森友学園への国有地払い下げをめぐり、公文書改ざんを強要され自ら命を絶った財務省近畿財務局職員・赤木俊夫さんの妻・雅子さんが国と佐川宣寿・元財務省理財局長を相手取り、20年3月大阪地裁に賠償請求の提訴をしていましたが、15日、全面的に争う姿勢だった国は一転して請求を認め、訴訟を終結させました。国が民間からの損害賠償請求をすべて受け入れる「認諾」をするのは極めて「異例」と言われています。
雅子さん側は真相解明を進めるため、同省理財局幹部などの証人尋問を求める方針でしたが国がこれを阻んだ形です(佐川氏に賠償を求めた部分は継続)。
この事案は安倍元首相の国政私物化の象徴の一つで、国有地格安払い下げにからんで妻・昭恵氏らの名前が浮上した際、「もしも私や妻が関係していれば首相も国会議員も辞める」と全面否定したことが、公文書改ざんや虚偽答弁という前代未聞の事態の引き金になったものです。
赤木雅子さんは、国・財務省が真相について口をつぐむ中で、「真実を知りたい」として損害賠償請求訴訟を起こしましたが、国側が一転して賠償請求を「認諾」して突如終結したことを受け、財務省に自筆の抗議文を提出しました。その中で雅子さんは
「この裁判は、夫がなぜ死んだのかを知るための裁判でした。でも、国の認諾によってもう知ることができません。そのようなことでは、またきっと夫と同じように自殺に追い込まれる公務員が出てくるでしょう。~ 国は、これ以上裁判が進むと事実が明らかになっていくので、真相を隠すために認諾をしたのでしょう。本当に酷いと思います」と述べています。
しんぶん赤旗が報じました。
17日、立民党は急きょ財務省の担当者から事情を聴く緊急ヒアリングを開きました。たまたまその日 雅子さんは上京していたためヒアリング会場に招かれ心境を語りました。その際に財務省の担当者も招かれ別室に待機していたので、雅子さんは「一言聞いてほしい」と同席を求めたのですが、担当者は言を左右にして頑なに同席を拒否したということです。
ジャーナリスト・元NHK記者の相澤冬樹氏が伝えました。
3つの記事を紹介します。
追記)16日付のLITERAもこの国による強引な幕引きを取り上げています。長文のため紹介できませんので、興味のある方は、下記から原文にアクセスしてください。
⇒ 赤木さんへの1億円国賠で森友改ざんを強引幕引き! 改ざんの元凶・安倍元首相夫妻を守り雅子さんの頰を金ではたく卑劣
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(主張) 森友訴訟「終結」 真相隠しの卑劣な幕引き許すな
しんぶん赤旗 2021年12月18日
学校法人森友学園への国有地払い下げをめぐり、公文書改ざんを強要され自ら命を絶った財務省近畿財務局職員・赤木俊夫さんの妻・雅子さんが「真実を知りたい」と始めた損害賠償訴訟で、国が態度を一変させて賠償に応じるとし、裁判を終結させました。国が被告の訴訟では極めて異例の対応です。裁判で詳細な事実が明らかになることを避けるための奇策に他なりません。民主主義の根幹を否定する重大犯罪の解明を卑劣なやり方で幕引きさせてはなりません。岸田文雄政権の森友問題の真相隠しを許さず、国会での徹底追及が必要です。
悲痛な願いを踏みにじる
国による突然の裁判終結に対し、雅子さんは「悔しくて仕方がない」「お金を払えば済む問題ではない」と怒りに声を震わせました。雅子さんは岸田政権発足直後の10月、改ざん経過の再調査を求める手紙を首相に送っています。手紙を「拝読した」と首相は述べました。そう言いながら、真相封じのためになりふり構わぬ手段に出て、夫が死に追い込まれた経過を知りたいという悲痛な願いを踏みにじりました。雅子さんが17日、財務省に足を運んで抗議文を提出したのは当然です。
