2020年12月30日水曜日

それでも菅首相は開催強行、1万人の医師・看護師を無償で五輪に動員

 菅政権は学術会議会員の任命拒否でその正体を顕わしコロナ対応に迷走し、内閣支持率は当初の70%台から大幅な落下を続け40%台に低下しました。自民党内でも失望の声が高まりいつが退陣の時期かが公然と口にされる有様です。

 当人は「東京五輪」の成功をその起死回生策と考えているようなのですが、それもまた世界中に蔓延する新型コロナウイルスのために「専門家のあいだでもいよいよ東京五輪の開催を絶望視する声が広がり始めた」ということです。先般来日したIOC会長は4月に再来日する予定とのことで、そこで開催か否かの最終決定が行われるようです。果たしてどうなりますか。
 そもそも「東京五輪」を決行するためにもコロナの第3波は最小限に抑える必要があったのですが、菅首相はコロナの抑制と鎮静のための方策は全く行わずに、その逆の「Go To」に邁進しました。コロナの第3波への関心は無きに等しかったと言えます。
 別掲の記事の通り、村上春樹氏が「コロナ対応について各国の政治家がどのように処理したかを見比べたら、日本の政治家が最悪だった」と批判したのは、極めて当然のことです。医療界のリーダーは、早くからこれ以上感染者が増加すれば医療が崩壊すると繰り返し訴えていたのに、それを完全に無視したまま現在に至っていて、「Go To」が一時的に中止になったのがこの28日でした。第3波での新規感染者はこのところ東京を中心に、「曜日ごとの過去最大」を毎日更新し拡大の一途です。
 菅首相は英国でコロナの変異種が発見されたことを受けて24日からの入国制限強化を発表しました。英国からの入国者は1日150人のレベルでしたが、首相の認識は「1人か2人」というものでした。それなのに「先手先手の対応」と自画自賛しました。何もかもがズレまくっています。

 「東京五輪」には1万人の医師・看護師を無償で動員する計画です。それには何よりもまず国内のコロナがほぼ完全に制圧されていなければなりません。一体、菅首相は自分がいま何をしなくてはならないのかが分かっているのでしょうか。
 LITERAが取り上げました。
 併せて植草一秀氏の「Go Toトラブル全面停止が正しいわけ」を紹介します。
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専門家や組織委理事が「五輪は無理」…それでも菅首相は開催強行、医療逼迫を無視して1万人の医師・看護師を無償で五輪に動員
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 1000人に迫る勢いの東京の感染者、そして感染力の強い変異種の登場……。新型コロナウイルス感染拡大が今年の春以上に深刻さを増しているなか、専門家のあいだでもいよいよ東京五輪の開催を絶望視する声が広がり始めた。
「我々が取材すると、多くの専門家がオフレコで『五輪はもう無理』と言っている。表立って言うと政府に睨まれるので、『五輪を実現するためにも、感染を抑えないと』としか言わないが、年明けになったら公言する専門家も出てくるのではないか。水面下では、複数の感染や公衆衛生の専門家が政府に中止の提言をしようとする動きもあるようだ」(全国紙厚労省担当記者)
 実際、分科会の尾身茂会長も「週刊文春」(2020年12月31日・1月17日合併号)の池上彰との対談で、池上から「今のままではオリンピックを開催できないということですね」と聞かれて、「最終的に来年の春には、政府は決断しなければなりません」と否定しなかった
 また、厚労省のアドバイザリーボード委員で強い発言力をもつといわれる和田耕治・国際医療福祉大学教授もツイッターでこうつぶやいていた。
〈このままでは1月12日のGo to 再開も難しそうですが、それは伝わっているのでしょうか。。オリパラもどんどん準備ができなくなっているのですが。。 もう少し中長期の想定をしていただき、対策をした場合としない場合を示す必要があったのか。〉(12月25日)
 コロナ対策の専門家だけではない。実は、五輪を推し進める立場の東京五輪組織委員会からも悲観論が出始めている。「スポーツ報知」(12月25日)によると、複数の理事が「五輪を開くには状況が悪すぎる。不安と心配の方が大きく、国民の賛同が得られない」「このままでは五輪の最も大事なフェアプレーの精神を無視する形になってしまう」などと、開催が厳しいとの見方を示しているという。
 当然だろう。コロナは国内の感染が深刻化しているだけでなく、世界中で感染が再拡大しているのだ。安倍前首相はじめ政府は「ワクチンができる」などという楽観論を垂れ流してきたが、東京五輪までに参加国の大半にワクチンが行き届くなんてことはありえない。
 仮に日本で感染が収束したとしても、多くの国で感染が収まっていなければ、開催はできない。現段階で五輪出場枠の40%以上が固まっておらず、選考会を開けない競技や国も多い。
 いずれにしても、無理やり強行すれば、感染や準備不足で大会が大混乱に陥る可能性が高く、五輪開催なんてほぼありえない。むしろ、中止の決断が遅れれば遅れるほど、予算がどんどんかさんでいくのだから、政府や組織委は一刻も早く中止の決断をすべきだろう。

