財政をめぐって安倍元首相と麻生副総裁が主導権争いを繰り広げているということです。
10月の衆院選直前、月刊「文芸春秋」11月号に財務省の矢野事務次官がバラマキ批判のいわゆる“矢野論文”が掲載されましたが、安倍元首相がこれに激怒し高市政調会長の下に財政再建派と対決するための「財政政策検討本部」(本部長は西田昌司議員)を作らせました。
これに対し岸田総裁(首相)は12月7日、直属組織として「財政健全化推進本部」(最高顧問は麻生氏、本部長は額賀福志郎議員)を党内で始動させました。
党内に2つの「財政本部」が並び立ったわけで、安倍氏と麻生氏の盟友関係は終わりました。麻生氏は軸足を安倍氏から岸田氏に移し、岸田氏も麻生氏、茂木幹事長と3人で定例会合を持ちながら政権運営を進めています。麻生派と岸田派が合流する『大宏池会構想』が行われれば安倍派を凌ぐ勢力になるという含みです。
二人がつばぜり合いをするのは自由ですが、8年余りもアベノミクスという放漫財政を演じた本人がいまさら「財政政策検討本部」を作るとは呆れるし、「GDP比2%の防衛費を全力で確保」するとして、財政破綻の最大要因をモノともしない姿勢では何の説得力もありません。
これは岸田氏側も全く同じで悪い冗談という部類でしょう。
日刊ゲンダイの記事を紹介します。
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予算めぐり「安倍vs麻生」つばぜり合い激化
自民党内に財政本部2つ発足の異様
日刊ゲンダイ 2021/12/19
自民党内で、安倍元首相と麻生副総裁の対立が話題になっている。財政をめぐって主導権争いを繰り広げているのだ。
「10月の衆院選直前に、財務省の矢野事務次官がバラマキ批判のいわゆる“矢野論文”を月刊誌に寄稿した。これに激怒したのが積極財政派の安倍元首相で、高市政調会長の下に財政再建派と対決するための“本部”をつくらせたのです。一方の麻生副総裁も、財政健全化の推進本部を党内に立ち上げました」(自民党事情通)
先に動いたのは安倍氏と高市氏だ。臨時国会に先立つ11月29日、それまで政務調査会に設置されていた「財政再建推進本部」を改組して、高市氏が顧問を務める「財政政策検討本部」を発足させた。安倍氏を最高顧問に担ぎ、本部長には安倍側近で積極財政派の西田昌司参院議員が就任。「GDP比2%の防衛費を全力で確保」など勇ましいテーマを掲げて、積極財政を訴える。
これに対し、12月7日には岸田総裁(首相)直属組織として「財政健全化推進本部」が党内で始動。こちらの最高顧問は麻生氏で、本部長には額賀元財務相が就いた。
「“安倍財政本部”に対抗するため、麻生副総裁から指示を受けた財務省の茶谷主計局長が官邸に根回しして、あっという間に立ち上げた。茶谷氏は麻生前財務相のお気に入りで、額賀元財務相の秘書官を務めたこともある。“麻生財政本部”は財務省が全面的にバックアップしています。総裁直属機関なので、“安倍本部”より格上の体裁になっている。初会合には岸田総理も駆けつけて挨拶していました」(財務省関係者)
「盟友関係は終わった」
党内に2つの「財政本部」が並び立ち、安倍氏と麻生氏がつばぜり合いを繰り広げている。
安倍長期政権を支えたのが麻生氏との盟友関係だったが、最近の麻生氏は軸足を安倍氏から岸田氏に移している。岸田氏も麻生氏、茂木幹事長と3人で定例会合を持ちながら政権運営を進めていく意向だ。
「安倍さんは政権中枢の意思決定から外され、安倍・麻生の盟友関係は完全に終わった。岸田総理の後ろ盾として、麻生副総裁は党本部で幹事長より偉そうにしていますよ。麻生派と岸田派が合流する『大宏池会構想』で最大派閥の安倍派を封じ、党内を掌握するつもりでしょう」(自民党中堅議員)
来年度予算編成を控え、安倍氏と麻生氏の覇権争いはますます激化しそうだ。