日刊ゲンダイが「すっかり国会は様変わりしてしまった ~」とする記事を出しました。
6日から始まった国会審議では、立民党新代表の泉氏は「自分たちは“対決型”から“提案型”へと転換した」ことを宣言しました。維新の会は、以前から国会会期中は毎週憲法審査会を開くべきことを主張し、国民党の玉木代表もそれに合意していました。
実際に今回から国民党は「衆院憲法審査会」の与党幹事懇談会に参加するようになりました。憲法審査会は憲法について議論する場ではなく改憲を発議するための機関(志位氏)なので、国民党は改憲行動に踏み込んだと言えます。
こうした状況について日刊ゲンダイは、国会は与野党激突どころか「大政翼賛会」のようなありさまになっていると評しました。
そもそも立憲党の泉氏が“提案型”に転換すると述べた背景には、大マスコミから“批判ばかりでなく、建設的な提言も必要だ”などと非難されたことがありますが、それは自民党とそれに迎合する大マスコミがでっちあげたフェイクで、野党が政権批判を封印するのは自殺行為(本澤二郎氏)に他なりません。
立正大名誉教授の金子勝氏は、
「泉さんが立民の代表になったことで改憲に対する野党の反対姿勢は明らかに弱くなっている。~ 与野党で議論する様子が報じられれば、国民も『改憲は必要なのかも』と警戒感が薄くなっていくでしょう。~ 自民党の勢いが強まり、野党の抵抗が小さい場合、任期中に改憲に踏み出す可能性はゼロではないでしょう。予想外の事態を招く恐れがあります」と警鐘を鳴らしています。
かつての日本の軍備拡張や中国大陸への軍事侵攻が、メディアの扇動に踊らされた国民の声に押されたという面が大きかったことを思うと、野党(第1党)の姿勢が変わることが国民の心理に大きな影響を与える点は特に注意する必要があります。
日刊ゲンダイの記事を紹介します。
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すっかり国会は様変わりしてしまった
国民がこれを望んでいるのか 改憲大政翼賛会の気味悪さ
日刊ゲンダイ 2021/12/11
(記事集約サイト「阿修羅」より転載)
どこが「言論の府」なのか──。6日からスタートした国会審議を見た国民は愕然としたに違いない。10.31の衆院選後、初めての本格的な論戦の舞台ということもあり、本来なら与野党が激しく対立しておかしくない。
ところが、与野党激突どころか「大政翼賛会」のようなありさまになっている。野党第1党の立憲民主党は、政権批判を“封印”。国会はすっかり様変わりしてしまった。
代表質問に立った立憲の泉健太代表は、まず「私たちは、政府与党と戦い続けてきたが、決してそれのみの政党ではない」と“対決型”から“提案型”へと転換したことを宣言。さらに岸田首相が所信表明で打ち出した「人に温かい資本主義」について、わざわざ「よい言葉だ」と持ち上げてみせた。衆院選で真相究明を公約していた“モリカケ桜”についても一切、触れなかった。
国民民主の玉木雄一郎代表にいたっては、「衆院憲法審査会」の与党幹事懇談会に参加する始末だ。
これまで与党幹事懇には、自民、公明、維新の3党が参加していた。国民民主は、3党と一緒に改憲を進めるつもりらしい。
しかし、野党の最大の役割は、政権与党を批判、監視することのはずだ。野党が批判するから権力の歪みや問題点が国民の前に明らかになり、多少なりとも権力の暴走にブレーキがかかっていた。野党が批判しなくなったら、政権のやりたい放題になってしまう。
「大マスコミから“批判ばかりでなく、建設的な提言も必要だ”などと非難され、立憲民主は方針転換したのでしょうが、大間違いです。どうして、自民党を喜ばせるだけだと分からないのか。立憲民主が政権批判を封印しても支持率はアップしませんよ。そもそも“野党は批判ばかり”というのは、自民党と大手メディアがつくり出したフェイクです。法案の8割近くに賛成していますからね。野党が政権批判を封印するのは自殺行為です」(政治評論家・本澤二郎氏)
中国の危機を煽りまくる安倍一派
最悪なのは、野党が政権批判を封印し、国会が空洞化しているこのタイミングで、安倍元首相とその周辺がしゃしゃり出てきていることだ。反中を叫び、危機をあおりまくっている。
台湾のシンクタンク主催の会合で安倍は、中国が台湾に侵攻するといった事態を念頭に「台湾有事は日本有事だ。すなわち日米同盟の有事でもあり、この点を習近平国家主席は見誤るべきではない」と中国を挑発。