政府は「いたずらに訴訟を長引かせるのは適切ではない」と主張します。しかし、雅子さんが資料の提出を求めても出し渋り、これまで訴訟を引き延ばしてきたのは国です。俊夫さんが改ざん経過を克明に記した500ページ超の「赤木ファイル」は、雅子さんが要求しても存在すら明らかにせず、裁判所の指示でようやく開示しました。ファイルには財務省の佐川宜寿元理財局長から「国会答弁を踏まえた修正を行うよう指示」があったことなど記載されていました。
財務省が2018年にまとめた調査報告書は、佐川元局長が改ざんの「方向性を決定づけた」などと認めたものの、具体的な指示や内容などは明らかにしておらず、ファイルで新事実が判明しました。これらを踏まえて雅子さん側は裁判で真相をさらに明らかにすることを求めていました。
17日の参院予算委員会で日本共産党の小池晃書記局長は、今回のようなやり方で被告の国が終結させた国家賠償訴訟は在日米軍関係の情報公開をめぐる事案など過去4件のみで、いずれも詳細が判明するのを避けるためだったと指摘しました。小池氏は首相に雅子さんに会って謝罪し説明することを求めましたが、首相は応じませんでした。「真摯(しんし)に説明する」(首相)は言葉だけなのか。国が裁判での解明の道を閉ざす姿勢である以上、佐川元局長らを国会に呼び、真相をただすことは不可欠です。
放置できない国政私物化
「森友」問題は、安倍晋三元首相の国政私物化の象徴の一つです。国有地格安払い下げにからんで妻・昭恵氏らの名前が浮上した際、「私や妻が関係していれば首相も国会議員も辞める」と全面否定した安倍氏の答弁が、公文書改ざんや虚偽答弁という前代未聞の事態の引き金になったとされます。公文書改ざんとともに格安払い下げの経過や政治家らの関与を究明することが求められます。第2次安倍政権以来噴き出した数々の疑惑にフタをする岸田政権の責任をただし、国民に信頼される政治に転換することが重要です。
森友訴訟「夫はまた国に殺された」 赤木さん妻 抗議文提出
しんぶん赤旗 2021年12月18日
学校法人森友学園への国有地売却をめぐり、公文書の改ざんを強要され自ら命を絶った財務省近畿財務局の職員赤木俊夫さん=当時(54)=の妻雅子さんが17日、国を訴えた訴訟が国による「認諾」で突如終結したことを受け、財務省に自筆の抗議文を提出しました。抗議文は「真相を隠すために認諾をしたのでしょう」「夫はまた国に殺されてしまった」としつつ、認諾に至った経緯や理由の説明を求めています。
この日夕刻、雅子さんはコート姿で財務省前に到着。代理人弁護士ら3人と省内に入りました。
抗議文の提出後、雅子さんは報道陣の取材に応じました。国による認諾で俊夫さんの死の真相解明が困難になったことについて「言いたくないが、やはり『ふざけんな』と思う」「大きなフタを大きな穴の底に落とされ、重い重りを乗せられたようだ」と憤りました。
一方で「これからも弁護士と協議しながらたたかっていく」「負けるつもりはない」とも語りました。
雅子さんは国と佐川宣寿・元財務省理財局長を相手取り、2020年3月に賠償を求めて大阪地裁に提訴。全面的に争う姿勢だった国は今月15日、一転して請求を認め、訴訟を終結させました。
雅子さん側は真相解明を進めるため、同省理財局幹部などの証人尋問を求める方針でしたが、国がこれを阻んだ形です。
訴訟のうち、佐川氏に賠償を求めた部分は継続しています。
ふざけるなと言いたい 真相隠しは許さない…
赤木雅子さんの抗議文
自死した近畿財務局職員赤木俊夫さんの妻、雅子さんが17日、財務省に提出した抗議文は以下の通りです。
◇
私の国に対する損害賠償の裁判は、国が認諾したことで終わりました。
国が認諾したことについて、私は強く抗議します。ふざけるなと言いたいです。こんな形で終わってしまったことが悔しくて仕方ありません。
