2021年12月16日木曜日

空港検疫をなぜ「PCR検査」に変更しないのか(上 昌広氏)

 15日、空港検疫で新たに15人のオミクロン株感染を確認しました。これは7~12日に成田、羽田、関西の各空港に到着し新型コロナ感染が確認された人について、ウィルスのゲノム解析を行って判明したものです。

 空港の検疫は抗原検査なのでウィルス数が少なければ感知できずにすり抜けることになります。国内に入っても症状が顕われないまま社会生活を続ければ当然市中感染が起きます。
 日本は島国なので空港検疫さえしっかりしていれば水際で阻止できる筈なのですが、なぜかそうなっていません。
 医療ガバナンス研究所理事長上昌広氏が、「空港検疫をなぜ抗原検査からPCR検査に変更しないのか」とする記事を出しました。
 これは厚労省ヒアリングでも追及されたのですがそのままになっています。
           ~~~~~~~~~~~~~~~~~~
どうする、どうなる「日本の医」
空港検疫をなぜ「抗原検査」から「PCR検査」に変更しないのか
                      昌広 日刊ゲンダイ 2021/12/14
                         医療ガバナンス研究所 理事長
 オミクロン株の感染が世界中で急拡大している。本稿では水際対策について論じたい。
 11月27日、日本政府は南アフリカと周辺5カ国からの入国者に10日間の待機措置を課し、30日には、全ての外国人の入国を停止するなど対応は迅速かつ厳格だった。ここまで厳格な対応をしているのは日本だけだ。国民は、岸田政権の対応を強く支持している。12月6日に発表された読売新聞の全国世論調査では、水際対策を「評価する」が89%だ。
 私は、この状況に危機感を抱く。正確な情報が国民の間で共有されないまま、強硬策が「独り歩き」しているからだ。たしかに、海外との交流を完全に遮断すれば、オミクロン株は入ってこない。原理的には最も有効な水際対策だ。ところが、このような対策を取っている先進国はない。

 なぜ、日本以外は渡航禁止措置を取らないのか。それは、国内で既にオミクロン株の拡大が確認されているからだ。12月6日現在、オミクロン株が占める割合は米14%、カナダ10%、独23%、仏0.3%、伊02%、英01%だ。急速に拡散している。この状況で、大きな経済ダメージと引き換えに、海外渡航を禁止することは合理的とは言いがたい。
 現在の日本にとって重要なことは、最小限の経済的ダメージで、一人でも多くのオミクロン株の流入を止めることだ。日本がまずやるべきは、空港での検査を抗原検査からPCR検査に変更することだ。厚労省は「PCRと同程度の感度と特異度があることと、現場の負担を考慮した」と説明しているが、これは科学的に正しくない。
 国立感染症研究所が発行する「病原微生物検出情報」の6月号には、神戸市健康科学研究所の論文が掲載され、「抗原定量法ではおおむね500copyが検出限界」「ウイルス保有量が少ない患者を見逃す可能性に留意」と論じている。
 さらに、米サーモフィッシャーサイエンティフィック社(サ社)が販売するPCR検査キットを用いれば、1回の検査でオミクロン株の検出が可能だ。検査に要する時間は1.5時間まで短縮でき、空港での利用も可能だ。
 このことは厚労省も認識している。11月28日に国立感染症研究所が発表した「SARS-CoV-2の変異株B.1.1.529系統について(第2報)」の中で、「オミクロン株は国内で現在使用されるSARS-CoV-2PCR診断キット(筆者注=サ社キットのこと)では検出可能と考えられる」と明記している。ところが、厚労省は、このキットを用いない
 このことは由々しき問題だ。サ社のキットを用いれば、水際対策だけでなく、国内でのオミクロン株の流行状況がわかる。コロナ対策の基本は検査だ。PCR検査体制の強化が喫緊の課題である。

上昌広 医療ガバナンス研究所 理事長
1968年兵庫県生まれ。内科医。東京大学医学部卒。虎の門病院や国立がん研究センター中央病院で臨床研究に従事。2005年から16年まで東京大学医科学研究所で、先端医療社会コミュニケーションシステムを主宰し、医療ガバナンスを研究。16年から現職。