高市政調会長など“安倍一派”も、来年2月の北京五輪に政府高官を送らない外交ボイコットの実行をけしかけている。
もともと、改憲が悲願だけに、安倍一派は国会が“改憲翼賛会”になっていることに乗じて一気に動き出す可能性がある。
維新の松井代表が来夏の参院選と国民投票の同日実施を打ち出し、岸田が所信表明で「国会議員には、憲法のあり方に、真剣に向き合っていく責務がある」と演説したことを千載一遇のチャンスと考えてもおかしくない。
立正大名誉教授の金子勝氏(憲法)はこう言う。
「『対話重視』の泉さんが立憲の代表になったことで改憲に対する野党の反対姿勢は明らかに弱くなっている。『議論すら拒否するのか』という自民党の挑発に乗ってしまう恐れがあります。与野党で議論する様子が報じられれば、国民も『改憲は必要なのかも』と警戒感が薄くなっていくでしょう。宏池会出身の岸田首相は、ハト派とみられていますが、『敵基地攻撃能力の保有』『防衛費2倍』とロコツな軍拡路線を掲げている。どこに本心があるのかは不明ですが、自民党の勢いが強まり、野党の抵抗が小さい場合、任期中に改憲に踏み出す可能性はゼロではないでしょう。国会の様変わりが、予想外の事態を招く恐れがあります」
ナチスの全権委任法とウリふたつ
もし、安倍一派が改憲に動くとしたら、真っ先に手をつけてきそうなのが、緊急時に政府の権限を強化する「緊急事態条項」の創設だ。自民党が掲げる「改憲4項目」のうちの1つに入っている。
茂木幹事長も読売新聞のインタビューで「新型コロナウイルス禍を考えると、緊急事態に対する切迫感は高まっている」と、緊急事態条項の創設を最優先する考えを示していた。
コロナ感染拡大を抑えるため、強制力がある行動制限が必要だとの声もあるが、「緊急事態条項」の創設を許したら取り返しのつかないことになる。緊急事態宣言が発令されると、首相の意向が法律と同じ効果を持ち、法律を成立させなくても国民は従わなくてはならなくなる。
「緊急事態条項」はナチス・ドイツが1933年に制定した全権委任法とウリ二つだ。ヒトラーは「大統領緊急措置権」を乱用して独裁体制を築いていった。条項創設は、首相に絶大な権限を与えることになる、最も危うい改憲項目と言える。
「憲法に緊急事態条項を創設し、それに基づき発令される緊急事態宣言は、コロナ禍で発令された宣言とは全く別物です。ひとたび発令されれば、政府は基本的人権の保障や戦争の放棄といった憲法の規定を全て無視できる。要するに、首相の権限で何でもできてしまうわけです。デモや集会のみならず、報道も首相の意思ひとつで規制することが可能になります。自民党議員が中国の危機を散々あおっていますが、仮に米中で戦争になった場合、日米安保条約に基づき日本も参戦することになる。そこで緊急事態宣言発令となれば、徴兵、物資の取り立てもできてしまう。極めて危険です」(金子勝氏=前出)
安倍一派の暴走を許してはダメだ。
最後は「お上頼み」の日本国民
どうにも危ういのは、政府に絶大な権限を与えることを、国民が望んでいる空気があることだ。
新型コロナの感染拡大でよく分かったことは、いざとなったら日本人は、政府に強い権限を与え、「お上頼み」になってしまうことだ。普段、政府の強権を批判し、個人の権利を強く訴える野党やメディアも、政府の中途半端な“規制”を批判し、もっと強い規制を要求していた。個人の自由を最重視し、政府の干渉にノーと言い続けた欧米とはまったく違った。
「この10年、国民のなかに国家を頼みとする風潮が強まっているのは確かでしょう。理由のひとつは、安倍政権が中国や韓国に対して“敵視政策”を取ったため、偏狭なナショナリズムが強まっているためです。もうひとつは、国民が新自由主義に疲れ切ったことだと思う。どんなに頑張っても敗者になることはあるのに、すべて“自己責任”で切り捨てられてしまう。“自助”には限界もある。他人の自由は自分にとってリスクになることもあります。自由よりも、権力に庇護され、従っていた方がラクだという意識が広がってもおかしくありません。国民が自信を失うと、得てして国家主義が強まるものです」(本澤二郎氏=前出)
この国は一色になるとロクなことはない。80年前の開戦も、反対する声はほとんどなく、多くの国民が拍手喝采した。
ただでさえ、米中が対立し、国際情勢が緊迫しているのに、国会から批判勢力が消滅したのは、非常に危ういのではないか。