2021年12月8日水曜日

岸田首相所信表明 危険な政治加速する姿示した

 岸田文雄首相は6日、衆参両院で所信表明演説を行い、「新しい時代を切りひらく」「新しい資本主義」などと「新しさ」をさかんに強調しました。しかし実質的に新たな改善などは何もなく基本的に「安倍・菅政治」の継承ですが、それにとどまらず改憲や軍事力の増強などでは「新しい」危険な姿勢をあらわにしました。

 しんぶん赤旗の4つの記事を紹介します。
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主張 岸田首相所信表明 危険な政治加速する姿示した
                       しんぶん赤旗 2021年12月7日
 臨時国会が召集され、岸田文雄首相が所信表明演説を行いました。
「新しさ」の看板を掲げ
 岸田首相は所信表明演説で「新しい資本主義」をはじめ「新時代開拓」「未来」などの言葉をちりばめました。しかし、具体的に語ったことは、第2次安倍政権から9年間続いた「古い政治」の看板の掛け替えが目立ちます。
 「新しい資本主義」では、「まずは、成長戦略」と主張し、「デジタル」「経済安全保障」の名による大企業への支援を強く進める立場を明らかにしました。国民への「分配」に触れたのは、「成長のための大胆な投資」をさんざん語った後です。賃上げ規模も現場の求める水準からかけ離れています。大企業ばかりが空前のもうけをあげた一方、賃金が抑え込まれた「アベノミクス」の二番煎じであることは隠せません。
 コロナ対策で医療・検査体制などの強化を掲げました。しかし、今夏、感染爆発で国民を危機にさらした前政権の対応のどこに問題があったのか、分析や反省はありません。誤りを直視することなく、有効な対策はとれません。必要な病床を確保するとはいっても公立公的病院の病床削減をやめようとしません。オミクロン株の感染が世界で急速に広がる中、万全の対応ができるのか不安は消えません。国民の暮らしの支援策の柱である10万円の給付金も必要な人に届く対策にはなっていません。「手厚い支援」の内実が問われます。
 国民の不信が消えない「森友学園」「加計学園」「桜を見る会」疑惑や河井克行元法相夫妻の大規模買収事件などについては一切説明せず、「政治とカネ」と国政私物化になんら反省のない立場を浮き彫りにしました。日本学術会議への人事介入も言及しません。
 沖縄県の辺野古米軍新基地建設では、「唯一の解決策」と述べ、県民の声に逆らい強行する構えです。「丁寧で寛容な政治」「車座の対話」などとは相反するものです。
 これまで「安倍・菅政治」で実現したくてもできなかった政策を推進・拡大することも随所に盛り込まれました。
 歴代政権が保有は憲法違反としてきた「敵基地攻撃能力」について、「あらゆる選択肢を排除せず」「スピード感をもって」軍拡路線の強化を明言したことは、極めて重大です。安保法制強行に続き、憲法解釈を百八十度変更する立憲主義破壊の企ては許されません。

今こそ9条生かせの声を
 演説では「憲法改正」の章をたて、国会での積極的な議論と並行し、「国民理解のさらなる深化」を呼びかけました。踏み込んだ表現です。自衛隊を憲法に書き込む9条改憲の加速が狙いです。軍拡と一体の「戦争する国」づくりを阻止し、9条を生かす政治に転換するために、「草の根」からの世論と運動を強める時です。
 
 
敵基地攻撃能力の検討明言 首相 改憲「国民に議論喚起」
                       しんぶん赤旗 2021年12月7日
 岸田文雄首相は6日、衆参両院で所信表明演説を行い、歴代首相の所信表明演説のなかで初めて「敵基地攻撃能力」の検討を明言しました。また、改憲に向けて「国民の議論を喚起しよう」などと呼びかけました。
 演説で岸田首相は、貧困と格差を広げてきた「新自由主義」路線の「是正」を口にしたものの、コロナ禍であらわになった脆弱(ぜいじゃく)な医療体制の根本的立て直しは示さず、傷ついた経済の支援もあまりに不十分な内容を列挙。一方で大企業支援策などを掲げました。
 岸田首相は、新たな経済対策は「コロナ克服・新時代開拓のため」だと自画自賛しましたが、長年の医療従事者数の抑制・病床削減政策に何ら反省も示さずに推進する姿勢を表明。事業者への給付金は個人・法人向けともに大半が持続化給付金の半分にすぎません。
 「新しい資本主義」を標榜(ひょうぼう)した首相ですが、財界本位のデジタル化への支援策を並べ、「分配策」はきわめて限定的な賃上げの促進だけで、労働法制の見直しには言及しませんでした
 