 ところが、政府や組織委がやっていることはまったく逆だ。あくまで開催強行の方針を変えず、ただでさえ膨大な予算を「コロナ対策」「延期で人件費がかさむ」などとしてさらに膨れ上がらせている。
 組織委は22日に、予算計画を更新(第5版)したが、その金額はなんと1兆6440億円、招致時の予算の2.25倍、ロンドン五輪を抜いて五輪史上最高に達した。
 しかも、驚いたのは開閉式の予算だ。組織委は同日、開閉会式を簡素化するため、野村萬斎や椎名林檎ら7人のアーティストによる総合演出チームを解散。リオ五輪で「安倍マリオ」を演出した電通出身のクリエイティブディレクター・佐々木宏氏を新たな責任者とした。ところが、「式典を簡素化する」「華美なものしない」といいながら、同じ日に発表された予算計画をみると、開閉式の予算は大会開催決定時の2倍近く、165億円になっていたのだ。

泥沼強行は菅首相の意向!「首相が『撃ち方やめ』と言うまで何でもやる」と政府関係者
組織委の武藤敏郎事務総長は「できる限りの簡素化を試みているが、この数字になった。ただ、これをコストと見るか投資と見るか、だと思う」「日本国内では開催できれば、4、5兆円規模の経済効果があると試算されている。私はポジティブなところを見ていきたい」などと釈明したが、これは完全なまやかしだ。
 そもそもコロナ感染下で開催を強行したとしても、そんな経済効果がもたらされるはずはない。むしろ五輪を強行すれば、運営上も財政的にも破綻する可能性が高い。
 というのも、22日発表された予算でも想定しているチケット収入は満席が前提だからだ。もし観客制限をすれば、それがそっくり赤字になり、瞬く間に資金不足に陥ってしまう。
 しかも、信じられないのは、組織委がいまも競技会場で活動する医師・看護師らを無償のボランティアとして1万人以上、集めようとしていることだ。22日の予算計画発表で医師や看護師をどうするのかという質問が出たが、武藤事務総長は「当初計画と変わらず原則無償で依頼する」と語ったという(東京新聞)。
新型コロナで医療現場が逼迫し、医師や看護師の離職者が急増しているというのに、組織委はいまなお無償で五輪のほうに、1万人以上も動員をかけようというのだ。国民の健康や生命より東京五輪の開催を優先しようとしているとしか思えない。
 それにしても、政府はなぜ泥沼化必至の五輪強行にここまでこだわるのか。朝日新聞が12月はじめ、「首相が『撃ち方やめ』と言うまで、やれることは何でもやる」という政府関係者のコメントを紹介していたように、背景にはもちろん菅首相の強い意向がある。五輪を最大の政権浮揚策として位置付け、五輪後の解散総選挙で政権を盤石にするともくろむ菅首相が、観客を入れての開催強行にこだわっているため、政府全体が引くに引けない状況に陥っているのだ。
 そもそも、今年3月の時点で東京五輪を中止や安全な2年延期でなく、1年延期で強行した背景にも、安倍首相が自分の任期中にオリンピックをやり、政権再延長につなげるという目論見があった。
 そういう意味では、この国民の健康や財政無視の五輪強行は、安倍─菅と続いてきた行政私物化政権の本質がモロに出たものと言えるだろう。 (野尻民夫)


