2021年12月20日月曜日

核兵器先制不使用宣言を 米科学者ら700人 大統領に書簡

 米政権が間もなく発表する「核態勢の見直し」の中で核兵器「先制不使用」を宣言するよう求める、「米国科学アカデミー」や米科学者団体「憂慮する科学者同盟」などに所属する科学者ら約700人が署名した書簡をバイデン米大統領に送りました。

 その中で、米国が先制不使用を約束することは「核兵器の役割を減らすうえで不可欠だ」と強調し、「紛争や危機が核戦争に発展する可能性を減少させる」と指摘しました。
 しんぶん赤旗が報じました。
 核兵器先制不使用宣言に関しては、米オバマ政権が16年に広島を訪れた際にそれを発出することを検討したのですが、当時の安倍首相が強硬に反対したため断念した経緯があります。この件は米紙などの報道で伝えられていましたが、日本政府は一貫して沈黙を貫いてきました。
 松野博一官房長官は10日の記者会見で、米国のバイデン政権が検討を進めている「核兵器の先制不使用」政策について、一般論とした上で「核の先行不使用宣言は全ての核兵器国が検証可能な形で同時に行わなければ有意義ではない」と、改めて否定的な見解を示しました。先行不使用宣言を全ての核兵器国が検証可能な形で同時に行えるならば、それは理想的ですがその状態になるまで宣言を出すべきでないというのは間違いです。
 関連する記事を併せて紹介します。
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核兵器先制不使用 宣言を 米科学者ら700人、大統領に書簡
                       しんぶん赤旗 2021年12月19日
 【ワシントン=島田峰隆】ノーベル賞受賞者21人を含む約700人の科学者らが16日、バイデン米大統領に対する連名の書簡を発表し、政権が間もなく発表する「核態勢の見直し(NPR)」の中で核兵器「先制不使用」を宣言するよう求めました。戦略核兵器の配備数を1000発未満に減らすことも要請しました。
 書簡には、非営利学術団体「米国科学アカデミー」や米科学者団体「憂慮する科学者同盟」(UCS)などに所属する科学者や技術者らが署名しました。
 書簡は「核兵器の危険に深く憂慮している」と強調。軍縮に向けて核不拡散条約(NPT)の義務を遂行しなければならないとしています。
 米国が先制不使用を約束することは「核兵器の役割を減らすうえで不可欠だ」と強調。「紛争や危機が核戦争に発展する可能性を減少させる」と指摘しました。
 また戦略核兵器の弾頭数削減は、中国やロシアとの間で悪化する核軍拡競争を鈍らせ、「米国の安全保障を強める」と述べています。
 大統領だけが核兵器の使用を命じる権限を持つ仕組みの変更や、2029年から始まる大陸間弾道ミサイル(ICBM)の更新の延期も提案しました。
 書簡に署名したノーベル物理学賞受賞者のジェローム・アイザック・フリードマン氏はUCSの発表文で、「世界中に大量にある核兵器が人類の存続に与える脅威は、核兵器を大きく減らし、最終的に廃絶することによってのみ対処できる」と述べました。

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 以下関連記事です
首相、核先制不使用に反対 米に伝達 米紙報道
                         共同通信 2016年8月16日
 米紙ワシントン・ポストは十五日、オバマ米大統領が検討している核兵器の先制不使用を巡り、安倍晋三首相がハリス米太平洋軍司令官に「北朝鮮に対する抑止力が弱体化する」として、反対の意向を伝えていたと報じた。
 同紙によると、首相は最近、ハリス氏に対して、オバマ氏が核兵器の先制不使用を宣言した場合、北朝鮮などの国への抑止力が低下し、地域紛争のリスクが高まるとの懸念を直接、伝達したという。


【独自】核兵器の先制不使用案は「日本の反対で断念」 オバマ政権元高官が証言
                          東京新聞 2021年4月6日
【ワシントン=金杉貴雄】米オバマ政権が2016年に検討した核兵器の先制不使用宣言に関し、国務省の核不拡散担当だったトーマス・カントリーマン元国務次官補が本紙の取材に対し、対中抑止力の低下を懸念した日本政府が反対したことが宣言を断念した最大の要因だったと証言した。日本が反対していたことはこれまで米紙などの報道で伝えられていたが、日本政府は一貫してコメントを差し控えてきた。今回、当時政権内にいた米元高官が認め、裏付けられた形だ。
 核の先制不使用 敵の核攻撃を受けない限り、核兵器を使用しないとする政策。米ロ英仏中の5大核保有国では中国のみが宣言。ほかの核保有国ではインドも一部条件付きで宣言している。核攻撃に対する抑止や反撃のみを核兵器の「唯一の目的」に限定することでも、先制不使用宣言と同様の効果があるとの指摘がある。(後 略)


