コロナ治療最前線の公立病院リストラ政策も続行
                              LITERA 2020.12.24
 新型コロナの感染拡大によって病床が逼迫し、医療団体が合同で「医療の緊急事態」を宣言するほどにまで追い詰められている最中、信じられないような事実が判明した。
 西村康稔・経済再生担当相が「勝負の3週間」を打ち出した11月25日の翌日26日、なんと厚労省が、病院の病床の数を削減すると給付金を支給する「病床削減支援給付金」の実施を全国の知事宛てで通知をおこなっていたのだ。
 この病床削減の支援給付金は、医療費削減を狙った「地域医療構想」の実現のためのもので、昨年9月には「再編統合の議論が必要」だとする全国400以上の公立・公的病院を名指ししたリストを公表。一方、統廃合や病床削減をおこなう病院には全額国費で補助金を出すとし、2020年度予算で84億円を計上していた。これらの施策により、2025年度までに全国の急性期病床を約20万床減らすという。
 だが、周知の通り、新型コロナの感染拡大によって病床不足が深刻化。いざというときのために病床を余裕あるかたちで確保しておくことがいかに重要であるかが浮き彫りとなったのは言うまでもない。
 にもかかわらず、厚労省は新規感染者の急激な増加や医療提供体制の逼迫が叫ばれていたなかで、むしろ「病床を削減したら給付金を出す」と通知をおこなっていたのである。
 しかも、その通知によると、病床の稼働率が高ければ高いほど支払われる給付金が高く、たとえばベッドが90%以上稼働している場合では1病床当たり228万円。つまり、稼働率が100%に近くなるよう病床を減らせと迫っているのだ。
 この正気の沙汰とは思えない通知を厚労省がおこなっていた問題について、昨日23日の衆院国交委員会の閉会中審査で日本共産党の高橋千鶴子衆院議員が追及。しかし、厚労省の間隆一郎・大臣官房審議官は「これは我々が強制しているものではなく、地域でそういうことをやっていこうという合意のあった病床機能の再編をする、個別の事業を支援するもの」「募集したところ、現時点で全都道府県の7割を超えるところからご要望をいただいている」などと主張したのだ。
 これに対し、高橋議員は「そういうやり方で(病床削減を)誘導しているのが問題だと言っているんです。これだけ医療機関が悲鳴をあげているときにやることじゃない」と指摘したが、まさにそのとおり。病院団体の合同アンケートによるとコロナ禍で病院の半数以上が赤字経営に陥っており、いま必要なのは新型コロナ治療の最前線である病院を守るための減収補填や医療機関・従事者への追加支援であることは火を見るより明らかだ。
 だが、むしろ緊迫した状況とは逆行するように、菅政権は病床削減を実行しようとしているのである。
 しかし、問題はこれだけではない。21日に閣議決定された来年度の予算案では、病床削減のためにさらに195億円もの巨額が計上されているからだ。

コロナ感染拡大で医療が逼迫するなか、病床削減に195億円もの予算!
 厚労省の予算案をみると、「地域医療構想の実現を図るための病床機能再編支援」と題し、〈自主的な病床削減や病院の統合による病床廃止に取り組む際の財政支援を実施する〉と説明。さらに、消費税をこの財源にすべく、法改正をおこなうという。こうして、病床削減政策に全額国費負担で195億円を計上しているのである。
 前述したとおり、2020年度予算では病床削減のために84億円もの巨額が注ぎ込まれたが、来年度の2021年度予算ではさらにこれを約100億円も上回る予算を付ける──。まさしく常軌を逸した政策ではないか。
 しかも、先に触れたように、政府は昨年9月に「再編統合の議論が必要」だとする全国の公立・公的病院を名指ししたリストを公表し、名指しした約440の病院がある都道府県に2020年9月までに統廃合の結論を出せと要求していたが、じつは政府が統廃合を要求した約440の病院のうち、53施設(106床)は国や自治体が認定する感染症指定医療機関であり、119施設がコロナ患者を受け入れてきた。つまり、まさにコロナ患者治療の最前線となっているのである。
 だが、政府はこの統廃合を迫る検証期限を延期したものの、いまだに「リストの白紙撤回」をおこなっていない。実際、11月17日におこなわれた参院厚労委員会で共産党の倉林明子参院議員が「コロナを経験した今、検討のたたき台とすること自体が不適切」と追及したが、田村憲久厚労相はリストの白紙撤回を明言しなかったのだ。
 新型コロナによってこの国の医療提供体制の脆弱化が露呈し、いままさに危機に陥っているというのに、コロナ治療で中心的役割を担っている公立・公的病院の統廃合を目論み、病床削減に195億円もの予算を計上する……。安倍政権でも医療費抑制が進められてきたが、菅義偉首相はコロナ禍でさらにそれを推進させようというのだ。これだけ医療機関から悲鳴があがっているにもかかわらず、である。
 尋常ではないこの政権に、国民は殺されにかかっているということを、多くの国民がいまこそ気づかなくてはならないだろう。 (編集部)


国立感染研の定員倍増 来年度 共産党、繰り返し要求
                       しんぶん赤旗 2020年12月24日
 感染症対策の強化のために、来年度、国立感染症研究所(感染研)の定員を倍増するなど厚生労働省の体制が強化されることになりました日本共産党の田村智子副委員長、小池晃書記局長らが繰り返し体制強化と増員を求めてきたものです。
 来年度、感染研の定員は361人増員(うち研究者約300人)され、7人の定員削減はありますが、総勢716人の体制となります。研究者の6割は、4月に新設された感染症危機対応のための感染症危機管理研究センター、積極的疫学調査などの感染症サーベイランスを担う感染症疫学センターの体制強化や、感染症専門家養成を行う実地疫学センターを新設するためのもので、感染症対策・危機管理の要としての機能が大幅に強化されます。
 検疫所も177人(検疫官127人、検査員50人)、感染症対策を担う本省健康局も30人それぞれ増員されます
 2009年の新型インフルエンザ・パンデミック対応の政府の総括会議(10年)では、体制も含めて事前の準備が不十分だったことを課題にあげ、発生前・発生後の対応の強化の必要性を強調し、感染研・検疫所、保健所、地方衛生研究所の感染症危機に対応する機関の人員体制の「大幅な強化」を提言していました。しかし、感染研の研究者は10年の325人をピークに定員削減で減少が進み、20年度には307人になっています
 田村氏は13年、19年に感染研の予算と人員の削減が感染症対策を後退させると指摘し、定員削減の対象から外すよう求めましたが、安倍政権は受け入れず、削減を続けました。

 小池氏も3月の参院予算委員会で、人員・予算の削減を批判し、感染研の体制を強化して米国CDC(疾病対策センター)のような組織をめざすよう求めていました。