2021年12月12日日曜日

自民党改憲案の大ウソ暴け 憲法学者 小林 節 さん

 しんぶん赤旗日曜版12月12日号に憲法学者 小林節さんのインタビュー記事「自民党改憲案の大ウソ暴け」が載りました。

 自民党の改憲の本音は安倍晋三氏が主導して2012年に作成した「自民党 日本国憲法改正草案(2012年公開版)」に余すところなく記述されています。しかしそれは戦前の大日本帝国憲法とそっくりなので到底国民の支持は得られないとして、安倍政権の時に、当面は4項目の改憲(①自衛隊明記 ②緊急事態条項創設 ③参院の合区解消 ④教育の充実)に絞ることに変えました。
 では軽微な改憲になったのかと言えばそんなことはありません、憲法に
 ①必要な自衛のための実力組織として、自衛隊を保持する″と明記されれば、「自衛のために必要」という口実にすればすべての軍事行動が可能になり、戦争放棄・専守防衛という9条の歯止めはなくなります。
 また、②緊急事態時に内閣に立法権が与えられることになれば、内閣に全権力が集中するのでかつてヒトラーが全権委任法によって獲得した独裁政権の再現が可能になります。
  ③参院の合区解消 と ④教育の充実 は、どちらも「法律」を改正(教育については予算措置も)すれば済む話しで改憲など不要であるとして、小林さんはさらに
「改憲案を分析すればするほど、その愚かさがわかります。改憲案の危険で愚かな中身が広まれぱ、自民党は国民投票で否決されることを恐れて、改憲を政治日程から外すでしょう」と述べています。言われてみればそれこそが改憲を阻止する有力な手段です。
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憲法改悪〝自分の手で”と岸田首相
  自民党改憲案の大ウソ暴け 憲法学者 小林  さん
                  しんぶん赤旗日曜版 2021年12月12日号
 岸田政権は、憲法9条改定にむけた動きを加速させています。
 憲法学者の小林節さんに聞きました。  田中倫夫記者

 総選挙の結果、衆院では自民党、公明党、日本維新の会の改憲勢力で、改憲の発議に必要な3分の2の議席を確保しました。
 岸田文雄首相は、これまで改憲には慎重とされてきた自民党宏池会(旧宮沢派)の流れにあるとみられてきました。しかし、総裁後は「党是である憲法改正を進める」と公言するようになりました。もともとは総裁選で安倍音三元首相の応援を得るためのものであったようです。でも、自分の手でやれそうだと、安倍氏の「お株を奪う」考えを持ってきたのではないのでしょうか。

彼らの言い分冷静に分析し 徹底的に弱点つくたたかい必要

大軍拡の背景は
 大軍拡も進めようとしています。自民党は総選挙で防衛費のGDP(国内総生産)比2を打ち出しました。今回の補正予算案と21年度当初予算の合計で、防衛費が初めて6兆円を超え、歴代内閣が目安としてきたGDP(国内総生産)比1%を超えます。
 これは、集団的自衛権を認めた安保法制のもとで、自衛隊が米軍の「2軍」として世界に展開するためと、自衛隊が海外に展開することにより、日本防衛が手薄になる分だけ防衛費を拡大するというもので、この発想自体がとても危険です。
 国会で、維新の会と国民民主党が改憲論議の「加速」を言っていることも重大です。
 総選挙を受けて局面は一変し、改憲勢力は国民投票まで一気に突き進もうとしています。
 中国の覇権主義と軍事的脅威を利用しようとする改憲派の巧みな宣伝にも警戒が必要で
す。
 状況は甘くありません。改憲の中身の論議を回避して手続きやその他の問題で止めようとしても、押し切られます、改憲派の言い分を冷静に分析し、彼らの弱点を徹底的につく論争、運動で、阻止していく必要があります。

【ウソ】=「自衛隊明記」は士気高めるだけ
   ⇒「最小限」なくし海外で無制限に武力行使
 自民党は改憲の条文イメージとして4項目(①自衛隊明記 ②緊急事態条項創設 ③参院の合区解消 ④教育の充実)を示しています。
 狙いは9条改憲などにあります。
 自民改憲案では現行9条に必要な自衛のための実力組織として、自衛隊を保持する″と書き加えます。この「自衛隊明記」について安倍元首相は、自衛隊の権限は何も変わらない、これで隊員の士気を高め国防意識を明示できる、と言ってい
ました。大ウソです。
 政府は自衛隊を「自衛のための必要・最小限度の実力」と説明してきました。それを 「必要な自衛のための実力」と拡大するのです。これまで政府は、海外派兵を「『最小限』を超えるから(原則として)できない…」と説明してきました。その歯止めとしての「最小限」という言葉を外すことは、「海外派兵の合理化」以外のなにものでもありません。海外での無制限の武力行使を可能にするものです。

【ウソ】= 災害対応に「緊急事態条項必要」
   ⇒ 首相に立法権、ナチス全権委任法と同じ
 自民党は、東日本大震災でも、今回の新型コロナの感染拡大でも、「一時的に権力を集中して人権を停止する緊急事態条項があれぱもっと有効な対策ができた」と喧伝(けんでん)しました。
 これも大ウソです。
 「緊急」を口実に政府に権力集中をはかるものです。
 現行憲法の12条、13条の「人権も公共の福祉には従う」の規定を受けて、現に災害対策
基本法、感染症対策基本法などの緊急事態法制(法律)は整備されています。その中では強制入院などの措置も規定されています。要は必要に応じて、法律を執行、または修正すれば済む話です。
 自民党の改憲案では、大災害等で内閣(つまり首相)は、すでに握っている行政権に加えて立法権も掌握することになっています。さかのぽって、2012年の自民党改憲草案では、財政処分権と地方自治体に対する命令権まで首相が手中に収めることになっています。まるで、ナチスの全権委任法です。

【ウソ】= 「参院合区解消」「教育充実」
   ⇒ 法律で対応できること
 「参院合区解消」と「教育の充実」は冗談のようなウソです。
 参院の合区問題は法律で選挙制度改革をすればよい話です。「教育の充実」は、法律と予算を成立させれぱできる問題で、改憲しないとできない問題ではない。真面目な顔して冗談を言わないでほしい。

反対世論広げて
 私はみなさんとは違い、真に必要な改憲のための議論はあり得るとの立場です。しかし、「専守防衛」を崩して海外派兵をする-戦争する国へ歩むことは許されないと思っています。
 彼らの改憲策動を許さないために ▽改憲論議を軽視せず、自民党の改憲案を直視して冷静に分析する ▽そのウソと危険性をあらゆる手段を使って世間に拡散する - ことが必要です。改憲案を分析すればするほど、その愚かさがわかります。
 改憲案の危険で愚かな中身が広まれぱ、自民党は国民投票で否決されることを恐れて、改憲を政治日程から外すでしょう。