2021年12月3日金曜日

オミクロン株の猛襲を招く貧弱な早期発見体制

 岸田政権は発足時に、コロナ対策を最重要課題に掲げPCR検査を無料で受けられるようにすると明言しましたが、2ヶ月が経つのにいまだに実施されたとは聞きません。これでは菅前政権と変わりません。

 そんな風にグズグズしているうちに、新型コロナ変異株「オミクロン株」国内2例目が見つかりました。日本でもオミクロン株が市中に広がるのは時間の問題とされています。
 少しでも市中感染を食い止めるためには、やはり「感染者を早期に発見し、確実に隔離するしかありません。ところが日本は早期発見のための検査体制が極めて貧弱です。何よりも最前線の空港での検査体制に問題があります。
 厚労省は昨年7月末、空港検疫の検査をPCR検査からより簡便で迅速にできる抗原定量検査に変更しましたその理由を「厚生科学審議会感染症部会は、抗原定量検査は無症状者についてはPCR検査と同等の結果が得られると報告している」からとしていますが、医療ガバナンス研究所理事長の上昌広氏は、「審議会の結論は医学的に間違いです。PCR検査はウイルス量が数個から数十個で陽性を感知しますが、国立感染症研究所も抗原検査はウイルス量が500個以下では検出できないと公表しています。オミクロン株の上陸を絶対に阻止すべき局面で抗原検査にこだわるのは理解に苦しみます」と述べています。
 無症状者にはウィルス量が少ない可能性が高いので、「無症状者についてはPCR検査と同等の結果が得られる」筈はなく、迅速に結果が出るからでは済まされません。
 もう一つ重要なことは、「全検体ゲノム解析」を実施してオミクロン感染を識別することです。感染者が膨大になれば無理ですが、今の段階であればそれは可能だということです。
 共産党の小池晃書記局長は29日記者会見で、水際対策強化は「当然の措置だ」とし、「全力でオミクロン株の性質や危険性を解明することが必要だ」と述べ入国検査をPCR検査に戻すとともに、オミクロン株を検出するゲノム解析も可能な限り全例で実施すること、そして医療・検査体制の確立を求めました。
 日刊ゲンダイの2つの記事を紹介します。
追記)LITERAも1日付で「岸田首相のオミクロン対策はザルだ! しかも入国禁止は外国人だけで  」を発表しています。字数の関係で割愛しますので、興味のある方は緑字のタイトルをクリックし原文にアクセスしてください。
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オミクロン株の猛威を招く貧弱な早期発見体制…岸田政権は「全検体ゲノム解析」の早期実施を!
                           日刊ゲンダイ2021/12/02
 新型コロナウイルスの変異株「オミクロン株」は、早くも国内で2例目が見つかった。海外では市中感染が相次いでいる。日本でもオミクロン株が市中に広がるのは時間の問題とされる。少しでも市中感染を食い止めるためには、感染者を早期に発見し、隔離するしかない。ところが、日本は早期発見のための検査体制が極めて貧弱だ。このままでは、あっという間にオミクロン株が国内に蔓延しかねない。
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 オミクロン株は、いったん市中に入ると急激に広がる。南アフリカでは11月上旬までデルタ株が主流だったが、わずか3週間でほぼ100%オミクロン株に置き換わった。デルタ株が下火だったため、新たな変異株が優勢になるのも早かったのだ。現在、デルタ株が収まっている日本も他人事ではない。
 南ア以外でも市中感染が次々と確認されている。英スコットランドで感染が確認された9人は、最近の海外渡航歴がなく、先月20日の私的イベントで集団感染したとみられている。南アが世界保健機関(WHO)にオミクロン株を初めて「報告」した同24日よりも前だ。

海外で市中感染相次ぐ
 オランダでも「報告」前の19日と23日に採取された検体からオミクロン株が検出された。ドイツでは海外渡航歴のない男性の陽性が判明し、イスラエルやオーストラリアでも市中感染が確認されている。
 オミクロン株は各国に根を張りつつあるのだ。
 市中に入ってしまった以上、オミクロン陽性者を早期に発見し、隔離することで感染拡大を食い止めるしかない。コロナ陽性者がオミクロン株に感染しているのかどうか判断するには、検体をゲノム解析する必要がある。
 感染拡大を阻止するためには、すべての検体をゲノム解析するしかない。ところが、日本のゲノム解析の対象は、陽性者のわずか5~10%。ゲノム解析件数の引き上げについて、後藤厚労相は「能力を最大限発揮して実施してもらう」とテキトーなことを口にしている。「全数」でなければ、隠れオミクロン陽性者がウイルスを拡散するのは目に見えている。

