総評系と同盟系が合体した「連合」は、労働者の権益を守る組織としては明らかに失敗でした。
とはいえ連合は700万人が加盟する労働組合の中央組織なので、そのホームページには、 「誰もが公正な労働条件のもと多様な働き方を通じて社会参加できる。そうした社会をビジョンとして掲げ、春闘や非正規労働者への対応から、雇用労働法制の遵守、地球規模の問題に対しての社会貢献活動など、連合の活動はまさにグローバル規模であらゆる角度から働く人を支える」としたうえで、なぜ「平和運動に取り組むのか」についても語っています。
そうであればそのトップに立つ人なら何よりもまずその精神を体すべきですが、芳野(友子)氏から聞こえてくるのは神津前会長もどきの反共的言辞と、立民党・国民党の「指導部」然として両者の再合併を唱えるなど理解しがたいことばかりです。本来協力関係を結ばなければならない政党との関係について、大きな勘違いをしているとしか思えません。
その芳野会長が、政府の「新しい資本主義実現会議」のメンバーとして正式に発表されました。10月に候補に上げられたとき違和感を表明*した孫崎 享氏が、改めて「 ~ 芳野連合会長は権力機構の一員か」とする記事を出しました。
*(10月25日)労働者側の視点のはずが…芳野友子連合会長は自民党の広告塔なのか
これは連合会長の資質が問われる問題なのに、当人にそういう意識が全くないのであれば大いにズレているというしかありません。
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日本外交と政治の正体
「新しい資本主義実現会議」メンバー発表 芳野連合会長は権力機構の一員か
孫崎享 日刊ゲンダイ 2021/12/17
政府が「新しい資本主義実現会議」のメンバー15人を発表した。Zホールディングス、ダイヤ精機、塩野義製薬などの企業人、さらに経団連、同友会、商工会議所の代表クラスがいる。その中に「異質」の労働側代表の芳野友子連合会長がいた。
そうそうたるメンバーの中で、労働者の立場をどこまで貫けるのだろうか、と疑問を抱き、彼女の行動を追うと、労働者側との連携を深めるよりも、政府、自民党寄りの行動・発言が目立つことが分かった。
彼女は11月下旬、テレビ番組で「立民と共産党の共闘はありえないと言い続ける」と述べていたが、これは衆院選期間中、安倍元首相や麻生自民党副総裁、甘利幹事長(当時)が立憲民主党と共産党の共闘を批判していたのと同じ。そして今月初めには、茂木自民党幹事長、麻生副総裁を訪問し、激励を受けていた。
そもそも、衆院選の野党協力とは何であったか。それは、憲法に基づく政治の回復や格差と貧困の是正、ジェンダー視点に基づいた社会の実現、権力の私物化を許さない、などであり、もし連合がこれらの理念に合意するのであれば、連携するのは当然のことである。
連合はサイトで「連合がなぜ平和運動をするのか、そう思われる方もいらっしゃるかもしれません。しかし私たちが安心して暮らし、職場で働くためには『社会が平和で安定している』ということが大前提です。戦争や自然の脅威を目の前にした時、ひとりの人間の力は無力でも、人と人がつながることで困難に打ち勝てるのです」と記述している。
長い間、労働運動に従事してきた人がこう言っていた。
「長い運動の中で共産党とは対立しました。正直言って共産党は嫌いです。でも、自民党政権があからさまに憲法を無視し自由を奪おうとする時、ともに戦わざるを得ないじゃないですか」
孫崎享 外交評論家
1943年、旧満州生まれ。東大法学部在学中に外務公務員上級職甲種試験(外交官採用試験)に合格。66年外務省入省。英国や米国、ソ連、イラク勤務などを経て、国際情報局長、駐イラン大使、防衛大教授を歴任。93年、「日本外交 現場からの証言――握手と微笑とイエスでいいか」で山本七平賞を受賞。「日米同盟の正体」「戦後史の正体」「小説外務省―尖閣問題の正体」など著書多数。