核先制不使用 否定的な見解 官房長官
                         中國新聞 2021年11月11日
 松野博一官房長官は10日の記者会見で、米国のバイデン政権が検討を進めている「核兵器の先制不使用」政策について、一般論とした上で「核の先行不使用宣言は全ての核兵器国が検証可能な形で同時に行わなければ有意義ではない」と否定的な見解を示した被爆国政府のスポークスマンが核抑止力を肯定したと受け取れる発言をしたことは、「核なき世界」を求める各国の落胆や被爆者の反発を招く恐れがある。
 先制不使用政策については、米国の「核の傘」の下にある日本や北大西洋条約機構(NATO)などの同盟国が、核保有国の中国やロシアに対する抑止力が低下することを警戒している。
 松野氏は「現在の安全保障環境では、当事国の意図に関して検証方法がない形による核の先行不使用の考え方に依存し、日本の安全保障に十全を期すことは困難だ」と述べた。
 バイデン政権は新たな核戦略指針「核体制の見直し(NPR)」の取りまとめに当たり、日本など同盟国から意見を聴取したとされる。松野氏は米国に先制不使用政策採用の懸念を伝えたのかどうかを問われたが、安全保障や米国との関係性を理由に「差し控える」とした。
 先制不使用政策を巡っては「核なき世界」を掲げたオバマ政権が2016年に検討したが、日本など一部の同盟国の反対を,受けて断念した。バイデン氏は当時副大統領だった。(口元惇矢)


米が核先制不使用宣言なら積極的意義 否定する日本政府を批判
志位委員長が会見
                      しんぶん赤旗 2021年11月12日
 日本共産党の志位和夫委員長は11日、国会内で記者会見し、バイデン米政権が行っている「核態勢の見直し(NPR)」に盛り込まれるかどうかが焦点になっている核兵器の「先制不使用」に関連して、日本政府が先制不使用宣言を否定する態度をとっていることを厳しく批判しました。
 志位氏は、松野博一官房長官が10日の記者会見で、日本政府が宣言しないよう水面下で働きかけているとの一部報道について問われた際に、まともに答えず、否定しなかったと指摘。さらに松野長官が「一般論として、全ての核兵器(保有)国が検証可能な形で同時に行わなければ有意義ではない」と述べたことに触れて、「先制不使用宣言を否定する態度をとった。極めて重大だ」と批判しました。
 志位氏は、「米国のような核兵器大国が、先制不使用政策を宣言すれば、それ自体、核戦争のリスクを減らす積極的な意義をもつ」と強調。「日本政府の立場は、唯一の戦争被爆国の政府として決して許されない恥ずべき立場だ」と批判しました。(後 略)


主張 核兵器先制不使用 岸田政権の反対姿勢許されぬ
                       しんぶん赤旗 2021年11月18日
 松野博一官房長官が先週の記者会見で、核保有国による核兵器の先制不使用宣言を否定する態度をとったことが批判を呼んでいます。核兵器使用の可能性を少しでも軽減させる措置に異を唱えることは、唯一の戦争被爆国の政府としてあるまじき立場です。岸田文雄政権は姿勢を改めるべきです。

積極的な部分的措置
 バイデン政権が2022年に策定する新しい核兵器方針「核態勢の見直し(NPR)」に先制不使用宣言が盛り込まれるかどうかが焦点の一つになっています。日本や英、仏などは宣言しないよう水面下で働きかけていると報じられました。10日の記者会見で問われた松野氏は、働きかけの有無には答えず、全ての核保有国が「同時に行わなければ有意義ではない」と一国の先制不使用宣言を否定しました。
 バイデン氏はこれまでも米国の核兵器の「唯一の目的は核攻撃に対する抑止と報復であるべきだ」と述べてきました。核兵器大国のアメリカが「核兵器のない世界の平和と安全」(オバマ元大統領)をめざす姿勢を改めて明確にし、先制不使用を宣言すれば、核軍縮を後押しすることになるでしょう。
 現在、米ロあわせ約2千発の核兵器が常時すぐに発射できる態勢にあります。人為的ミスや装置の不具合から、核使用の一歩手前まで進んだことが過去何度もありました。「先に使われる恐れ」がなくなれば、こうした態勢の解除にもつながります。配備された核兵器を減らす条件も拡大します。停滞する核軍縮交渉にも前向きな影響を及ぼすことになります。
 「核兵器のない世界」が部分的措置の積み重ねだけで実現できないことは、歴史が証明しています。核兵器廃絶を中心にすえた努力が必要であり、核兵器禁止条約はその重要な成果です。同時に、廃絶をめざす過程で、核兵器使用の危険性を減らす措置はそれ自体、積極的な意義があります。
 日本共産党は10年の核不拡散条約(NPT)再検討会議への書簡で、核兵器廃絶の国際交渉の開始とともに、「核軍縮の個々の部分的措置を前進させることは重要」と述べ、先制不使用などの措置の実現を求めてきました。
 もちろん、先制使用でなく、報復なら核兵器を使っても良いということではありません。壊滅的で非人道的な結果をもたらす核使用は、いかなる場合でも絶対に許されません。
 日本政府は、オバマ政権の核政策見直しの際(16年)にも「安全保障上の懸念」を理由に先制不使用宣言に反対しました。再びこれを阻もうとする岸田政権の立場が厳しく問われます。(後 略)