Go Toトラブル全面停止が正しいわけ
               植草一秀の「知られざる真実」 2020年12月28日
Go Toがコロナ感染拡大の重要な一因になっていることは明白だ。
11月21日からの3連休。この前に感染再拡大の現実は鮮明に示されていた。
人の移動拡大と新規陽性者数拡大との間に3週間程度のタイムラグがある。
3連休の人出拡大を抑制しなければ12月中旬に新規陽性者数がさらに急増することが懸念された。
本ブログにも明記した。
1124日付メルマガ記事「反知性主義支離滅裂政策が日本を亡ぼす」https://foomii.com/00050 に次のように記述した。
「注意が必要なのは人の移動がタイムラグを伴って新規陽性者数確認につながること。
タイムラグは約3週間と判断される。
Go Toトラブルキャンペーン全面推進がタイムラグを伴って新規陽性者数の急拡大を生んでいる。」
「11月の3連休を前に日本全国で感染が急拡大した。
この時点で政府が感染拡大抑止を優先するなら、直ちに運用休止の措置を取るべきということになる。
ところが、菅内閣は3連休に際しての措置を一切取らなかった。
11月3連休の人の移動を全面推進したことで、12月中旬の新規陽性者数が一段と激増することが予想される。」
その主因がGo Toトラブルキャンペーンにあることを予め告知しておく。」

11月3連休の前に有効な施策を決断、実施するべきだった。Go Toの一時停止だ。
ところが、菅義偉首相はGo To全面推進に固執した。
12月11日のニコ動に「ガースーです」と弛緩した状態で登場した際も、Go Toトラベル一時停止について質問されると、
「そこのところは、いまは、考えていません」と即答した。
すでに感染拡大が深刻化していた局面だ。

その後、世論調査で内閣支持率が急落したことを受けて、3日後の12月14日に、突然Go Toトラベルの全国一時停止を発表した。
ところが、これまた、実施は12月28日とされた。
2週間先に一時停止を実施すると発表したのだ。
11月3連休後に東京、大阪、札幌のGo Toトラベル一部停止措置を決定したが、これらも、これら地域を目的地とする旅行だけを停止し、これら地域を出発地とする旅行を停止しなかった。
12月27日まで、停止されなかった旅行を楽しむ人が「駆け込み旅行」を展開した。

この政策対応を受けて、新規陽性者数は順当に急拡大している。
冬季は、低温、低湿、換気不足の要因が重なり、感染が拡大しやすい。
この要因と人の移動拡大によって感染急拡大が生じている。
死者数も急増し始めている。
コロナ感染拡大による経済活動悪化は深刻化した。
2020年4-6月期の実質GDP成長率は世界各国で大幅マイナスを記録した。
日本でも年率マイナス29%を記録した。
コロナ感染拡大が国民生活に重大な影響を与えている。
したがって、政府が経済対策を講じることは当然であるし、正しい。
問題は方法だ。
菅義偉氏が推進するGo Toは一言で表現すると、自公の支持者に利益を供与するもの。
コロナで本当に困窮する者を支える施策になっていない。
コロナで本当に困窮する者は自公の支持者ではないと判断しているのだと思われる。
全国有名観光地の有力旅館はGo Toバブルに沸いている。
しかし、Go Toの恩恵がまったく届かない事業者が無数に存在する。
Go Toを利用できる市民は時間とお金に余裕のある人だけ。
医療従事者、介護従事者はそれどころでない。
特定の観光事業者と癒着してGo Toが推進されている。
本当に困っている人に政府がしっかりと手を差し伸べるという姿勢が微塵も感じられない。
             (以下は有料ブログのため非公開)