この裁判は、夫がなぜ死んだのかを知るための裁判でした。でも、国の認諾によってもう知ることができません。そのようなことでは、またきっと夫と同じように自殺に追い込まれる公務員が出てくるでしょう。自分で何があったのか説明したがっていた夫も、とても悔しがっていると思います。
国の認諾は、不意打ちですし、あまりに酷(ひど)いと思います。裁判官も知りませんでした。国は、これ以上裁判が進むと事実が明らかになっていくので、真相を隠すために認諾をしたのでしょう。本当に酷いと思います。
私は夫が国に殺されたと思っています。そして認諾によって夫はまた国に殺されてしまったと思います。夫は遺書で「最後は下部がしっぽを切られる。なんて世の中だ」と書いています。また認諾によってしっぽを切られたのだと思います。
私も夫も国の認諾は絶対に許しません。国は夫が亡くなったことと認諾したことについて、私に謝罪すべきですし、認諾するようになった経緯や理由を説明すべきです。
森友遺族・夫の死を巡る法廷闘争記
裁判打ち切りの抗議文を提出した雅子さんとは「同席しない」と言い放った財務省の卑劣さ
相澤冬樹 日刊ゲンダイ 2021/12/18
公文書改ざんで夫を亡くした赤木雅子さんに対し、突然「賠償を全額払う」と言いだし、裁判を一方的に打ち切った財務省。「真相を知られないため国はそこまでするのか!」と世の中に衝撃が走った。
なぜこんな卑劣な行動に走ったのか? 立憲民主党は急きょ財務省の担当者から事情を聴く緊急ヒアリングを17日開いた。たまたまその日、雅子さんは、同じように親族を亡くした人たちと会うため東京に来ていた。以前から面識のある立憲民主党の階猛衆院議員からの招きで、ヒアリング会場に詰めかけた野党議員と報道陣の前で語った。
「よく、野党やマスコミの追及のせいで夫が死んだと言う人たちがいます。それは違います。夫が亡くなったのは改ざんをさせられたからです。夫は改ざんの直後から精神的におかしくなっていきました。私は夫の一番そばにいて、夫が苦しみ“壊れていく”姿を1年間、ずっと見ていたんです」
「夫は財務省に殺されたと私は思っています。今回、無理やり裁判を終わらせられたことで、夫を再び殺されたという思いです」
静かだが深い憤りのこもった言葉が、会場の人々に染み渡った。
■「裁判の相手だから」の一点張り
その時、財務省の担当者は室内にいなかった。雅子さんと議員との質疑応答が終わり、雅子さんが退席すると、入れ替わりに室内に入って席についた。ここで階議員が尋ねた。
「たった今、赤木雅子さんがここで思いを語ってくれました。その思いを財務省の皆さんにも一言聞いてほしいそうです。この席に再び招いて少し話してもらってもよろしいですよね?」
ただ聞くだけでいいのだ。答えは求めていない。ところが財務省の担当者は……。
「そういうことであればいったん退席させていただきます。(雅子さんと)同席することは避けさせていただきます」
理由を尋ねても「裁判の相手だから」の一点張り。自分たちで裁判を終わらせておきながら、今度は別の情報開示をめぐる裁判を理由に同席を拒否した。その後のヒアリングでも裁判を終わらせた理由について「いたずらに長引かせないため」としか言わない。だが、ここまでいたずらに長引かせたのは彼らの方なのだ。
この後、雅子さんは弁護団とともに財務省を訪れ、打ち切りに対する抗議文を手渡した。最後に「必ずお返事をくださいね」とお願いしたが、明確な答えは返ってこなかった。
何も説明せずに幕引きを図る卑劣さと不条理。人々の「許せない」という声で事態を動かしたいと願う。
相澤冬樹 ジャーナリスト・元NHK記者
1962年宮崎県生まれ。東京大学法学部卒業。1987年NHKに記者職で入局。東京社会部、大阪府警キャップ・ニュースデスクなどを歴任。著書『安倍官邸vs.NHK 森友事件をスクープした私が辞めた理由』(文藝春秋)がベストセラーとなった。