2021年12月9日木曜日

政府の検査体制が後退 「モニタリング」も「社会検査」も休止に

 政府は11月12日80回新型コロナ感染症対策本部会議を開き、「検査抜本的に拡充する。健康などの理由でワクチン接種できない人は予約無しに、無料で検査を受けられるようにするとともに、感染拡大時には、ワクチン接種者を含め、無症状者でも無料で検査を受けられるようにする」と決めました。公約した筈のPCR無料検査には、いきなり健康などの理由でワクチン接種を出来なかった人」や「感染拡大時」ということに限定されたのでした。

 岸田首相はオミクロン株に対して3回目のワクチン接種を前倒しすることで対応しようとしているようですが、海外では3回接種済の人もオミクロン株に感染しています。西浦博・京大教授によれば同株の実効再生産数はデルタ株の4・2倍、南アフリカでは感染予防効果が10~20%程度に落ちていた可能性があるということで、そうであれば3回目のワクチン接種では何の決め手にもなりません。
 しんぶん赤旗が、「政府の検査体制 後退 モニタリングも社会検査も休止 ~ 」とする記事を出しました。
 モニタリング検査は、感染リスクの高い繁華街や駅などで無症状者を対象にPCR検査を行って実施感染拡大の予兆を早期に発見するものですが、政府は「用意した検査キットも上限に達するため終了としました。
 またこれまで高齢者施設などでの定期的な検査を実施する「社会的検査」各自治体に計画の策定や実施の要請していたのですが、それも終了しました。第5波で欧州並みのコロナの致死率を出した大阪府は、それを受けて11月に「今後は有症状者や陽性者への対策に重点をおく」などとして「社会的検査」を休止しました。これではまた第5波の悲劇が再来しかねません。
 別掲の記事のとおり「オミクロン株『水際対策』は穴だらけ」という指摘がありますが、これも改善する動きがありません。
 先日の所信表明ではまたもや新型コロナ対策の抜本的拡充を強調しましたが、あれをやるこれをやるだけの話はもう聞き飽きました。一刻も早く国民が安心できる検査体制や隔離治療体制を整えて欲しいものです。
 しんぶん赤旗の記事を紹介します。
 併せて毎日新聞の記事「オミクロン株の広がりやすさ『デルタの4倍』 西浦教授グループ」を紹介します。
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政府の検査体制 後退 「モニタリング」も「社会検査」も休止
首相「抜本的拡充」に逆行
                       しんぶん赤旗 2021年12月8日
 政府が新型コロナウイルスへの対応における検査体制について、第5波のあった今夏以降、国の主導で行っている検査や、自治体に要請していた検査などを後退させていることがわかりました。岸田文雄首相が総裁選以降、「無料検査を抜本的に拡充する」とうたう言葉とは、逆行する動きです。(田中智己)
 内閣官房が取り組んでいた、感染拡大の予兆を早期に発見するための「モニタリング検査」は撤退。高齢者施設などでの定期的な検査を実施する「社会的検査」も各自治体に計画の策定や実施の要請を終了しました。
 内閣官房の担当者によると、モニタリング検査は今年7月ごろに電通テックと契約しましたが、契約終了時期に伴い、用意した検査キットも上限に達するため終了するといいます。
 モニタリング検査は、感染リスクの高い繁華街や駅などで無症状者を対象にPCR検査を実施していました。感染拡大の予兆をつかむための対策とはなっていないとの指摘もある一方、抜本的な拡充をすれば十分に有効な検査となり得ると評価する専門家の声もありました。
 社会的検査は政府が緊急事態宣言解除を決定した9月28日、新型コロナ対策の基本的対処方針を変更し、高齢者施設などでの検査について、「(中略)(自治体に対し)集中的実施計画に基づく検査を定期的に実施するよう求め~(後略)」とする文言を削除。社会的検査の計画策定や実施について、自治体への要請を終了しました。

自治体に影響
 この対処方針の変更に基づき、自治体にも休止の動きが出始めています。大阪府は11月末に高齢者施設などに対する定期的なPCR検査を休止しています。府は、「今後は有症状者や陽性者への対策に重点をおく」などとしており、再開の検討については、「感染が拡大し、緊急事態宣言が発令されたときには検討する可能性はある」と消極的な姿勢です
 岸田首相は所信表明演説で、ふたたび「無料検査の拡充」を語り、補正予算案に3200億円を計上したとアピールしました。ただし、実際には健康上の理由によるワクチン未接種の人を対象に限定。感染拡大時には、無症状でも無料検査を受けられるようにするとしましたが、感染が拡大する前の感染防止のための検査ではなく、後手の対応にとどまっています。
 予算案に計上した3200億円は、地方創生臨時交付金です。同交付金は、各自治体による感染拡大防止やコロナ禍の影響を受けている地域経済、住民生活を支援するために交付されるものです。政府が抜本的に拡充することをうたいながら、検査体制の拡充は地方自治体に丸投げというのが実態です。

医師から批判
 群星(むりぶし)沖縄臨床研修センター長の徳田安春医師は、「政府の検査体制は後退している」と指摘します。岸田首相が掲げる「無料検査」については、「基本的にワクチン未接種の人が対象だ。ワクチンを打ったからといってブレークスルー感染などがある以上、接種済みの人にも検査は不要にはならない。政府発表では、まるで拡充しているように見えることも問題だ」と厳しく批判します。


オミクロン株の広がりやすさ「デルタの4倍」 西浦教授グループ
                            毎日新聞 2021/12/08
 新型コロナウイルスの新たな変異株「オミクロン株」について、南アフリカで初めて確認された際は1人が平均何人に感染させるかを表す「実効再生産数」がデルタ株の42倍だったことが西浦博・京都大教授(理論疫学)のグループの解析で分かった。西浦教授は「オミクロン株の実際の広がりやすさには、免疫を逃れ感染する性質を持っていることが関連しているだろう」と分析する。
 8日に開かれた厚生労働省の専門家会議「アドバイザリーボード」で報告された。南アフリカのハウテン州で、9月中旬から11月末までに感染が確認され、ゲノム(全遺伝情報)解析された217人分のデータを基に、実効再生産数を比べた。
 オミクロン株が確認された11月、南アフリカではワクチン接種率は3割未満だったが、接種を受けていない人もほとんどが自然感染して免疫を獲得していたとみられ、デルタ株の実効再生産数は1を下回っていた。西浦教授は、オミクロン株は免疫から逃れる性質を持っており、南アフリカでは免疫による感染予防効果が10~20%程度に落ちていた可能性を指摘した。
 実効再生産数は「ある場所や条件のもとでのウイルスの広がりやすさ」を示す数字で、1人が免疫のない人の集団で平均何人に感染させるかを表す「基本再生産数」とは異なる。オミクロン株の「感染力」そのものはまだデータがないという。西浦教授は「ワクチンの接種率が高い集団でもオミクロン株が流行する可能性は十分にある」と指摘。その上で、米ファイザー製やモデルナ製のメッセンジャーRNAワクチンの接種率が高い国で「南アフリカと同じようなことが起こるのか注視が必要だ」と語った。【金秀蓮】