 
岸田首相の所信表明演説 新しい危険が現れている 
志位委員長 会見で批判
                       しんぶん赤旗 2021年12月7日
 日本共産党の志位和夫委員長は6日、国会内で記者会見し、岸田文雄首相の所信表明演説への受け止めを問われ、「新しい危険が現れてきた演説だった」と指摘しました。
 志位氏は、特に首相が「敵基地攻撃能力」保有の「検討」を行うと初めて所信表明演説で言明したことは、他国に攻撃的な脅威を与える兵器の保有は憲法違反だとした歴代政権の憲法解釈を百八十度転換するものであり、「海外で戦争する国づくりへの大変危険な動きだ」と指摘。「断固反対を貫いて頑張りたい」と表明しました。

 志位氏はさらに、今回の補正予算案には7738億円という過去最大の軍事費が計上され、当初予算と合わせると6兆円を超える大軍拡になっており、首相による憲法9条改定に向けた動きも強まっていると指摘。「海外で戦争する国づくりに前のめりな首相の姿勢がはっきり現れている。自民党の改憲4項目に反対するという野党の一致点を大事にして対峙(たいじ)するとともに、9条を守り生かせという草の根からの運動でこの動きを包囲していく取り組みに全力をあげたい」と述べました。
 また、岸田首相が、補正予算案に大軍拡の予算を組んでおきながら、所信表明演説では一言もふれなかったことを批判。所信表明演説にも財政演説にも「防衛費という言葉自体がなかった。巨額の軍事費を積み増しながら国民には何の説明もしない。こういう姿勢でいいのか」「安倍(晋三)元首相は危険な姿をみせつけながら危険なことをやってきたが、今度の首相は涼しい顔をしながら安倍・菅政権もできなかったような危険な道に踏み込もうとしている」と警鐘を鳴らしました。

 また、補正予算案の中身については「暮らしと営業への支援は全体として極めて不十分なのに、軍事費と大企業への大盤振る舞いは目に余る内容だ」と指摘。「この大盤振る舞いを削ってコロナで困っている方々への支援にあてるべきだという論戦をしていきたい」と決意を語りました。
 
 
岸田首相の所信表明演説
「違い」を強調するが実態は安倍・菅継承と新たな危険
                       しんぶん赤旗 2021年12月7日
 岸田文雄首相が行った所信表明演説は、国民的な批判を受けて退場した安倍・菅政治との「違い」をアピールしながら、その中身は、安倍・菅政治を継承し、その危険を一層進めようとする大きな矛盾を抱えたものです。「違い」を示そうとする言葉とは裏腹に、その実態はどういうものか。
 岸田首相は冒頭、「信頼と共感を得ることができる、丁寧で寛容な政治」を表明しました。しかし、森友・加計・「桜を見る会」問題という国政私物化疑惑、参院広島選挙区での大買収事件などには一切触れず、反省はありません。
 日本学術会議の会員任命拒否問題は語らず、沖縄県民がノーの民意を示し続けてきた米軍辺野古新基地建設では、安倍・菅政治そのままに普天間基地の危険性除去の「唯一の解決策」だとして強権的に進める姿勢です。
 「多様性が尊重される社会」をいいながら、ジェンダー平等の言葉すらありませんでした。
 新型コロナ対策も同じです。岸田首相は「国民の命と健康を守り抜く」と述べ、「医療提供体制の確保」をいいながら、実際は病床削減を推進。「感染拡大に備える」としながら、PCRなど戦略的な検査体制を築かずに感染を拡大させた安倍・菅政治への反省もなし。
 補正予算案に盛り込まれた18歳以下への給付金をめぐっては、クーポンの事務経費だけで967億円を計上する一方で、困窮学生への支援金は675億円、事業者向けの給付金は前回の持続化給付金の半額とするなど、困窮する人たちすべてに届く十分な支援には程遠い状況です。
 「新しい資本主義」では、新自由主義の「弊害」「是正」には言及しました。しかし、賃上げを言いながら、貧困と格差を広げた最大の原因である労働法制の規制緩和は容認するなど新自由主義路線は推進する姿勢です。気候危機でも、国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)の際に「化石賞」を受賞した低い目標と政策を繰り返すだけでした。
 外交・安全保障をめぐっては、歴代首相の中で初めて所信表明で「敵基地攻撃能力の検討」を明言した上、補正予算案を含めた軍事費は年間6兆円を超える大軍拡路線を進めるなど、これまでにない危険に踏み込んでいます。さらに改憲にむけては章を設けて、「国民理解のさらなる深化が大事だ」「広く国民の議論を喚起しよう」と呼びかけました。
 いくら美辞麗句を並べても、安倍・菅政治を継承する矛盾は深まるばかりです。臨時国会は、こうした政治姿勢を根本から転換し、市民と野党の共闘で新しい政治をつくる本格論戦の場となります。 (国会取材団キャップ・行沢寛史)