仙台市は全検体ゲノム解析
 陽性者の全数ゲノム検査は難しいのか。仙台市は今後、すべての感染者の検体をゲノム解析する方針だ。仙台市に聞いた。
「次世代シーケンサーを導入し、今年8月から市の衛生研究所でゲノム解析ができるようになりました。今夏のような感染爆発だと、陽性者の全検体のゲノム解析は難しいが、感染が収まっている今なら十分対応できます。全数ゲノム解析により、オミクロン感染者を早期に見つけ、感染拡大をさせないつもりです」(感染症対策室)
 次世代シーケンサーは、それほど高額ではない。仙台市は2000万円で購入したそうだ。1回で25人分処理できる。1回あたり経費が1万円かかるが、1人あたり400円程度だ。結果判明まで3~5日要し、1週間で50人分のゲノム解析ができる。
 岸田首相は市中感染を最小限に食い止める気があるなら「全数ゲノム解析」を実施すべき。ハードルは高くない


オミクロン株“高速上陸”で日本での感染拡大に打つ手なし…
ワクチン3回目接種も無意味か
                          日刊ゲンダイ 2021/12/01
 早くも日本上陸を許してしまった。松野官房長官は30日、アフリカ南部のナミビアから入国した30代男性が、新型コロナウイルスの変異株「オミクロン株」に感染していたと発表した。南アフリカ発のオミクロン株の国内確認は初めて。アフリカから欧州、アジア、北米へと伝播した感染力に、コロナ対策を最重要課題に掲げる岸田政権は打つ手なしだ。
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 オミクロン株感染が確認された男性はナミビア国籍の外交官で現在、医療機関に隔離中だ。「感染者の同行者、または飛行機の隣席などの濃厚接触の疑いがある方はすでに把握し、保健所などに連絡している」(松野官房長官)という。
 南アで先月11日に初めて確認されてから、わずか1カ月足らず。日本にまで到達したスピードには驚かされる。先月24日に南アがWHO(世界保健機関)に新たな変異株として初めて報告。2日後にWHOが「懸念される変異株(VOC)」に指定したばかりだ。
 外国人の新規入国を原則停止した日本を含め、各国が水際対策に力を入れる中、世界中で感染例が相次いでいる。オランダの通信社「BNOニュース」によれば、感染例は11月30日までに、アフリカと欧州を中心に18の国と地域で205件。感染疑いは1300件を超えた。
 震源地となった南アのハウテン州では先月、1週間の新規感染者数が135人(8~14日)から580人(22~28日)へと、わずか2週間で4倍超に急増。驚異の感染力は「世界で猛威を振るうデルタ株以上」と指摘する専門家もいるほどだ。

ワクチンの有効性「大きく下がる」
 心配なのは従来の新型コロナワクチンへの影響だ。
 英紙フィナンシャル・タイムズ電子版(30日付)によると、米モデルナ社のバンセルCEOはオミクロン株に対する既存ワクチンの感染予防効果について、「デルタ株に対するものと同じ水準ではない」「(有効性は)大きく下がると思う」と発言。
 米ファイザー社のブーラCEOは29日、米テレビ番組で「現在のワクチン効果が(オミクロン株に対して)もし低下するのであれば、新たなワクチンを作らなくてはならない」とし、「100日以内にできるだろう」との見通しを示した。
 実際、ワクチン先進国のイスラエルでは、3回目接種を終えた医師2人がオミクロン株に感染した疑いが浮上。日本は1日から3回目の追加接種が始まったが、2回目との間隔は「原則8カ月以上」に固執。世界基準から後れを取っている上、オミクロン株が追加接種の効果もブチ破ってくるとなれば、岸田政権は感染再拡大に打つ手なし。追加接種自体が無意味にも思える。

総額1兆3239億円もの予算は“塩漬け”必至
「最重要の水際対策も、入国する日本人は隔離期間が短く、対策に穴がある。国外ではオミクロン株の空気感染や市中感染の事例が報告されており、国内でも同じことが起こり得る。もしそうなれば、ワクチンの感染予防効果が完全ではない以上、第6波を防ぐ手だてはありません。追加接種は『原則8カ月以上』だから、ますます感染再拡大を招きかねない。オミクロン株に有効な新たなワクチンが開発されたとしても、世界との争奪戦に負けた日本が、速やかに確保できる保証はありません」(西武学園医学技術専門学校東京校校長の中原英臣氏=感染症学)
 政府は感染状況を見ながら、来年2月をメドに「Go Toキャンペーン」の再開をもくろむ。オミクロン株の猛威を前に、総額1兆3239億円もの予算は“塩漬け”必至。何とか感染対策に回せないものか。